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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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〇     〇     〇


 各方面から傷ついた契約者、軍人達が宮殿前へと集合していく。
 宮殿内の掃討を行っていた者達も、宮殿前へと飛び出してくる。
 意識を失っている円を白百合団員に預けた後、刀真は集合をかけて攻略隊のメンバーを集める。
「攻略隊全員揃いました」
「魔法隊全員揃いました」
「防衛隊全員揃いました」
 そして、ヴァイシャリー軍人からも、生存者は全員揃ったと報告がある。
 それから、全員で、東塔へと移動を開始する。
 東塔、宮殿内、別邸付近、北側の地下道、作業小屋付近については、ほぼ掃討が完了していた。
 くまなく調査する時間が無いため、どれだけ残党がいるのかは不明だが。
「なんとか調査をする時間を取れないでしょうか?」
 足早に歩きながら、有栖が優子に問いかける。
「兵器を全て破壊し、調査が完了した後、人柱を出さない手段として離宮を浮上させることが出来ればと思うんです」
 百合園の大部分が破壊されてしまうという話は聞いていた。
 だけれど、誰かが人柱になったりせず、古代の技術というヴァイシャリーを護るための手段が手に入るのなら、離宮を浮上させたいと有栖は思うのだった。
「できれば百合園も壊されない方法を探したいですけれど、封印以外方法がないのなら、それよりも浮上を推しますわ。誰かを失わないことが、一番大切ですわ」
 ミルフィが有栖の言葉に続けて、そう意見した。
 優子は少し辛そうな顔で、首を左右に振った。
「現場で判断できることじゃないんだ。これから地上で会議を行って、その決断が下りるまでの間、離宮が持つとは限らない。早く帰還しなければ命が危ない者もいる。気持は嬉しいが、全員地上に帰還してもらう」
 東塔の前で立ち止まり、集まっている者達の前に優子はアレナと立つ。
「女王器の力で、転送術者の力を上昇させ、転送術で皆を地上へ運ぶ。その後、女王の血を受け継いでいるアレナが、離宮に再封印を施す」
 地上へは百合園の校庭にテレポートを行う旨、連絡を入れてあり、準備をしてくれているはずだということを説明していく。
「私はパートナーのアレナとここに残る。封印を見届けなければならないし、護衛も必要だ」
「一人で大丈夫ですよ」
 アレナは小さな声でそう言った。
「アレナが残るのも反対だけど、優子は戻んなきゃ駄目だろ! 一緒に百合園に生還するんだ!」
 ミューレリアが優子の腕を引いて、皆の中に引きずり込もうとする。
 衰弱している優子は力負けして、引っ張られ、転びそうになる。
「ほら、こんな状態で護衛も封印術も出来るはずないだろ?」
「大丈夫です。力を増幅させる女王器を貸していただければ。でも、優子さんのことは、お願いします」
 アレナは微笑んで、そう言った。
「いや、私も残るよ」
「優子さん……」
 亜璃珠が咎めるような目で優子を見る。
「アレナのことは私が一番理解している。これは嘘をついている時の微笑だ」
 ミューリアの手を振りほどいて、優子はアレナの元に戻り、彼女の頭に手を置いた。
 ぱらり、と。
 空から土が落ちてきた。
 結界の力が弱まり、支えきれなくなっている。
「話をしている時間はもうない。急いでくれ」
 転送術者に優子が目を向ける。
「大丈夫よ、一緒に制御するからね」
 が怯えているレイルの手をとった。
 杖を持って震えている彼の手を両手で包み込む。
 そして、一緒に転送術者に近づいて女王器の力を術者に流れ込ませる。
「やだ……怪我している人沢山で、やだ……皆で、早く帰りたい。皆一緒に帰りたい」
 役目を終えた後、レイルは泣き出してしまう。
「アレナ、先輩」
 も泣きたかった。絶対アレナを連れて帰ると言いたかった。でも、意識のない百合園生や、手遅れになりそうな団員もいて。だから、どうにもならないこともわかっていて、必死に耐えるしかなかった。
「葵ちゃん……」
 エレンディラがぎゅっと葵を後ろから抱きしめる。
 菫かレイルを撫でながら、彼の手から杖を取って、白百合団班長のティリア・イリアーノに渡した。
 ティリアの手から、杖はアレナに渡される。
「全員側の人に触れていてください。大地を除き、触れて繋がっている物だけテレポートさせます」
「近くに来て下さい」
「離れんじゃねぇぞ!」
 転送術者、そして護衛についているソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)の言葉に、契約者、軍人達は荷物を持ち、それぞれ近くの人物と身を寄せ合う。
「重傷者を急いで病院へ、その他の者は本部に戻って報告と資料の提出を……」
 優子が皆に最後の指示を出していく。
 女王器を受け取るために、ちょっと離れていたアレナは、またちょっと優子から離れて。
 皆に微笑みを見せて、優子を切なげに見て。
 助走をつけて彼女の後ろから……体当たりをした。アレナはそのまま地面に倒れる。
 優子はよろめいて、皆の方へ足を3歩出した。
「……っ」
 足を踏み出して、優子の手を亜璃珠が掴む。亜璃珠のもう1方の手はミューレリアに掴まれている。
 直後に、離宮から契約者と軍人の姿が消えた。