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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン ホワイトバレンタイン

リアクション

 時間が昼だったり夜だったり、前後して申し訳ないが、そこはご愛嬌と言うことで……。

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)に呼び出された花音は、山葉とロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)のデートを見て、顔をひくつかせた。
「またですか、涼司さん……」
 菫と綾乃の恋路に利用された傷心の山葉は「蒼学で一目惚れして、前々からデートに誘いたかったんだ!」というロートラウトの言葉を聞き、ふらふらとついていってしまったのだ。
 そして、ロートラウトは『愛』の文字の形をした……というか、戦国武将・直江兼続の兜飾りを模した形のチョコを
山葉に差し出した。
(ここまで凝ったものならイチコロかな?)
 そう思っていたロートラウトだったが、山葉はものすごく微妙そうな顔をした。
「これは……?」
「えーー、気合入れて作ったのに、ダメ?」
 エヴァルトにもウケなかったから、山葉で処分しようと思ったのに、とロートラウトがショックを受ける。
 山葉で処分しようとしたっていうのはどうなのだ、とかつっこんではいけない。
 一方、冷ややかな目になった花音を見て、エヴァルトは八つ当たりされないかなと心配しつつ、2人のデートの模様を写した写真を見せて、種明かしをした。
「実はそういうわけで……って、おい、花音?」
「ああ、あの人のことはもういいですので、ご自由に」
 花音はあきれたように去ってしまった。
「あ、あれ、花音?」
 山葉が花音に気づき、追いかけようとする。
 だが、一瞬だけチラッと振り返った後、花音は黙って行ってしまった。
「あららー……」
 ロートラウトは仕方なく、山葉にも種明かしをする。
 すると、山葉は凍りついた。
「…………みんなして、人で遊びやがってー!」
 山葉はまたも叫んで走り去った。
「あー、おい、山葉ー」
 エヴァルトが声をかけるが、立ち止まろうとしない。
「しゃあない……後がどうなるか、追いかけてみるか」


「バレンタインキャンペーンでーす」
 バレンタインの街中では、曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)有洲 いちご(ありす・いちご)が通りすがりの人たちに義理チョコ配りをしていた。
「やっぱり女の子が配る方が花があるねぇ」
「いえ、曖浜さんのほうがすごいです。義理と言っても手作りなんですもの」
 いちごは尊敬のまなざしで、瑠樹のかごの中にあるスペード型とクローバー型のチョコを見つめた。
 すべて白と水色のしましまの包み紙に包まれている。
「一つ一つやったんですね。すごいです」
「いや、オレだけじゃなくて、マティエも手伝ってくれたからねぇ」
 話を振られ、猫型ゆる族のマティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)がこくんと小さく頷く。
「そうなんですか。私は金銭的な理由で50個ほどしか用意できませんでしたが。皆さん喜んでくださるといいですね。ねえ、バニラ?」
 いつも一緒の白うさぎのぬいぐるみに、いちごは同意を求める。
 するとそこへ、ロートラウトから走り去ってきた山葉がやってきた。
「あ、お待ちくださいー」
 いちごは山葉に声をかけ、彼の動きを止めた。
「マティエ」
 瑠樹が指示すると、マティエもオロオロしながら準備をする。
 いちごは涙ながらに走ってきた山葉にチョコを差し出した。
「あの、そんなにすごいチョコじゃなくて申し訳ないのですが、良かったら……」
 照れながらいちごがチョコを渡す。
 すると、マティエもおずおずと オレンジ色の包み紙と赤いリボンで包んだ、ハートの手作りチョコを渡した。
「あ、あと……こっちは、知り合いから……今日来れないから渡して欲しいと頼まれまして」
 それは瑠樹の作った星型のチョコだった。
 水色地に白い水玉の包み紙で包んである大変可愛いものだったが、瑠樹が女装しても骨格と声でバレバレなので、匿名の誰かさんと言うことで、マティエに渡してもらったのだ。
「…………」
 山葉はしばらく3つのチョコを見つめ……。
「厚意はありがたく受け取っておく……でも……」
 ぎゅっとチョコを握り締め、山葉は叫んだ。
「俺はもうだまされないぞーーー!!」
 山葉は走り去った。
「……心の傷が気のせいか深くなってそうだね」
「うん……」