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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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 ここは某所。
「やめよう。この決闘システムは危険すぎるよ」
 あの後、ゲルバッキーと別れた騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、分校を支配する決闘の狙いを知って、計画を変更しようとしていた。
「決闘は中毒化する。続けているうちに頭がおかしくなって、抜けられなくなるんだ」
 ようやく、ゲルバッキーが何を告げようとしていたのかわかった。そして、決闘の後眩暈がしたのも。
「このスカウターみたいな機械ですけど、微弱な電磁波が検出されています。これが脳波に影響を及ぼすみたいですわね」
 パートナーのセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)は、検証映像を再生しながら言った。
 セルフィーナは、監視カメラなどで戦闘データを観られている可能性が高いと考え、詩穂が決闘しているの間は【マグネティックフィールド】や【情報攪乱】を施していた。それと同時に、カメラから画像の一部を取り出すことに成功していたのだ。
「スカウターのような測定器は、決闘中にでも大きなダメージの影響が身体へ残らないよう、ゲームみたいにHPを表示します。確かにこれを使うことによって、肉体的なダメージはなくなり、良いことのように思えましたわね。ですが、それが罠だったのですよ」
「これを使い続けることにより、いわゆるゲーム脳みたいになっちゃうのか。みんなハマってるはずだよ」
 決闘のたびに測定器を貸してくれるのは、立会いの決闘委員会だ。
 聞いたところによると、特命教師たちがこの分校にくるまでは、こんな機械は使っていなかったという。
 決闘システムは古くからあったし、ワッペン制度も決闘委員会も初期の頃からあったようだ。その頃は、決闘といってもヒャッハー! でかなり乱暴だったらしい。流血することも日常茶飯事だった。
 分校の生徒たちがおかしくなったのは、特命教師たちが決闘システムを改変して、測定器を決闘委員会に与えてからだ。決闘はゲームになり、誰も傷つかず、代わりに牙を抜かれた狼のように分校生たちは野生を失った。
「やっぱり一種の洗脳だったんだね」
 詩穂は、ゲルバッキーが心配になっていた。彼もまた、脳を侵され自我を失っていったのだ。
「すぐに測定器の使用を中止させたいね。決闘制度そのものは否定しないまでも、機械を使わずに戦えるはずだよ」
 だが、ここまで生徒たちがズブズブに決闘ゲームに侵されて、耳を貸してくれる人がいるだろうか? 



「ゲームのやりすぎと同じ状態だ。脳波が変調をきたしている」
 分校へとやってきていたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、聞き込みと調査の後、子分をたくさん連れて我が物顔でのし歩くゲルバッキーを見つけ、強引に連れ出していた。
 真理子からゲルバッキーが決闘ゲームにハマっているとは聞いていたが、なるほど中毒状態だった。
 ボクは黒ワッペン保有者様だぞ! などと意味不明なことをギャーギャーわめきながら暴れるゲルバッキーを押さえつけ、診断して症状を把握する。【ショックウェーブ】を応用した軽い衝撃を与えてやると、ゲルバッキーは大人しくなった。
「……」
 これは一旦連れて帰らないと完全に治療できないな、とダリルは判断した。
 彼としたことが、父に会うのが嬉しかったのか、必要な機材やスキルを忘れてきてしまったのだ。
「真理子が戦うんだ」
 ゲルバッキーはうわごとの様に呟く。
「ただ逃げるんじゃない。地下教室の最下層から、真理子は反撃しようとしている。分校のルールに則って、決闘システムで。その時までに、ボクはこの分校で王になっていたかった。決闘を制した最強の金ワッペン保有者として、真理子の味方をしたかったんだ」
「ばかやろう」
 ダリルはゲルバッキーの思いがわかって、そっと抱きしめた。
「ボクを黙って行かせてくれ、息子よ。体調がおかしいくらいで降りたら、ここで逃げたら、ボクは二度とお前を息子と呼べなくなる」
「ばかやろう」
 ダリルはもう一度優しく言った。
「父の名を貶める息子がいるか。もし父がここで散るなら、その時はオレもお供しよう」
 ダリルは立ち上がる。ひとまずゲルバッキーに応急処置をして、安静にしておいた。
「要するに、勝てばいいわけだ。父の名に泥を塗るようなことは、この俺はしない」
 さてどうするか。
 行動指針は、次回のガイドを見てからだ(?)。