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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【3/3】 ~

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伝説の教師の新伝説~ 風雲・パラ実協奏曲【3/3】 ~

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 さて一方。パートナーのネフィリム三姉妹と別行動を取った凶司は、と言うと。
「バカな! 電算室がすでに占領されているだと。誰か写楽斎の手伝いでもしているのか!?」
 彼は、ここまで来る傍ら情報を集めて施設のある場所を突き止めていたが、目的地へと辿り着くことができていなかった。迎撃要員が待ち構えていたからだ。
「なんか、おにーさんが来たよー」
 真オリュンポスのデメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)は、指示通りサーバールームを厳重に守っていた。今回もミネルヴァ・プロセルピナ(みねるう゛ぁ・ぷろせるぴな)から高級ドーナツで買収されたデメテールは、分校の工作員を始めあらゆる侵入者を通さないと、一人頑張っていたのだ。もっとドーナツが欲しいと戦意に満ち溢れている。
「くっ……!?」
 敵の勢いに、凶司は後ずさった。外見に似合わず、デメテールには一切の説得の類が通じそうにない迫力があった。
「……!」
【隠形の術】で姿を隠しつつ、【殺気看破】と【野生の勘】で侵入者の接近に気づいていたデメテールは、【壁抜けの術】で凶司の死角から飛び出し、【疾風迅雷】の【ブランドナイブス】で【先制攻撃】を仕掛けていた。さらに追い討ちをかけてくる。
 凶司のスキル装備欄に【防衛計画】がなく、レベルがもう少し低ければ深刻な被害を受けていたところだ。
 不意打ちの傷を負いながらも体勢を立て直した凶司は、戦闘を回避する判断をした。電算室の入り口を守るデメテールと戦っていては時間がかかる。悪の秘密結社の戦闘員も待ち構えているし、奥にはさらに複数の高レベルの契約者がいるのに気づいたからだ。
 電算室が使えなくても、パートナーのネフィリム三姉妹からなるパワードスーツ隊の変形後の飛空挺がある。コンピューターを使うことができれば、凶司の土俵で勝負できるのだ。ここは固執せずに放棄したほうがいい。
 彼は、回れ右すると大急ぎでもと来た道を引き返し始める。
「あっ、待て!」
 優勢と見て取ったデメテールが追いかけてきた。ここで侵入者を逃すと、後で徒党を組んで仕返し(?)しにくる可能性があることを彼女も知っていたからだ。地の利はデメテールにあるので、罠とスキルを駆使して葬ってやろう。
「さすが、十六凪の【戦況把握】と【防衛計画】は完璧だねー。ミネルヴァが仕掛けた爆弾にも敵の注意が向いてくれるし、迎撃しやすいなー」
 デメテールは攻撃を続ける。うまくし止めればおいしいドーナツの追加をもらえそうだ。
 ドドドーーン!
 退避を試みる凶司を無数の爆弾の威力が襲っていた。
「この娘、オリュンポスか!? めちゃくちゃしやがって!」
 凶司は、デメテールの攻撃と罠を何とかかいくぐり、安全地帯まで避難する。敵は深追いしてこない。サーバールームの付近から離れれば、それ以上の攻撃はなかった。
 オリュンポスが特命教師たちと手を組んでいる? オリュンポスのことは、もちろん凶司も知っている。ドクター・ハデスは蒼空学園生だ。相手にとって不足はない。むしろ、有象無象のモブ特命教師たちよりも戦いがいのある敵だろう。
 彼は全速力で飛空挺へと取って返した。乗り込むと、搭載されているコンピューターの全システムをオンにする。
「作戦変更だ! オリュンポスの連中がいるから気をつけろ!」
 凶司は、パートナーたちに伝えるとすぐさま『機晶脳化』のスキルで、コンピューターからネットワークへと飛び込んだ。
「面白い。そうこなきゃな」
 サーバーの位置はすでに把握してある。攻撃を開始しようとすると、先に向こうから反撃が来た。膨大なウィルスが凶司の持つ飛空挺のコンピューターへと送り込まれてくる。
(このパターン……。先日のXルートサーバーが支障をきたした時と同じだ。オリュンポスが作業を引き継いでいたか)
 凶司は、セキュリティの障壁をはりつつ相手側のネットワークの奥深くへ侵入しようと試みる。そうはさせない、と分校のコンピューターもまた分厚い盾を仕込みながらトラップ攻撃を繰り返してきた。
 Xルートサーバーの時は、事後だった。人工衛星を打ち上げた後でもう隠す必要もなかったから手を抜いていたと思う。だが、今回は向こうも本気で潰しにくる。
「いいよ、来いよオリュンポス。一度電脳空間で戦ってみたいと思っていたんだ」
「ほう……、飛び入りですか。大歓迎ですよ」
 電算室の奥で、真オリュンポスの天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)が凶司の存在を確認して笑みを浮かべる。
「ハデスさんとの戦いの前哨戦にちょうどいいですね。退屈させないでくださいよ?」
「それはこっちの台詞なんだぜ? 悪さばっかりしやがって。この機にハデスもろとも討ち取ってやるよ」
 凶司は高度なテクニックを駆使して電子戦を仕掛けていった。
 今起こったことをありのまま話すと、写楽斎を追って分校へ殴り込んだらいつの間にかオリュンポスの内紛にまきこまれていた。……が、その辺の事情は彼にとってどうでもいい。  
 ここを突破しないと敵の計画を阻止することはできない。
 パラミタの平和をかけた戦いが、いち早く始まっていた。