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星影さやかな夜に 第三回

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星影さやかな夜に 第三回

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 場所は戻って、メインストリート沿いのビル内。
 モルスが見えるリーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)はモルスの見えないアレーティア・クレイス(あれーてぃあ・くれいす)ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)に指示を飛ばす。

「ヴェルリア! あの場所を一斉射撃!」
「了解です!」

 ヴェルリアはリーラの指さした方向を見つめ、、超理の波動とPBW4機の念動球を一斉に放った。
 念動球は肉眼では見えないモルスに直撃したようで、壁にぶつかる前に途中で爆散した。

「当たった?」
「ばっちり直撃してるよ! アレーティア! 着弾地点に追撃!」
「任せるがよい!」

 アレーティアは着弾の煙が昇る地点へと一気に間合いを詰めると、抜刀術で斬りかかり悪霊退散を追撃で放った。

「どうじゃ! 霊には少々きつい一撃じゃろう」

 アレーティアはスウェー後方に飛びながら、カカカと笑った。

「アレーティア! 正面を守って!」

 ヴェルリアが叫ぶと、アレーティアは受太刀の構えを取ると、

「うっ!?」

 正面からの衝撃にアレーティアは吹き飛ばされ、壁に背を叩き付ける。

「ヴェルリアさん、何が起きてるんですか!」
「この間まで強くなってる……ううん、賢くなってるみたい」

 ヴェルリアはそれだけ言うと、モルスの動きを注意深く見つめる。
 ぶつかりあうまで分からなかったが、モルスの武はどこか精錬されたものへと昇華しているように見えた。
 凶暴性は闘志に代わり、無計画だった攻撃は戦略性をもっていて――その戦い方は、まるで人間のようだった。

(これは……見えてない二人に指示を出しながらだと厳しいかも)

 ヴェルリアはそう判断し、叫んだ。

「二人とも、今から私の攻撃に合わせて! 攻撃したらその場から離れるように!」
「うむ!」
「はい!」

 ヴェルリアはたたらを踏んでモルスに接近し、二人は後に続いた。
 それを尻目に、真司とヴィータが一騎打ちをしていた。

「きゃは♪ よそ見なんて余裕じゃない」
「くっ!」

 ヴィータは意識が薄くなった部分へと刃を振るい、真司は体勢を崩しながら距離を取る。
 その様を見つめながらヴィータはキャハと笑った。

「まだまだね。向こうも苦戦してるみたいだし……こっちもそろそろ終わらせましょう?」

 ヴィータは真司との間合いを詰めて、暴食之剣で突いた。
 短刀の間合いでは真司のサイコブレードも満足に力を発揮させることは出来ない。必然的に回避を余儀なくされるが、ヴィータはまるで蛇のようにしつこく追いすがる。

「しつこすぎる……っ!」

 真司は目くらましとしてインフィニティ印の信号弾をヴィータに投げつけると、信号弾は強い光を放った。
 ヴィータは一瞬足を止めると、真司はその隙を見逃さずにサイコブレードの切っ先をヴィータに向けて突撃した。
 だが、

「甘いわねぇ……反撃に気が行き過ぎて、胴ががら空きよ?」

 ヴィータは真司の突きを寸前でかわすと、短刀の刃が真司の腹を根元まで突き刺した。
 二人の動きが一瞬止まる。
 刺された腹を中心に赤い染みがじわり……と広がっていく。

「急所は外れたけど、十分なダメージね」
「ああ……でも、計画通りだ」

 真司はニヤリと笑うと──『物質化・非物質化』で隠していた〈さざれ石の短刀〉を呼び出した。

「やばっ……!」

 ヴィータの脳は警鐘を鳴らすが、根元まで刺さった短刀は簡単には外れない。
 真司はそのままさざれ石の短刀をヴィータの背中に振り下ろすが──横からの衝撃に短刀は吹き飛ばされてしまう。
 ヴィータは短刀を抜き取ると、真司から距離を取る。
 真司は痺れる手を押さえながら、衝撃を感じた方を睨みつけるとそこには葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が機晶スナイパーライフルを持ちながら立っていた。

「黙って護衛についていて正解であります」

 吹雪は緊張の糸を緩めるようにため息をついた。

「決闘を邪魔した事、お怒りですか?」

 ヴィータは血で濡れた短刀を拭いながらニッコリと微笑んだ。

「ううん。それより、ずっと隠れてたんだ。お姉さん、気づかなかったなぁ」
「ずっと気配を消しているのは大変でしたよ」
「うん、ご苦労様。まさか、私に助けが入るなんて思わなくてビックリしちゃった」
「助けるのは当然であります。ヴィータは仲間ですから」

 吹雪は臆面も無くそう言うと、ヴィータは照れたように頬を掻いた。

「それで、これからどうするんです?」

 吹雪に訊ねられて、ヴィータは少し思案顔。

「……そうね、そろそろ時間だし退散しようかしら」
「了解であります。再び護衛につくであります」
「ま、待て!」

 真司は傷口を押さえながら止めようとするが、二人は止まらずに逃げ去ってしまう。
 モルスを相手にしていたヴェルリアたちは慌てて真司に駆け寄ると、急いで治療を行うのだった。