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リアクション
☆9・試合の続き☆
ミルディアは、ボールを持って、ウオータースライダーが見える場所に辿り付いた。相手選手はゴール前に集まっている。
ロザリンド・セリナは、ベンチにいる間、試合や水の流れを見ていた。
「相手チームは、防御主体にシフトを替えているようです」
ロザリンドの分析に、メリッサ・マルシアーノはにこにこ笑っている。
「ロザリンドおねえちゃん、どうする?」
「どうしましょう?」
「泳いで、ボール追いかけて、泳いで!」
メリッサの主張は単純だ。
「そうですね、うーんと頑張りましょう!」
その言葉通り、ロザリンドとメリッサは、プールを楽しんでいる。
ゆっくり流れに乗って泳いでいたとき、背後より猛スピードでやってくるミルディアに気がついた。
「やった!ボールきたー、思いっきり頑張るぞー」
メリッサがミルディアに手を振る。
答えて、ミルディアが大きくボールをパスした。ボールはすっぽり、ロザリンドの手の中に入る。
「あたしは、補佐するよ」
ミルディアは、そういうと、まず自分からスライダーに入る。
その後に、ロザリンド、メリッサと続く。
東チームゴール前。
ゴールを守っているのは、鷹村 真一郎だ。もう一点も許してはいけない。
回りには、芦原 郁乃、アンタル・アタテュルク、秋月 桃花がゴールを囲むように守っている。
頭上から轟音が聞こえる。
誰かが、スライダーを降りてくるのだ。気配は一人ではない。
緊迫した情勢にも関わらず、笑い声が聞こえる。
「ロザリンドおねえちゃん、たのしー」
真一郎の顔が思わずほころんだ。
「スポーツの祭典は己の限界に挑戦する祭りだ、相手を蹴落として打ち勝つ祭りでは無い。」というのが自己の信念だ。
今、ボールと共に降りてくる相手は、この試合を楽しんでいる。
「油断しては駄目よ。幼くても相手は選手よ」
郁乃は真一郎を信じている。キッとゴールを死守するはずだ。その場合、どう動けば、相手ゴールまでボールを運べるか。
郁乃はベンチにいる岩蔵の指示を待っている。
まず、ミルディアが降りてきた。深く潜るとそのままゴールへと向かう。陽動である。
次に降りてきたメリッサは、子どもらしい愛らしさで、獣人の尾をパタパタさせ水しぶきを上げている。
その水しぶきで、ロザリンドの動きが見えない。ロザリンドもスライダー内で身体を大きく回して、水しぶきを上げながら降りてくる。
ロザリンド、メリッサ、ミルディア、誰がボールを持っているのか。
郁乃はゴールまえで待っている。
「ロザリンドおねーちゃん、パスいくよー!」
2メートルを超える長身のヴァルキリー、アンタル・アタテュルクがその身体をロザリンドとメリッサの間に入れる。
しかし、メリッサの投げたボールは、ゴールへと向かった。
小さいが獣人だ、そのボールは重い。
まるで、予期していたかのように、真一郎はそのボールを両手で掴んだ。
選手は次々に入れ替わっている。
西チームは、
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)
東チームは、
ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)
如月 玲奈(きさらぎ・れいな)
が選手に加わった。
真一郎は、掴んだボールをアンタルに投げる。
「時間がないぞ、急げ!」
岩造が、全員攻撃の指示を出した。
その指示に従って、アンゲロは自分のSPを皆に分け与え、ヒールを使う。
アンタルは郁乃と共に、プールの流れにのってひたすら泳ぐ。
桃花は、ディフェンスラインとヒールを泳ぎ去る二人に浴びせると、ゴール前に残った。
真一郎だけにゴールの重荷を背負わせるわけにはいかない。
「ど、どれっくらい流れるんだろう……わきゃあああああああ!」
勝負が緊迫してきて、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、このまま補欠かもしれない。と思い始めたとき、交代を命じられた。
「パワータイプじゃないし」
アリアは、躊躇する。
しかし、アリアと共に選手になった小鳥遊 美羽もコハク・ソーロッドもパワータイプではない。
「とにかくゴールを狙え」
金団長はアリアの背中を押した。
すぐに、流される。
「……わきゃあああああああ!戦力になるのかなぁ!」
アリアの前に、ボールを持ったアンタルが現れる。
アンクルの後ろにつくアリア。
共に、スライダーの入り口まで流れてくる。
「先に行って!」
アリアは、護国の聖域とフォースフィールドで結界を構成し、精霊の知識でブースト、あえて水の流れを受け止め、結界にぶつかって周囲に勢いよく流れる水で障壁を作った。
スライダーの入り口は封鎖され、行き場を失った水は、障壁を避けて、そのまま10メートル下のプールに流れていく。
流れてきた東チームの面々も、この障壁にぶつかり、水流と共に下に落ちた。
「ここから先へは行かせないわ! アクアサンクチュアリ・アサルトモード!」
アリアは、力の全てをスライダーの封印に向ける。
スライダー出口、流れ出たアンクルを迎えたのは、ゴール前を固めていたメイベル・ポーターだ。
殺気看破で、メイベルはアンクルの出現を予測していた。
ゴールキーパーの赤羽 美央を守るように、フィリッパ・アヴェーヌは、アンクルに突入していく。
水の流れは止まっている。
フィリッパを避けようと向きをかえるアンクルをセシリアが追い詰める。
体当たりするフィリッパ。
「今ですわ!」
セシリアが横とびになって、ボールへと飛び込む。
ボールがアンクルの手を離れ、宙を舞う。
水流のない、プールの、メイベルの前にボールが落ちる。
メイベルが手を伸ばした、そのとき、急に水流が復活した。アリアの封鎖が溶けたのだ。
激しい水流が皆を押し流す。
水流と共に、飛び出してきたのは、美羽だ。
美羽は飛び出すとともに、敵全体を眠らせる超能力ヒプノシスを使用し、東チームを睡眠状態に持ちこむ。
さっきまでならメイベルたちは、この超能力を外せたかもしれない。しかし、目の前のボールと急に襲ってきた水流に、彼女達に隙が生れた。
美羽が渦巻く溜まりに浮かぶボールに駆け寄りシュートを打つ。ゴールに向かって投げたボールの軌道は、サイコキネシスでコントロールしている。睡魔を追い払い、必死にボールに向かうメイベルの腕をすり抜け、美央の足元に吸い込まれた。
ゴールだ。
金団長がこぶしに力を込める。
沸き立つ観客。
これで3対3。
試合は振り出しに戻る。
ボールは、セシリアに渡される。
残された時間から考えて、後一点取ったほうが勝ちとなる。
西チームベンチ。
戦部は、傍らで情報収集の補佐をしているリース・バーロット(りーす・ばーろっと)を引き寄せた。
耳元で呟く。
すぐさま、リースは審判団のところにかけていく。
戻ってきたリースは、明るい表情をしていた。
「引き分けはないようですわ。同点の場合は時間無制限の延長戦にするそうです」
リースの言葉に、戦部は頷く。
「延長戦はどう思う?」
戦部の問いに、答えたのは、陽太だ。
「延長戦にはなりませんよ、我々には団長がいます。いよいよ温存戦力の投入タイミングが来ました」
東チームベンチ。
ミツエが急に立ち上がった。
「時がきたわ。ここからが総力戦よ」
ミツエは、自らの勘で、今が勝負時と感じたようだ。
如月 玲奈は、試合開始直後から空飛ぶ箒にのって、プール上空を旋回していた。
このゲームでは審判も空飛ぶ箒にのって、空に浮かんでいる。水中で判断するのが難しいからだ。
玲奈は、箒に乗りながら、審判のひそひそ話しやベンチの様子、博識を使用して水流の流れなどを事細かに観察していた。
試合に出る前に心頭滅却で精神集中してギャザリングへクスを一杯飲み準備を整えている。
パートナーのブレイク・クォーツ(ぶれいく・くぉーつ)がいない分、慎重に準備を進めてきた。
いつの間にか東チームの実権を握っているミツエが大きくボンボンを振っている。。
余力の残るものを集めているのだ。
玲奈は、セシリアとボールとがベンチ前を通り過ぎるすこし前、水の中に飛び込んだ。
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