百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

砂上楼閣 第一部(第1回/全4回)

リアクション公開中!

砂上楼閣 第一部(第1回/全4回)
砂上楼閣 第一部(第1回/全4回) 砂上楼閣 第一部(第1回/全4回)

リアクション





第五章 空賊来襲


 平穏な空の旅を続けていた飛空艇の前に、突如現れたのは、永楽銭の旗を掲げた空賊の集団だった。
「へへっ、第六天魔衆、参上ってね。行くぞ、おらぁ!!」
 猫井 又吉(ねこい・またきち)の操縦するバイク型小型飛空艇の後部座席にまたがり、猛々しい叫び声を上げたのは国頭 武尊(くにがみ・たける)だ。光学迷彩を使っているのか、武尊の姿は見えない。一見して何の武装もないように見える小型飛空艇は、外務大臣が乗り込む特別船を目がけて猛スピードで突っ込んでいく。
「待てっ、小型飛空艇部隊を叩くのが先だ!」
 指揮官の如く後方に控えていたレオンハルトが叫ぶが、武尊は取り合わない。
「んな面倒なこと、俺の知ったこっちゃねぇよ!」
 武尊は、特別船の上空を高速で旋回させる。銃手が騎乗していないことに安心したのか、迎撃のため甲板で魔法を唱えはじめた薔薇学生に向かってショットガンをぶちかます。見えない敵が放った銃弾の雨に、甲板にいた薔薇学生は慌てふためく。
「ひゃぁ〜はっはっはっ! 迂遠な連中め!」
「そろそろ私も行かせてもらおうかしら」
 再びショットガンを構えた武尊に続くように、荒巻 さけ(あらまき・さけ)メニエス・レイン(めにえす・れいん)ミストラル・フォーセット(みすとらる・ふぉーせっと)ロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)白菊 珂慧(しらぎく・かけい)ラフィタ・ルーナ・リューユ(らふぃた・るーなりゅーゆ)達の小型飛空艇も急加速で特別船、目がけて突っ込んでいく。
「オラオラ、オッサン。俺たちも行くぜぇ!」
「フフン、桶狭間を思い出すのぉ」
 武尊と同様バイク型小型飛空艇にまたがった南鮪は、後部座席に南蛮鎧に身を包んだ織田信長を乗せている。信長は後方から全体の戦局を把握しようとしていたレオンハルトに向かって叫ぶ。
「血に猛ったコイツらに小難しい作戦は無理じゃ。いっきに叩くぞ!」
 すでにシャンバラ教導団員の乗る飛空艇からは小型飛空艇部隊が発進していだ。教導団員側には、飛空艇の扱いに慣れた蒼空学園生、及び空飛ぶ箒にまたがるイルミンスール生が増員されている。戦闘が長引けば長引くほど、信長率いる第六天魔衆が不利になるのは間違いない。急いで勝敗を決する必要があった。
「小型飛空艇部隊の相手は僕たちが引き受けるよ!」
 信長にそう請け負ったのは、空飛ぶ箒にまたがった緋桜 ケイ(ひおう・けい)悠久ノ カナタ(とわの・かなた)の二人だ。
 カナタは発進したばかりでまだ陣形が整わない船団の中心に向かって、上空から一気に飛び込んでいく。教導団員達の意識がカナタに集中した隙を狙って、さらなる上空に待機していたケイは雷術を放った。



 ケイの雷術で一度は戦列が崩れた教導団員達に、【希望の星】隊第一艇ラングハールに機上した皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)が檄を飛ばす。
「落ちついてかかれば負けることはありませぇん。教導団員の底力、空賊に見せつけてあげるのですぅ!」
「うわぁぁ、ごめんなさいぃっ〜やっぱり上手く操縦できませぇ〜ん」
 操縦桿を握るクリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)は、小型飛空艇の操縦ははじめてらしくラングハールは大きく左右に揺れるが、伽羅は指揮官らしく涼しげな表情を崩さない。軍配代わりの羽箒を口元にあて微動だにしない。
「クリス、姉者が言う通り落ちつけば大丈夫なのじゃ」
 機銃を構えたうんちょう タン(うんちょう・たん)が、クリスティーナを励ます。
「うんちょうさんの射撃の腕だけが便りですぅ〜」
 半泣きになりながら必死で操縦桿にかじりつくクリスティーナの横では、皇甫 嵩(こうほ・すう)が手旗信号を使い次々に伽羅の指示を他の機体に伝達していく。
「よっしゃぁ。一気に蹴散らしてやるぜ」
 ライラプス・オライオン(らいらぷす・おらいおん)が操縦する【希望の星】隊第二艇ゲルペスオールに機上した昴 コウジ(すばる・こうじ)は、外務大臣が乗った特別船に向かって一撃離脱の突撃を繰り返している賊機のエンジンに狙いを定めた。
 しかし敵も最たるもの。そう易々と撃墜させてはくれない。重いエンジン音を立てながら旋回すると、敵もまたこちらに標的を変えてきた。
「ちょこまかと面倒くせぇんだよ」
 コウジは機体を敵機にぶつけるようライブラスに指示を出す。
「空中戦じゃぁ相手の姿勢を崩せば勝ちなんだ。死なば諸とも。いきやがれぇ!!」
 第三艇シーファーフントに乗ったアクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)アカリ・ゴッテスキュステ(あかり・ごってすきゅすて)もまた、第二艇同様機体をぶつける作戦を選ぶこととなる。
 操縦桿を握ったアカリがこれまた初心者であり、機体が安定しなかったからだ。これではアサルトカービンを構えたアクィラも照準を合わせられない。
「頼むから機体を安定させてくれよっ。これじゃ照準が合わねぇ!」
「だったらあんたが操縦すればいいのよ!」
「あ〜もう面倒くせぇ。だったらもうぶつけちまえ!」
 空戦経験の少ない教導団員達を巧みにサポートしたのが、追加で増員された蒼空学園生達だった。こちらは空を飛ぶのはお手の物である。たくみに小型飛空艇を操り、空賊の攻撃を交わすと、その隙に別の機体が攻撃を仕掛ける。