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まほろば大奥譚 第二回/全四回

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第六章 新たな鬼鎧4

 新たな鬼鎧は、葦原明倫館分校へと運ばれた。
 ハイナは興味津々でこの新兵器を見にやってきた。
「ご苦労でやんす。この鬼鎧の報告も見させてもらったでやんす。この前とは違う種類のようだとききやしたが」
 ハイナの質問に蒼空学園如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)が答える。
「ああ、鬼鎧は鬼鎧でも、様々な色形や特徴を持ってるみたいだ。前の鬼鎧とは大きさも形も違う。それに重要な事もわかった。桜葉 忍(さくらば・しのぶ)くんが実際に試してくれたんだけど、鬼鎧は、鬼の血で起動したらしいんだ」
「鬼の血? ウダ殿か!」
 ハイナは握り拳を作る。
「俺もまさかとは思ったけどね。だから同じように、ウダの返り血のついた鬼鎧を奪った瑞穂藩は鬼鎧を動かせたんだよ。ただ、あちらも完全ではなくて、実戦にはほど遠いものだったらしいけどね」
 佑也は自分の仮説を実際に証明することができたが、この先これをどう動かしていくかについて悩んでいた。
 パートナーの剣の花嫁アルマ・アレフ(あるま・あれふ)が、資料を見ながらいう。
「あたし、なにか手がかりはないかって鬼城家の伝記を調べてたんだけど、こういうの見つけたの」
 アルマが古ぼけた巻物を広げる。
 ハイナと佑也がのぞき込んだ。
「これは昔の屏風絵の写しなんだけど、戦国時代のものね。ここに小さく『旗本一千人』って書いてあるのわかる? この数、どこかで聞いたことあるでしょう?」
「……鬼城家が鬼鎧を率いた数か。もしかして、この『旗本一千人』てのが『鬼鎧一千機』なのか。とすると鬼鎧イコール旗本?」
 佑也が何かを掴みかけていたとき、シャンバラ教導団杵島 一哉(きしま・かずや)がパートナーの機晶姫アリヤ・ユースト(ありや・ゆーすと)と共に疑問を口にした。
「昔の旗本は、マホロバ人のはずだろう。かなり純血に近いな。すると、鬼鎧が鬼の血を受け継ぐマホロバ人にしか動かせないのも頷ける」
 一哉の言葉に佑也はうーんと唸る。
「確かに。それだと鬼の血で起動するのもわかるな。純粋なマホロバ人が少なくなるのと同じように鬼鎧も失われていったのなら、鬼鎧に用いられた技術を何らかの方法で探ることはできないかな。おそらく技術的に可能なら、鬼の血を鬼鎧の起動に代用できないかと思うんだけど」
 彼の脳裏には、氷付けされた鬼鎧と鬼の血を結びつけるものがある一つしか浮かばなかった。
「俺にはあの鬼鎧、どうもナマモノに思えてしょうがないんだよな。今度の赤い鎧もそうだけど、血で動きだすだなんてイコンなんかの機械じゃありえないしな――」
 と、佑也にじっと見つめられて、機晶姫アリヤはたじろいだ。
 一哉の背にさっと隠れる。
「な、なんでしょうか」
「あ、ごめん。君を見てたらイコンが機晶石で動いてるの思い出したから。もし、鬼の血が鬼鎧にとって機晶石のようなのもなら、今の技術でなんとかならないかな?」
 それまでずっと黙って聞いていたハイナは、突然はじけたように顔を明るくさせた。
「あい、分かり申した! わっちが一肌ぬぐでやんす。鬼鎧を持ち帰った天御柱学院達からもデータを持ち帰りたいという申し出があったでやんす。米軍にも要請して、米軍、天御柱学院、葦原明倫館が協力して、鬼鎧の解明と新しい技術の取得に乗り出すでやんすよ!」