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星影さやかな夜に 第三回

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星影さやかな夜に 第三回

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 第十三章 「エピローグ」

 あの事件から、一週間が過ぎた。
 自由都市プレッシオを巻きこんだ戦いは遺恨こそ残るものの、確かな終焉を迎えていた。
 街は特別警備部隊の手を借りて、徐々にだが元の姿を取り戻しつつあり――いや、コルッテロという巨悪が無くなったお陰で、以前よりも良い街に変わりつつあった。

「……ああ、もう、クッソ」

 そんな平和な街の中。一面の鈴蘭畑で、彦星明人は自分のふがいなさを嘆いていた。
 明人も復興作業に尽力していて、今日は久しぶりのお休み。完全なフリー。ならば、やる事は一つしかない。

(リュカとのデート……)

 体調が治ったリュカを誘おうと、病院まで行ったのはいいが。

(……なんで、誘うことが出来なかったんだろう)

 あれだけ大胆な事をやった後、自分には何でも出来ると思っていた。どんな事でも怖くないと思っていた。
 それがまさか、こんなことで躓く事になろうとは。
 好きな女の子を遊びに誘うのが、これほど勇気がいる事だとは思わなかった。

「ダメ人間だなぁ……」

 消え入るような声で自分に悪態をつき、明人は腰掛けるベンチに横になった。
 空を見上げる。
 カーニバルの一週間は空を見る暇なんてほとんど無くて、こんなに青かったっけ、とすら思ってしまう。
 陽光の暖かさと、穏やかな風。
 明人はそれを感じつつ、安眠を楽しむことにした。
 無理だった。

「――きゃは♪ その日常を大切にしなさいよ。失ってからじゃ、遅いんだから」

 聞き覚えのある声。
 跳ね上がるように起きて、辺りを見回す。しかし、誰もいない。

「……気の、せいか」

 胸をほっと撫で下ろすと、次にまた、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。

「おーい、明人くん」

 声のした方を振り向くと、こちらに手を振っているリュカを見つけた。

「えっ、なんでリュカがここに……」
「それはこっちの台詞だよ。明人くん、私の病室まで来てくれてたんでしょ?」
「うっ……ま、まぁ、それは」

 答えあぐねる明人を他所に、リュカは彼の隣に座った。
 両手を組んで大きく伸びをする彼女を横目に見て、明人は思う。

(なんか……柔らかくなったよなぁ)

 前までは態度や行動に固さが見て取れた。
 それはきっと、重圧や使命感から来ていたものなのだろう。
 良かった。
 あの一週間は辛いことばかりだったけど、彼女のこの姿を見れるなら、それだけで報われた気持ちになれる。

「そう言えば、まだ言ってなかったなぁ」

 突然の言葉に、明人は心臓が跳ね返りそうになった。

「え、えーっと……な、なにを?」
「ほら、明人くんや皆さんが無事に帰って来てくれたとき、私ってまだ眠っていたから」
「あ、あー……そっちね」
「そっち?」
「い、いや。何でもないよ」
「ふーん、へんな明人くん」

 リュカはそう言って立ち上がり、両手を後ろで組んで振り返る。
 一面の鈴蘭畑をバックに笑う彼女の姿はとても美しくて、数秒ほど見惚れたあと、明人は言った。

「ただいま」

 ふいに、ひときわ強い風が吹きぬける。
 幾千幾万の葉と花がこすれ合う潮騒にも似たざわめきが、一瞬だけ空間を満たした。
 それを合図にしたかのように、すべての物が静まり返る。
 静謐の中に、彼女の声が歌うように響いた。

「おかえり!」

 それは、花も俯くような美しい笑顔だった。

担当マスターより

▼担当マスター

小川大流

▼マスターコメント

 まずは謝罪を述べさせていただきます。
 大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ございません。
 これも全て私の責任であり、ご迷惑をおかけした皆様にはお詫びの言葉もございません。
 本当に、申し訳ございません。

 次は、御礼を。
 今回のリアクションは、西里田マスターに執筆のご協力をお願いしました。
 私の分かり難い構想をここまで正確に描写して頂き、本当にありがとうございました。

 シナリオについて、少しだけ書かせていただきます。
 今回の結果は主に二つです。
 ※明人とリュカは救われ、街の防衛に成功した。
 ※ヴィータ・インケルタは行方不明になった。

 それでは、またいつか、皆様とお会い出来る日を楽しみにしております。