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【裂空の弾丸】Knights of the Sky

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【裂空の弾丸】Knights of the Sky

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第2章 ホーティ義賊団のファーストミッション 4

「……悪寒がする」
「タマーラ?」
 タマーラのつぶやきにルニが振り返る。見ればタマーラの顔色がいつもより少しだけ青い。
「平気?」
「ん、今はやらなきゃだから、平気」
 しかし目の前には白騎士たちの壁、壁、壁。
 どれだけ蹴散らしても次の白騎士がやってくる。時間はあまりないというのに。
「やっぱり、親玉を倒さないとだね」
 風のごとく姿を現したのは鳴神 裁(なるかみ・さい)
 ユニオンリングでアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)と合体し、
 その身には魔鎧であるドール・ゴールド(どーる・ごーるど)を纏い、
 黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)をオーラとして立ち上らせる、
 文句なし・非の打ち所なしのスピード&攻撃特化の装いである。
「白き風のガーノ、類まれなる再生力で傷を負うことも恐れず攻撃する。うんうん、なんかボクと似てるんだよね」
「なれば参れ。戦闘狂よ」
「いやいや、今日は違うよ。ボクも風だからね。戦い方が似ているガノっちと戦いたいだけさ」
「なら、叶えてやろう。その望みを!」
 そう言いながらガーノは裁へと突貫攻撃を仕掛ける。
「回避してもいい。でも、最初くらいはね!」
 それを受けた裁も構わず突進。二つの風がぶつかり合う。
 裁自身も自身の耐久力を挙げる装備を整え、『リジュネレーション』などで持続して回復を図る。
 更には『痛みを知らぬ我が躯』を使い痛覚を鈍らせる。かなり無茶がきく戦闘スタイルを整えていた。
「おまけに武器凶化付で、スリップストリームシールドの威力もお墨付きさ!」
「……よくぞ人の身でここまで。だとしても、回復力では負けん。このまま押し切る」
 傷は負った。だがしかし、ガーノの再生力は桁外れで、裁の悪魔的な攻撃をも耐え抜いた。
「むむっ! 思った以上に力強いね。それじゃ悪いけど、ちょっとずるっこするよ」
 そう言った裁の姿が消える。と思いきやガーノの背後へと回り込む。
「ボクは風、さあ白き風? 風の動きを捕らえることはできるかな?」
 強大な威力を纏った風は、近づきは離れ離れては近づくカマイタチとなりてガーノを襲う。
「さあ、最後は芸術的に決めちゃうよー!」
 『エクスプレス・ザ・ワールド』を使用してから、己の拳を突き出す。
 その見事な突きの一撃は芸術のごとし。裁の拳からは、数ある格闘家を苦しめたと言われたり言われない、ソニックブームが生じ、ガーノへとぶちあたる。
「ぬぅううっ!」
 超音速下のいで発生し、その威力は数ある戦闘機を無残に破壊する。
 このソニックブームにはさすがのガーノもうめき声を上げる。
「それじゃとどめ!」
 怯んだガーノめがけて裁が止めをさすために風のごとく移動する。
 しかし、老兵は死なず、狡猾だった。
「……隙があれば攻める。基本、だが故に読まれやすい」
「って、うそっぱち!?」
「はぁっ!」
「ぐっ!?」
 老兵の狡猾さに引っかかってしまった裁。ガーノの空を裂く攻撃を辛くもガードしたものの、そのダメージは決して馬鹿にできないものだった。
 対するガーノも裁の猛攻、また唯斗やアインとの戦いにより、確実に疲弊してきている。
 そこへ援軍がやってくる。それを望まなかった人物もいる。それは、タマーラである。
「あいつが、くる」
「あいつ?」
 タマーラの顔を見れば、ものすごく嫌そうな顔をしていた。この後ルニは、その顔の意味を理解する。

ドドドドドドドッ――――――。

 どこからともなく大勢の足音が近づいてくる。

……じょ! ……うじょ! ……ようじょ! ようじょ!

 どこからともなく紳士たちの声が聞こえてくる。そして、それを先導していた人物はついに。
 自分だけの天使の、長らくぶり(約2シナリオ分)にその姿を見つけた後に全身全霊で駆け寄り、そして。
 抱きついた。

「天使ちゅわああーーーーーーーーーん!」
「……うるさい寄るな触るな頬をすりつけるな馬鹿」

 これがタマーラ・グレコフとニキータ・エリザロフ(にきーた・えりざろふ)の再開だった。

〜fin〜


 ではない。
「天使ちゃん天使ちゃん天使ちゅわーん! 久しぶり! もう、ずっと会いたかったわ〜!」
「ウザイ。殺すぞ。○なしオカマ野郎」
 再開にハチきれんばかりの喜びを表し、一方のタマーラは暴言をプレゼントする。
 こんな二人だが、間違いなく、れっきとしたパートナー同士である。
「それに、そっちはルニちゃんね! 無事でなによりだわ。怪我とかない?」
「だ、大丈夫」
 ニキータの言動を見て、若干後ずさるルニ。内心ではタマーラも大変なんだなぁと考えていた。
「……見たところ、あっちで大暴れしているのが四騎士の一人で、こっちの白い騎士たちは何かを守っている。後ろに機械があるところを察するに、守ってるものは制御コンピュータかしら」
 一目ですべてを見抜いたニキータ。さすがの眼力である。
「そうと決まれば、野郎ども! あの白騎士たちを取り押さえるのよ!」
「サーイエッサー!」
 地上から天空まで幼女の生活を見守る、信頼(?)の海賊たちを白騎士たちへと差し向ける。
 それまで数に物を言わせていた白騎士たちを数でもって迎え撃つ。
 白騎士たちも迎撃に手一杯になり、制御コンピュータの防壁は崩れ去る。
「今のうちに」
「うん」
 制御コンピュータを破壊しようとするタマーラとルニ。だが、ルニは思う。
「……だめ」
「……だめ?」
 だめ、そう呟いたルニ。と、ルニはガーノへと向かう。
「ルニ?」
 突拍子もないル二の行動にタマーラも破壊しようと振り上げた腕を降ろした。
 エヴァルト、裁、アイン、唯斗、朱里を相手にするガーノへ向かうルニ。
 それを見た契約者たち、そしてガーノが激しい攻防を止めた。
「……何のつもりだ」
「何でも。ただ、ズルい気がしただけ」
「ズルい?」
 ルニの言葉に怪訝な声色になるガーノ。
「……私は、制御コンピュータをみんなに任された。その思いに、報いたい」
「ならば」
「それと同じくらい、ガーノの思いにも報いたい」
「……何だと?」
 ガーノだけではない。この場にいるすべての者がルニを見ていた。
「自分を曲げられないから、ガーノは戦っている。その言葉通り、まっすぐ、戦い続けた。コンピュータを守るために」
「……」
「だから、ガーノを倒さずにコンピュータを破壊するのは、ズルいって、思った」
 普段、無口なルニが必死に言葉をつむぎだす。
「そう、だから。私は、私たちは、あなたを倒して、コンピュータをどうにかする。……そう、思った。だから」
 ルニが自分の斧を構えて、きっぱりと言った。
「戦って、勝って、破壊する」
 その瞳は、笑っているようにも見えた。
「……青臭い」
「……」
「だが、見事な一撃だった」
 ガーノが攻撃の構えをとく。途端に、それまであった威圧感すら和らいでいく。
「我が心に見事な人達、天晴れだ。その思い、しかと受け止めた。……私の負けだ」
「ええと、その」
「思いに応えてくれ、感謝する。…これを」
 ガーノは自分の斧をルニに手渡す。そのままルニに背を向けて去ろうとする。
「あ、ありがとう」
「ああ」
 その言葉を最後に、ガーノは去っていった。
「……つまり、コンピュータは好きにしろってことね。それじゃ遠慮なく」
 ニキータが制御コンピュータの前に立ち、分析を開始した。
「さてっと、これ一台から解除コードを入手できるといいんだけど……」
 至極まじめな顔つきで次々と分析を行い情報を集めていくニキータ。
「……いつも、真面目に、してればいいのに」
「あら、何か言ったかしら?」
「……なにも」
 ここにきて「普通は聞こえるんだけどここぞという言葉は聞き逃す程度の能力」を発動するニキータだった。

 ルニvsガーノ ルニの勝利!
 制御コンピュータ 全て破壊・奪還。