リアクション
〇 〇 〇 別邸への攻撃が始まり、レイル・ヴァイシャリーは酷く怯えていた。 ミーナ、菫、コウは側で彼を護り、励ましてはいたけれど、かなり状況は悪いということは窓から外を見れば解る。 「こんにちは」 そんな中に、弓を手にしたアレナが友人達と共に姿を現す。 「大丈夫ですよ」 そう、彼女は微笑んで、友人達に支えられながら窓の方へと近づく。 「総指揮官の神楽崎優子さんのパートナーだよ」 ミーナがレイルにそう説明する。レイルは怯えながら、辛そうなアレナに不安気な目を向けている。 「北側の部屋に移った方がいい」 某が、レイルと護衛達にそう言う。 「向かいの部屋に移ろう」 コウはレイル達を連れて、向かいの部屋に移動していく。 それから、某はパートナーの康之と、彼や百合園の友人に支えられているアレナに視線を移す。 某は離宮は浮上させた方がいいと考えていた。 理由は誰かが死ぬのは嫌だから。 再封印するにしても、人柱の第一候補――アレナはこの状態だ。 そんな状態の彼女が施した封印が恒久的に続くとは、それ以前に上手くいくとは思えない。 浮上時により壊れる建物の歴史や思い出は戻らないかもしれないが、また積み重ねることは出来る。 だけれど、人間はそうではない。 そんな意見を出発前に述べてきた。 だけれど、本部では会議は行われておらず、某も会議での提案より離宮への同行を望んだため、某の意見が上のものの耳に入ったかどうかは定かではない。 ただ、百合園の生徒会長は首を横に振っていた。 思い出での問題ではなく、損害が大きすぎると。 ヴァイシャリー家やヴァイシャリーを支えている貴族が大損害を受けるということは、ヴァイシャリー全体が飢饉に陥る可能性だって否めないと。 その辺りの対策も考えた案ではないと、ヴァイシャリーの議会は耳を貸さないだろうと言っていた。 某は視線を康之に向ける。 アレナを支えながら笑顔を向けている彼だが。 アレナが集中治療室にいる間は酷く気落ちして、暗い表情をしていた。 某は魔法や道具でそんな康之を癒し、励まして共にアレナの護衛に訪れた。 アレナを助けたい、という気持ちは某も持っているが。 彼女の力に頼らざるを得ない状況に、無力さを感じるばかりだった。 「葵さん……」 康之とエレンディラ・ノイマン(えれんでぃら・のいまん)に支えられながら、アレナは窓へとたどり着く。 窓の外には葵の姿がある。彼女はアレナを今度こそ護る為に、班長として前線に立っていた。 「葵ちゃんなら大丈夫です」 エレンディラの言葉に、アレナは首を縦に振った。 エレンディラは戦う皆に向って「光条兵器の攻撃、いきます」と大声を上げる。 アレナは支えられながら、星剣ヴィータで空に光の矢を放つ。 空中で弾けた光は、地上に降り注ぎ、無生物だけを傷つけていく。 「部屋を移動するぞ。狙われるからな」 某はすぐに、倒れ掛かるアレナにヒールをかける。 そして窓を閉めて皆を別の部屋へと連れて行く。 「アレナ先輩……!」 パートナーのエレンディラの声と、アレナの光の矢の攻撃に、葵は胸が締め付けらる思いだった。 また、無理をさせてしまっている。 だけれど、自分達だけで切り抜けられる状態ではないことも確かで……。 ディフェンスシフト、オートガード、護国の聖域で皆を護り、敵の攻撃に傷ついていく体に鞭を打ち、葵は栄光の刀を振るった。 「全力全開! 今度こそ必ず護ってみせる!!」 もう、アレナが攻撃をしなくていいように、彼女に攻撃が及ばないように、葵は遠距離攻撃が出来る敵に駆け寄って刀を胴体に突き刺した。 「う……っ」 石の拳が葵の背を打つ、小さな膝を地について、葵は敵から抜いた刀を下方から敵にまた突き刺した。 「絶対、諦めない!!」 敵の体を真っ二つに破壊する。 「みんなを守るため、誰も通さないよ」 治療を担当している涼介のパートナークレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)も、ぼろぼろになりながら、皆の前に立ち敵と戦っていた。 「中に入られたら、怪我をしている人達が殺されちゃう!」 同じく涼介のパートナーのヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)も、別邸を背に必死に戦っていた。 アーミーショットガンでアリアは敵の頭を撃ち抜く。 光条兵器使いはそれで仕留められたけれど、押し寄せてくる生身ではない人造兵器達は頭を撃ち抜いても攻めてくる者が多い。 「もう絶対壁を傷つけさせない。涼介兄ぃやエイボン姉ぇが中で治療活動を頑張ってるんだ。護るんだ!」 アリアは体を盾に敵の攻撃を受けて、別邸への攻撃を防ぐ。 「アリアちゃん!」 クレアは轟雷閃を放ち、アリアに立て続けに攻撃を加える敵を吹き飛ばし、チェインスマイトで周囲の敵に斬り込んでいく。 アリアを、仲間達を回復してあげたいけれど、その余裕もなく敵の攻撃を一つでも多く防ぎ、1体でも多く打ち倒さなければならなかった。 大丈夫、なんとかなる。 それは自分がさっき優子に言った言葉だ。 ミューレリアは魔道銃で、敵を撃ちぬきながら、別の敵の攻撃を身に受けていた。 金属の腕で殴られ、ミューレリアは別邸の壁に直撃をする。 この先には、百合園生や、神楽崎優子がいる。 「中の皆、驚かせてごめんな」 ミューレリアは体に力を入れて、立ち上がる。 「大丈夫だ、私達は強い!」 自分にヒールをかけ、大声を上げてミューレリアはバーストダッシュで敵に突撃し、敵の只中で銃をがむしゃらに撃っていく。 「気合入れて踏ん張らなくっちゃ!」 白百合団員と防衛に当たっていた琳 鳳明(りん・ほうめい)はベルフラマントで気配を薄れさせ、敵軍の側面から背後に回りこみ、背後からの攻撃に当たる。 本陣機能、怪我人、そして子供までいる別邸。絶対護らなければならない。 無理にしか見えない状況でも、絶対に……。 「今です、この敵をお願いします!」 葉月が奈落の鉄鎖でキメラを抑えていた。 「任せて!」 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がブライトマシンガンを撃ち鳴らし、そのキメラを仕留める。 「キメラを率いていた男……いない。数も少ない」 美羽は主にキメラを狙いながら、あの男――ヒグザを探すが、見当たらなかった。 あの後、ヒグザが再び時計塔の辺りにキメラ数匹をつれて、現れたことは知っていた。 しかし、そのまま彼はどこかにテレポートしてしまい、美羽は見失ってしまっていた。 多分、あの男が指揮官だと思うのだが。ここにいないということは、東塔かどこかを攻めているのか、地上から戻っていないのか。 ただ、ここには別の指揮官がいる。 ソフィア・フリークスだ。 指揮官を倒せば、戦局が好転するかもしれない。 だけれど、彼女を殺してしまったのなら、百合園生が数人命を落とすかもしれない。 美羽にはすぐに決断が出来なかった。 「とにかく、犠牲者を出さないために……!」 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)も、外へ飛び出していた。 穏やかであまり戦いを好まない彼女は、ずっと救護を手伝ってきたけれど。 別邸にいる非戦闘員と負傷者を守るために、ブライトスタッフを手に前線へと出たのだった。 光条兵器と、光術で生物系の敵に戦いを挑む。 目が眩んで動きが鈍った敵達に、ミューレリアと美羽が銃を撃ち込んで倒す。 「落とします」 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)の声が響く。 空飛ぶ箒で飛び、キメラの翼を刀で傷つけていく。 「上から攻撃されるよりマシだから、飛べなくするよ」 ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)は、ナナが攻撃をしかけたキメラの翼を狙い、氷術を放って凍らせる。 キメラは無生物の人造兵器には向っていかない。 だが、契約者達だけではなく、主に後方にいる光条兵器使いも敵と認識しているらしく、同士討ちも起こり始める。 「こっちだよ!」 鳳明は光条兵器使いの側に忍び寄り、姿を現す。 キメラの注意をひきつけ同士討ちを誘発した後、また気配を消して、別の敵の方へと走る。 |
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