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第6章 終わりなき狂宴


 さてさて、美男子・美少年達による狂宴はまだまだ続くようです。「なんかもう、いい加減、お腹いっぱぁーい」というアナタも、ゲップはこっそり飲み込みましょう。
 妖しげな音楽とともに闘技場へ飛び出したのは、ピエロの格好をしたナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)くん。彼と双子のようによく似た容姿を持つ機晶姫クラウン ファストナハト(くらうん・ふぁすとなはと)さんも一緒に登場です。
 うっとりと見つめ合う二人の姿は、まるで水鏡に映った自分に恋するナルキッソスのよう。向かい合った二人は、互いの首筋に手を伸ばす。まるで愛撫をするかの如く、胸から下腹部へと滑ってゆき……瞬間、二人の身にまとっていた服がするり…と落ちる。
 露わになったナガンの肉体を隠すモノは六尺褌のみ。しかし、クラウンの胸には何故かサラシが巻かれていて…
「とぉーれっ! とぉーれっ!」
 突然、会場が一体となりブーイングコールが沸き起こってしまいました。やはり
惜しみもなく胸をさらけだした姫宮さんの印象が強すぎるのでしょう!
 これはナガン&クラウンコンビにとって、痛恨の一撃です。
 その頃、舞台裏では膝を抱え、苦悩の表情を浮かべる少年の姿がありました。
「女ならば裸を晒せば喜ばれる。ダビデ像もヴィーナスも全裸だが、なぜ俺様だけ変態扱い?」
 薔薇の学舎きっての変人と名高い、変熊 仮面(へんくま・かめん)くんです。変熊くんと言えば、全裸に薔薇学マント、赤マフラー、赤い羽根のついた仮面姿が定番スタイルですが。不思議なことに今日の変熊くん。素顔をさらし、いつもシッカリパッカリご開帳な股間のモッコリも機能性水着の中に押し込んでいます。何故、彼のアイデンティティとも言える全裸が封印されたのでしょうかっ?!
「俺、このオーディション駄目だったら、引退するんだ」
「…………(それ死亡フラグやん)」
「そしたら、一軒家で熊を飼おう!」
「…………(わしがおるやんけ)」
 変熊くんの隣では、パートナーのゆる族、巨熊 イオマンテ(きょぐま・いおまんて)くんが、その巨体を小さく小さく丸めて心配そうに見守っています。
 そうこうするうちに変熊くんの出番が近づいてきます。
「さぁ、行こう! 新たな自分の可能性を見つけに!」
 自分を奮い立たせるように変熊くんは、握りしめた拳を宙へと突き立てます。
 いざ、闘技場へと足を踏み入れようとしたそのとき、一人の人物が変熊くんの前に立ち塞がります。蒼空学園の島村 幸(しまむら・さち)さんです。両肩にブーメランの端っこがかろうじて引っかかっているだけの超ハイレグ仕様っ。トップレスも良いけれど、乳首が見えそうで見えない幸さんの水着も、捨てがたいっ!
「こら、変熊っ。漢が服なんて着てんじゃねぇよっ!!!」
 幸さんは、問答無用で変熊くんに飛びかかります。
「私なんてねっ。ジェイダス校長の抱擁ほしさに参加したのにさぁ。海辺でシンクロやるつもりが、闘技場のせいで海なんて見えないっつうの!」
「そうですっ。海辺で幸さんと、おいかけてよハニーをやる予定だったのですよ!」
 幸さんのパートナー、ガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)くんも、悔しそうに涙を浮かべながら力説していますが。何を言いたいのか、よくわかんないデス。
「じゃぁ、今回の大会は辞退するの?」
 幸さんにのしかかられた変熊くんは力なく問いかけます。しかし、幸さんは強かった!
「あっはは、辞退? 私、負けるの嫌いなんです!」
 あっさりと一蹴すると、胸をそらして言い放ちます。
「シンクロができないなら、闘技場の中で新体操でもやるまでよ!」
 幸さんの決して揺るぐことのない闘争心が、変熊くんの殻にこもってしまった心を揺すぶります。
「俺は…俺は…」
 そのとき。変熊くんの身体に影が通り過ぎました。
 あ、っと気がついたときには、変熊くんはいつもの全裸姿に?!
「ハーハッハッ、私は今世紀最高の魔術師怪盗マイン。今回のターゲットは高価な品でも優勝でもなく、人々の心を頂戴する事。そなたの弱り切った心をいただいて行くぞ!」
 どこからともなく聞こえてくる高笑い。それは、先日、薔薇の学舎を騒がせた魔術師怪盗マインの声にそっくりです。それにしても男子の脱ぎたて水着を奪ってゆくなんて、趣味悪ッ!
 怪盗マインの声を呆然と聞き流す変熊くんでしたが、覚醒のときはやってきました。
「俺は…俺様は…真なる美の探求者、変熊仮面だぁーー!!!! 幸ッ! 俺様もともに戦うぞぉー!」
 全裸に戻った変熊くんは、自慢の一物をブルンブルンと揺すりながら、闘技場の中へと走り込んでいきます。しかし、本日の観客達はすでに松茸・キノコ・タケノコ、どれも食べ飽きている状態です。普通にスルーされてしまった変熊くんは、またしても苦悩の渦へと引き摺り戻されたのでした。