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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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 アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)ミーミル・ワルプルギス(みーみる・わるぷるぎす)を連れて、バレンタインの街に繰り出した。
 ピンクのハートの装飾や、風船やリボンで可愛く彩られた街を見て、ミーミルは楽しそうにアルツールに尋ねた。
「今日は何のお祭りなんですか?」
「今日はバレンタインデーだよ、ミーミル」
 アルツールは可愛い娘のために、バレンタインデーについて教えてあげた。
「バレンタインデーと言うのはね、ミーミル」
 講師らしい口調でアルツールは説明を始めた。
「その昔地球のある国では兵士は結婚を禁止されていた。不憫に思った地球の宗教……キリスト教の司祭が結婚式を挙げてやっていたところ、それがバレて処刑された。バレンタインデートはその処刑された日の事なんだ」
「処刑された日ですか」
「尤も、架空の聖人と出来事と言う説が強いらしいがね。で、その由来から好きな人に愛を告白する、そんな日になった」
「好きな人ですか?」
 好きと言う意味についてミーミルが首を傾げる。
 すると、アルツールはその話を優先させた。
「お父さんは、ミーミルを愛している。でもそれは父親としてであって、異性としてじゃない」
「異性として……?」
「そう、今日はミーミルが将来、そういう異性とのデートのための練習として、出かけてきたのだよ」
「異性として……」
 よく把握できないらしい、ミーミルの頭をアルツールは撫でた。
「ミーミルがお父さんやお母さん、友達に感じたのとは違う『好き』を男の人に見つけたとき、相手のプレゼントを受け取るなり、プレゼントをするなりしてあげなさい」
「プレゼントですか?」
「そう、パラミタに強い影響を与えている日本では、お菓子会社の宣伝のために好きな人にチョコを渡すようになったらしいんだが、これは地球のどの国でもそうと言うわけではない。お父さんの国ドイツでは、贈り物として花束などを渡す。理由は日本と同じだが、日本では女の子が告白のためにチョコを渡すのに対して、ドイツの場合は既に好きあっている男女間のみで行われる所かな」
「好き合っているですか」
「うん。今日のミーミルとお父さんのお出かけもそういう男女が出かけるのに似ているかな。さて……それではゴンドラに乗ろうか」
 アルツールはミーミルの手を取り、ゴンドラに乗せてあげた。
 2人は少し寒い湖の上で身を寄せて、冬の綺麗な景色を楽しみ、ヴァイシャリーの街を楽しんだ後、レストランに食事に行った。

「お父さん」
「ん?」
「どういう人とこういうところに来るのがいいんでしょう?」
 ミーミルは自分に優しくしてくれる人は好きだけど、恋愛については良く分かっていない。
 それに。
(人間じゃない私が、皆さんの言うような『恋愛』をすることが出来るのかな?)
 という思いがミーミルの中にあったのだ。
 自分の言葉でミーミルが恋愛について考え込み始めてしまったかと思ったアルツールは優しく言った。
「無理にそういう人を作る必要はない。それに、お父さんは、ミーミルが選んだ相手ならパラ実のモヒカンとか、同性とかでない限り反対せんよ」
「同性……」
 イルミンスールはあまり男っ気がないので、ミーミルが同性とキャッキャウフフなことになる可能性もあるかもしれないと猫の人が言っていたが、ひとまず現時点ではミーミルに普通の恋愛展開が起きる可能性は低そうだった。
 それならそれでアルツールは無理に恋をさせる気など毛頭ないので、話題を変えた。
「本当はヴィオラやネラ達も一緒に連れてきてやりたかったんだが……ミーミルが二人にも教えてやってくれ」
「はい」
 ミーミルはこくこくとうなずき「おいしいです」と言いながらディナーを食べたのだった。
 アルツールは可愛い娘を見送り、最後に花束を贈って、部屋に入るまでずっと見守った。