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リアクション
第七曲 〜Exceed your……〜
(・出立)
(一時的な出向?)
天御柱学院の校長室にて、コリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)が訝しげに富永 佐那(とみなが・さな)の申し出を聞いていた。
希望先はイタリアの契約者養成機関である聖カテリーナアカデミーである。
「この学院では、その特質上パートナーやイコンに乗る際に背を預けるのは強化人間が多く、私のような英霊との契約者は寧ろ少数派でした。それは取りも直さず種族特有の兵装が、英霊には無いからです」
アカデミーに関する基本的な情報は、調べればすぐに出てきた。
教会と密接に関係があり、英霊や守護天使といった種族との契約者が多いという事実が佐那の気を引いたのである。
「彼らの強さがその辺りに起因するものであれば、英霊との契約者たる私は適材ではないかと思った次第です。F.R.A.G.との関係が悪化しないとも限らない現状では機会も今を置いて他にはないと考えました。相手を学び、また善く知り、見聞する事はこの学院にとっても決して無意味ではない筈です」
関係が悪化すれば、ヨーロッパへの渡航は困難になる。
EMUの影響力が強い北欧はまだしも、F.R.A.G.の庇護化にある南欧は絶望的だと言ってもいいだろう。
「もちろん何かあった場合、切り捨てて頂いて構いません」
彼女がこれほどまでに切望するのは、単に相手を知るためという理由からではない。
多くの学生が強化人間と契約している中、英霊をパートナーとしている自分自身、疎外感を感じることがあり、英霊が多いアカデミーでパートナーたちに同時代の知己なりが出来ればと思ったからという理由もある。
「確かに、鍛錬を重ねるのは必要不可欠な事です。でもそれだけではダメなんです。私が私として一皮剥ける為に――どうか、お願します」
深々と頭を下げた。
(ふむ……)
コリマが思案し、答えを出した。
(学院から出向という形式は取れない。天御柱学院と聖カテリーナアカデミーの間には接点がないのが理由だ。学院の人間としてではなく、一組の契約者として赴けば、受け入れてもらえる可能性はあるだろう)
アカデミーに行きたければ、学院の生徒としてではなく一個人として行け、というものだ。
(アカデミーに行くというのならば、学院は休学扱いとする。それでもよいなら、休学届を提出して向かえばいい)
「はい」
コリマに対し、事前に用意していた休学届を差し出す。
「では、行ってきます」
* * *
自室に纏めておいた荷物を持ちだし、海京北地区に向かう。
「佐那よ、本当によいのか?」
足利 義輝(あしかが・よしてる)が佐那へ問う。
「公方様、もう決めたことです」
無論、この時点ではまだ受け入れてもらえるかは分からない。
仮にアカデミーに留学することになっても、世界情勢次第では学院に戻れなくなる可能性だってある。
それでも、彼女の覚悟は変わらなかった。
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