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【2024初夏】声を聞かせて

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【2024初夏】声を聞かせて
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リアクション


1.笑顔になれる場所

 カーテンを開けたら、眩しい太陽の光が部屋を明るくしてくれた。
「天気、いいです」
 窓を開けると、気持ちの良い風が吹き込んできた。
「今日は暑くなるかも、ですね」
 アレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)は深呼吸をすると、クローゼットへと歩いて、今日、着る服を選ぶ。
 仕事は夕方からだけれど、その前に。
 朝一番に電話をくれた大切な人、大谷地 康之(おおやち・やすゆき)と会う約束があった、
 朝ごはんを食べて、家事をして。
 準備を済ませて、約束の時間ちょっと前に、アレナは部屋を出た。

「よっ、アレナ!」
 ロイヤルガード宿舎の前に、康之は既に到着していた。
「康之さん」
 アレナはほっとしたような笑みを浮かべて早歩きで近づく。
「ごめんな、いきなり呼び出しちゃって」
 康之の言葉に、アレナは首を横に振る。
「嬉しいです」
「じゃっ、行くか!」
「はい!」
 互いに嬉しそうな笑みを浮かべて、歩き出した。
 どこに行こうか、何をしようか。
 とくに決めてはいない、散策。
 郊外の景色のいい場所へと二人の足は自然に向かう。

 それから街中へと出て、お気に入りのカフェで、大切な時間を過ごしていく。
「康之さん、あの……」
 ストローでアイスティーをかき混ぜるアレナの顔は、何故かちょっと赤かった。
「ん?」
 アイスコーヒーを飲みながら、康之は向かいに座るアレナを見た。
「子供みたいで、申し訳ないんです、けど」
「どうかしたか? 何でも言ってくれ!」
 恥ずかしそうにしているアレナに、康之は笑顔で明るく言った。
「あの……」
「うん」
「……」
「……?」
「……やっぱり、今度でいいです」
「ん?」
 不思議そうな顔をする康之を、恥ずかしそうに見つめながら、アレナは言った。
「康之さんが、私が笑顔になれる、場所です……」