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【蒼空に架ける橋】第3話の裏 停滞からのリブート

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【蒼空に架ける橋】第3話の裏 停滞からのリブート

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第三章 鏖の遊戯

――雲海。

「ちっ、中々しぶとい野郎だぜ!」
 船に戻ってきたオクトパスマンが苛立たしく吐き出す。
「ちょっと! あんまり効いてないみたいじゃない!」
 ラブの言う通り、蛇の頭部に何本も銛は刺さっているのだが効いている様子はあまり見られない。速度は早いが、一撃に余り力を込められない為浅くしか刺さっていないようである。それでも普通ならばダメージは大きいのだが。
「あの……頭は弱点じゃないということはないんですか?」
「いや、頭の方だと思う」
 ウヅ・キの言葉を、桂輔がライフルを下ろして否定した。
「俺の方でさっきからコイツで撃ってるけど、身体の方に着弾しても痛がる様子は全くない。翼の方撃ち落とせば動けなくなるかな、って思ったけど効いてないみたいだし」
「ならば、もっと効果的な場所があるという事でしょう」
 桂輔の隣でアルマがライフルを構えた。銃口は頭を狙っている、が直ぐに引き金は引かない。
「……この風で……動きは……」
 独り言を呟きながら、アルマは銃口を頭部に定める。やがて独り言を止め、呼吸を整え――アルマが引き金を引いた。
 放たれた弾丸は頭部――の目に着弾する。
 突き刺さった弾丸により破裂した眼球から夥しい量の体液が流れ、頭部に銛を突き立てられた時とは比べ物にならないほど蛇は体を悶えさせ、悲鳴のような声を上げた。
「……効いてる?」
「恐らく」
 アルマが一息つき、ライフルを下ろす。
「ですが、これ以上こちらでは攻撃は出来ません」
 そしてアルマが呟く。その視線の先には、しがみ付くコアとモリ・ヤが居た。これ以上こちらから攻撃をした場合、二人に被害が及ぶ可能性がある。
「……後はお二人にお任せするしかないでしょう」

     * * *

 蛇の身体では、コアとモリ・ヤは頭部を目指してよじ登っていた。銛を体に突き刺して固定し、一歩一歩と着実に頭部へと近づき――遂に到達する。
「……やっぱり駄目だな、こいつは随分頭が固いようだ」
 頭部でモリ・ヤが銛を突き刺してみるが、オクトパスマンが刺した物と同じようなところまでしか刺さらない。恐らく骨を貫く事ができないのだろう。
「ならば私の方で目をやろう! モリ・ヤは振り落とされないように捕まっていてくれ!」
 コアの言葉に、モリ・ヤは突き刺した銛をしっかりと握る。その姿を確認してから、コアが自由な方の手を構えた。
「――蛇よ、お前にも事情があるのだろう……だが、我々もここで果てるわけにはいかんのだ! やらせてもらうッ!」
 そして、瞼が無くむき出しの眼球に銛を突き刺した。傷口から体液があふれ出す。そして苦悶の悲鳴を上げる。
 だがコアはお構いなしに更に深く突き刺していく。腕の力を込め、もっと奥深くへと。
 そして蛇が一層と暴れ出す。しがみ付いていても振り落とされそうな程だ。
「――せぇやぁッ!」
 コアが気合と共に腕に力を籠める。ずぶり、と更に奥深くへと銛が刺さった。
 一瞬、暴れていた蛇の身体がビクンと硬直する。が、すぐに全身から力を失ったように弛緩し、動きを止めた。
 頭を垂れるようにし、そのまま倒れる様に落下する。

     * * *

「やった……のか?」
 漁船から蛇が脱力する様を見て、桂輔が呟く。
「ええ、恐らく」
 その横でアルマが同意するように頷くと、「はぁ……良かった……」とウヅ・キが安堵の息を吐く。
「……ちょいとまった」
 一人、ラブが顔を顰める。
「あの蛇に居る二人、どうやってこっち戻ってくるの? てか、ハーティオン確か手を銛で縛ってるから――」
 自分で呟いた言葉に、ラブが青ざめる。
「お、オクトパスマン! すぐハーティオンの手の縄斬りに行って! ハリー! ハリアップ!」
「無茶言うんじゃねぇよ! 距離があり過ぎるわ! いくら俺様だって雲海は泳げねぇよ!」
「ちっ、使えないタコね!」
「あぁん!?」
 何故かラブとオクトパスマンが一触即発になる。
「お、おいおい何で争ってんだよ……」
 桂輔が止めようとするが、メンチを切り合っているラブとオクトパスマンは止まる気が無い。
「では私が何とかしましょう」
 そう言ってアルマが再度ライフルを構えた。狙いはコア。
「――って無理だろ! いくらなんでも無理だろ!」
「先程はできました。やってみなくては解りません」
「標的が違いすぎるから! 大きさとか全然違うから!」
「むしろ目より大きいでしょう?」
「待てお前何狙ってるんだ!?」
 ライフルを構えるアルマを止めようとする桂輔。横で尚メンチ切り合ってるラブとオクトパスマン。
「あ、あの……これ、どうしたらいいんでしょうか……」
 オロオロしつつ、ウヅ・キが船員に助けを求める。
「いや……俺達もわからねぇ……」
「アンカーぶっ刺してるんだから後で引き上げりゃ済む話なんだけどなぁ……」
 船員も呆れた様に呟くが、その事を四人誰もが気づいていないようであった。

※その後コアとモリ・ヤは無事に救出されました。