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リアクション
【3】燃えよマナミン!……5
覇王は敗北したか……、様子を窺っていた波旬は言った。
唐突に殺気を放った彼に、黒楼館の門弟は道を空け、愛美たちも振り返った。
「しかし、勝敗など初めから分かっておった。試合には負けぬ。だが、勝負には勝てぬだろうとな」
「!?」
「その方が、わしにとっても都合が良い。強者にわしの技術を植え、其れをわしが打ち砕く……」
波旬は拳を握り締めた。
「それでこそ、このわしが最強に辿り着くというもの!」
「ま、待って! マリエルは何も覚えてないんだよ! もう覇王の力なんて使えないの!」
「そんな事は見ていればわかる」
「え?」
「マリエルの覇が失われたのは残念だが、しかし、奴は新たな力を生み出すのに貢献した……!」
波旬は愛美を指差す。
「それは貴様だ、マナミン!」
「!?」
「マリエルを戻すため、拳を振るった貴様の勇気と才能、わしはこの目で見た」
「え、ええ……、私は別にそんな大したものじゃ……」
「才、無ければこの場に立っていまい。今、ここに立っていることこそ、ぬしの強さの証明よ」
彼を中心に門弟達が集まった。
「さぁマナミン、マリエル、その他有象無象、かかって来るがいい! 黒楼館の門弟どももここが正念場であるぞ!」
魔鎧葬歌 狂骨(そうか・きょうこつ)を纏い、波旬は持てる力を全て解放する。
「人・魔・龍・鬼、そして神。力を求める全ての道がわしにあり、五道を宿す我が拳こそが最強よ!」
ただひたすらに修羅の道を歩く者、虚神波旬。
暗く血塗られた道を照らすのは、強者との邂逅のみ、我が身を最強へと導く闘いだけが、彼の喜び。
波旬と共に、黒楼館門下生達は一斉に戦闘を開始した。
「な、なんだか大変なことに……」
「大丈夫だよ、マリエル」
後ろに隠れるマリエルに微笑むと、愛美は鋼勇功を身に纏い、万勇拳奥義『虎鳴万勇脚』を繰り出す。
「マリエルに近付くなーっ!!」
「くくく……」
波旬は蹴りを片手で止めると、そのまま足を掴んで、愛美を床に叩き付けた。
「きゃあっ!」
「……よもやそれが全力ではないだろうな?」
「ま、まだまだ!」
叩き付けられた反動を利用し、愛美はバネのように起き上がると、今度は無影脚を隙間なく叩き込む。
「はああああっ!!」
「くくく……、心地よい。荒削りだが、迷いなき強さを感じる。長らくわしの忘れておった感覚だ……」
素手で払うように蹴打を殺すと、空を斬る掌撃で、愛美を吹き飛ばした。
「ぐ……っ!」
「小手先の技が通用すると思うな。ぬしの力はそんなものではないだろう、さぁなりふり構わぬ全力を見せてみろ」
「この人、強さの底が見えない……!」