First Previous |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
Next Last
リアクション
(・入隊希望者)
「入隊希望のトリッシュ・ロックスターさん、ですか」
イタリアのF.R.A.G.本部に、一人の少女がやってきた。長い銀髪をなびかせた、いかにも育ちのいいお嬢様、という雰囲気だ。
彼女の隣にいる少女は、包帯を顔に巻いて素顔を隠している。
「パートナーさん、どうなされたんですか?」
「事故で少々……女性の顔ですので、あまり触れないで頂けると助かりますわ」
やんわりとトリッシュが答える。
「まずは身元を確認させて頂きます。身分証をご提示下さい。あるいは、既に部隊に所属している者からの紹介でしたら、紹介状をお願いします」
「どうぞ」
堂々と封筒を差し出す。
「確認致します……はい、少々お待ち下さい」
しばらくして、二人揃って応接室に通される。
F.R.A.G.の制服――騎士服姿が目に入る。どうやら女性は珍しいらしく、好奇の視線が向けられているのを感じた。
「間もなく担当者が参ります」
パートナーと二人きりになった瞬間、彼女は大きく息を吐いた。
(さて、何とか入れたが……正体を隠すために女装するってのは悲しいねぇ。ローゼンクロイツの思惑通りって気がするが、折角だし、このまま乗っからせてもらうぜ。さて、一体何が出てくるのか……)
適当に繕った偽の身分証や履歴書ですんなり通れたってことは、ローゼンクロイツが何か仕組んでいたのだろうか。
正体を隠したトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は考える。
「悪くないわぁ。あの人達、生身でも相当腕が立ちそう。直接戦えないのが残念だわぁ」
内なる衝動をなんとか抑えているのは、王城 綾瀬(おうじょう・あやせ)である。今はアーヤという名前で、トリッシュのパートナーということになっている。
「お待たせ致しました」
そこに、眼鏡をかけた、スーツ姿の理知的な女性が入ってきた。仕事の出来るキャリアウーマンを彷彿とさせる。
「本来なら、第一部隊のエルナージ隊長が来るはずでしたが、只今席を外しておりまして。
第二特務、アスタローシェと申します」
「あなたが、特務?」
F.R.A.G.のことは多少は調べている。第一から第三の正規部隊以外に、特務と呼ばれる者達が存在するらしいと。
「はい。とはいえ、私の場合は猊下の秘書でもありますので、兼任という形でこの役職に落ち着いております」
外にいた騎士達のような存在感は、彼女からは感じられない。
だが、それがかえって不気味だった。
あの底知れぬ男、ローゼンクロイツに近いものを感じる。
「あなたの目的はなんでしょうか?」
「クルキアータのパイロット、もしくはあなたと同じ特務への参加を志願致します」
相手は一切表情を変えずにじっと目を合わせたままだ。
「私は伊達や酔狂でここに来たわけではありません。私は、運命を変えるためにここに来たのです」
「なるほど……あなたがそのように言うことは、既に予測しておりました」
淡々と言葉を続ける。
眼鏡の奥の瞳は、ただ試すような視線を送り続けている。
「それと、その女装は趣味なのですか?」
「何のことでしょう?」
「……まあいいでしょう。とがめるつもりはありません。むしろ、特務として諜報活動を行ってもらった方がこちらとしても助かります。そういうのは、得意でしょう?」
ここは正直に答えるべきか……?
シャンバラでも、仮面の男として暗躍してきたが、この女がそれを知っているとは思えない。
だとするなら、ローゼンクロイツと繋がりがあり、彼がここに来ることを聞いていたのか。
(まあいい。形はどうあれ、特務として行動出来るんだ)
アスタローシェからの提案を承諾する。
「さすがにあなたの実力では、正式に第四特務に任命することは出来ませんが……私の元で特務輔佐を務めて頂きます」
こうして、トライブ達はF.R.A.G.の一員に加わった。
First Previous |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
Next Last