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のぞき部あついぶー!

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第2章 あつい部

「わーーーー!」
「ひゃっひゃーーー!」
「なんだなんだなんだーーー!」
「ぎゅへへへへーー!」
「ふぁいやーーーーー!」
「燃えろ萌えろー!」
 焼却炉前は混乱していた。
 (むだに)あつい部のビラを見て集まってきた入部希望者が、無駄にあつくごった返していたのだ。
「ヒャッハー仮面さんというのは、誰ですのっ? ええっ! 誰なんですのおおおおおおお!!! うおおおおおおおおお!!! わたくし、あついのあついのあっついのですわ〜!」
 早くもあつくなって日本語がおかしくなっているのは、意外にもいつもは落ちつている荒巻 さけ(あらまき・さけ)だ。
 腰バックに大量のフィルムを入れたさけは、ライカのカメラでパシャパシャと入部希望者を撮りまくっている。
「あなた、いいですわ!! その表情ですわ! あああっと! あなたのおみ足を光が愛撫してますわ。サイコーですわ!!!」
 さけのパートナー日野 晶(ひの・あきら)は、隣で被写体にレフ板をあてている。
「さすがはあつい部のお方です! レフを当てたらあつすぎますね!!」
 撮られているのは、ミレーヌ・ハーバート(みれーぬ・はーばーと)だ。
「あ……あの。ちょっと待って! あたし、ゴミを捨てに来ただけなんだけど」
 押されっぱなしのミレーヌが、ようやく声を出した。
 が、あつい部広報担当を自任するさけには届かない。
「またまたご冗談を! こんなにあついのに。あつすぎて、ほら。そこのゴミが燃えてしまいましたわ〜!」
 最初から燃えていたが、晶はツッコミもせずにレフ板をチラチラさせてミレーヌにつきまとっている。
「あつい部のあなた、お名前はあああ?」
「えっ……あつい部? なにそれ。あたしはミレーヌ・ハーバートだけど」
 キレイに澄んだ声でそう答えると、その肩をガシッと掴む男がいた。
「声が小さいんとちゃうかあああ!」
「ひっ……!」
 振り向いたミレーヌはぶったまげた。
 夢か現実か、男の目から火が出ているのだ。そして、火はそのまま炎に変わっていく。
「俺は、天下のあつい部部員、日下部 社(くさかべ・やしろ)やあ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
 言い終わると同時に、撮影していた大和のカメラに向き直って、めっちゃカメラ目線!
 いきなりチェリーバージン2号の魂サーモメーターが吹っ切れ、大和はカメラを余所に向けた。
「む、無駄にあつすぎる……!」
 しかし、そのカメラに収まるのは、ゆる族の望月 寺美(もちづき・てらみ)。カメラ目線であつく抱負を語り出す。
「ゆる族セクシー代表! 囮となってでもぉ! のぞき部をやっつけるよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
 また魂サーモメーターが吹っ切れている。
 社はカメラをグイッと掴んで自分に向けると、あつーく語り出す。
「のぞき部との争いがずっと続いとったようやけどな! この俺、日下部社が来たからには! もうここでオシマイやでえええええ!」
 そしてミレーヌの肩をまたまたグイッと掴むと、ギラギラと見つめて、
「あつい部やないのにこんなとこにいるってことは、かわいこちゃん! あんた、のぞき部ちゃうんかい!」
「ち、違うよ……!」
「違うなら、もっと魂を解放してあつーく名乗ってみいや!」
「ええっ。そんな……」
「のぞき部なんかい! ええ? かわいこちゃんは、のぞき部ちゃんかいいいい!!!」
 さっきからのぞき部という言葉が頻発し、人が集まってきた。
 何かにあつくなるという漠然とした活動内容しか決まってないため、当面の目標であるのぞき部には、みんな過敏に反応しているのだろう。
 中でもパラ実のガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は、確かめもせずにファイヤーストームをぶちかます構えだ。
「のぞき部なのですね? では、汚物は焼却! それしかありませーーーーん!!!!」
 パートナーのドラゴニュートネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)も巨漢を震わせ叫んでいる。
「やっちまえやっちまえ!」
「ままままま待ってえ!」
 ミレーヌは覚悟を決めて、あつーく言い直す。
「あたしはあああああッ!!!!!! あつい部のおおおおおお!!! ミレーヌ・ハーバートよおおおおおおおおおおおお!!!!!」
 次の瞬間。
 みんなはあつく握手したり、あつくハグしたり、とにかくあつくミレーヌを受け入れた。
 ミレーヌはモミクチャにされながら、あつい部の真理を悟っていた。
(あついのって……なんかいいかも!)
 そして、次にはもう叫んでいた。
「あつい部部員、ミレーヌ・ハーバート! のぞき部ぶっつぶーーーーーーーーーーっす!!!! うおおおおおおおお!!!!」
「どういうこと……?」
 ミレーヌを追ってやってきた守護天使のアーサー・カーディフ(あーさー・かーでぃふ)は、いつもと違うミレーヌを見て立ち尽くしていた。
 それにしても、ビラを配っていたヒャッハー仮面はどこに行ったのだろうか。まとめる者がいないため、あつい部のあつい混乱はどんどん増している。
 さすがにあつい部の面々もそのことに気がつきはじめたとき、非常階段の上からソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)が声を張り上げた。
「みなさん! 落ち着いてあつくなってくださいっ!!! とおうっ!」
 手すりを飛び越えて、みんなの中心に着地……できずに、びったーん!
「い、痛いですーっ!」
「ご、ご主人。よく来てくれた! 嬉しいぜ!」
 ゆる族の雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が、のびているソアに手を貸すわけでもなく喜んで話しかけている。
「一緒にあつい部に入ってくれるんだな!」
「ううー。入るですよーっ!」
 ソアはなんとか自力で立ち上がると、ビシッと非常階段のてっぺんを指差した。そこには、のぞき部と戦ってきた百戦錬磨の正義のヒーロー、ケンリュウガーこと武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)がパートナーの重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)を従えて立っていた。
「みなさん! ケンリュウガーさんを我らがあつい部の部長に推薦しますっ!!!」
 ケンリュウガーのあつさを知るものは多く、また知らない者もあつすぎて考えることができないため、全会一致であっさりと部長就任が決まった。
「よーし! ケンリュウガー! お前が部長だ!!!」
「誰だか知らねえが、あっつくたのむぜえええ!!!」
「きゃあああ! 光が愛撫してますわあああ!!!」
 バババッ! とポーズをとって、ケンリュウガーが焼却炉を指差して語り出す。
「見よ。炉の中で小さく耐える火を。あれは、俺たちあつい部だ。今はまだ小さな火かもしれないが、やがてのぞき部なるゴミを焼き尽くして大きな炎となるだろう!」
 ガートルードがあつく賛同する。
「その通り! 汚物は焼却ですっっっ!!!!」
 ライザーが部長にツンツンと肘打ちして、
「部長。今です。今ここで、キメの掛け声を!」
「そ、そうだな!」
 ケンリュウガーは焦って、ライザーと決めていたあつい部の掛け声「ファイヤー!」を叫ぶべく、ポーズを取り直す。
 勢いよく天に向かって指を差し、
「あつい部! ゴオー!!! ファイファー!!!!!」
 大事なところで噛んでしまった。
 ライザーはがっかりと肩をおとした。
「ファイファーって!」
「くっ。俺としたことが。し、舌がまわらなかったんだ……!」
 しかし、嘆く2人をよそにあつい部員たちはファイファーを気に入ったようだ。
「きっと、おフランスの言葉に違いねえ!」
「いやいや、何か凄い火魔法の呪文なのさ。さすがは部長だぜー!」
「違いますわ。部長が作り出した新しい言語、あつい語ですわ」
 とにかく、みんなで声を出していた。
「ファイファー!!!」
「ふぁいふぁあ〜〜!!」
「ゴー! ファーイファーーッ!!」
 ケンリュウガーも後に退けず、最初からそのつもりだったような顔で叫び続けていた。
「ゴオ! ファイファー!!!」
 こうして、あつい部の部長はケンリュウガーに、掛け声は「ファイファー!」に決まった。
 アフォ加減ではのぞき部とがっぷり四つの前途多難な部だ。
 このとき集まったあつい部創部時のメンバーは以下の通り。この時点ではパートナーに無理矢理連れてこられただけの者もいるが、一緒に記しておこう。なお、メンバーは順不同である。

ケンリュウガー
リュウライザー
ガートルード・ハーレック
ネヴィル・ブレイロック
荒巻さけ
日野晶
ソア・ウェンボリス
雪国ベア
日下部社
ミレーヌ・ハーバート
アーサー・カーディフ
飛鳥 桜(あすか・さくら)
ロランアルト・カリエド(ろらんあると・かりえど)
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
プレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)
緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)
七枷 陣(ななかせ・じん)
仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)
ミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)
鬼崎 朔(きざき・さく)
スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)
シルヴィオ・アンセルミ(しるう゛ぃお・あんせるみ)
アイシス・ゴーヴィンダ(あいしす・ごーう゛ぃんだ)
明智 珠輝(あけち・たまき)
島村 幸(しまむら・さち)
ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)
佐伯 梓(さえき・あずさ)
カデシュ・ラダトス(かでしゅ・らだとす)

 最後に、火魔法が大好きな自称“紅蓮の魔術師” ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)が、焼却炉の火に惹かれてふらふらとやってきた。
「へ? なに? あつい部? 火術使えんの? オーケー? オーケーなのね? ん! そんじゃあ入部。……うおらあ! めらめら燃えつくそうぜーっ! ふぁいふぁーーーっ!!!」
 焼却炉をさらに燃やすべく、火術を叩き込もうと構える。
 が、そのとき!
 パラパラパラ……焼却炉から、つららが落ちてきた。誰かが氷術をぶちこんだのだ。
 しゅう〜。
 煙が収まると、あつい部の象徴である焼却炉の火は消えていた……!
「ファイファー! 誰だこの野郎!」
 焼却炉の前には、つららを持った目つきの悪い男が立っていた。
「俺は……キリン隊改め、のぞき部……パシリ。葉月ショウ。……あつい部の者どもよ! 宣戦布告させてもらったぜ!!」
 大好きな火が消されたウィルネストは、早くもあつくキレている。
「おいおまえ! その手に持ってる紙はなんだ! 燃やしてやんぞ、ファイファー!」
「うん? これか? これはさっき偵察に行ったときにやってきたんだよ。のぞき神社のおみくじだ。見るか?」
 とおみくじをペロンとかざす。
「エロ?」
 にわかには信じがたいが、のぞき神社のおみくじには「エロ」などと書いてあるようだ。
「そう。エロだ……エロ運があるってことだぜ。ま、勝負は見えたな! あーばよ!」
 ショウは颯爽と去っていった。
 ――のぞき部なんてどうでもいいよ、ファイファーできればそれで。
 そう考えていたあつい部員多くいたが、思いを改めた。
「のぞき部ぶっつぶす!!!」
「まずは、のぞき阻止でファイファーすんぜええええ!!!!」
「のぞき撲滅ふぁいふぁあですううう!!!」
 ウィルネストは、1人腕を組んでうなっていた。
「あいつ、やるな……!」