百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

第2回ジェイダス杯

リアクション公開中!

第2回ジェイダス杯

リアクション




第七章 水上の決戦


 水上都市ヴァイシャリーを舞台に、騎士の誇り賭け数々の戦いや葛藤が繰り広げられてきた第二回ジェイダス杯。ついに先頭の選手が、ゴール地点である騎士の橋がかかる大運河に帰ってきたぞ。
 真っ先に大運河に飛び込んで来たのは、百合園生徒の甘いひとときを捨てさった蒼空学園の葉月ショウ選手!
 続くのは、前大会第六位、シャンバラ教導団の比島 真紀(ひしま・まき)サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)、そして百合園生のメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)を乗せた「百合と銃」チームのゴンドラだ。サイモン選手が放つドラゴンアーツ、メイベル嬢のパワーブレスで、水上移動に難はないものの、最初から最後まで自分の腕で漕がなくてはならないというゴンドラのデメリットをカバーし、優勝戦線に残ったぞ。
 前回の大会でもそうであったが、地味に且つ確実に優勝戦線に食い込む比島&サイモンペア。まさに教導団ならではの高い情報収集能力と優れた状況判断力は侮れないっ。
 さらに後方からは、永夷 零(ながい・ぜろ)高潮 津波(たかしお・つなみ)嬢を乗せた小型飛空挺が追いかげてくる。
「私、怖くないよっ。永夷さんの好きなように走ってくれればいいのっ」
 自分に言い聞かせるように何度も呟きながら、必死で永夷選手の背中に抱きつく津波嬢。健気である。
「これはジェットコースターなのよっ。怖くなんかないわっ! だって、大好きな永夷さんの運転なんだからっ」
 しかし、津波嬢のさり気ない告白も、運転に集中する永夷選手の耳には届かない。
 永夷選手の飛空挺に併走するように飛んでくるのは、永夷選手の契約者ルナ・テュリン(るな・てゅりん)選手とナトレア・アトレア(なとれあ・あとれあ)嬢の小型飛空挺だ。
 前を行く比島選手達のゴンドラの舵を奪おうという作戦なのか。低空飛行に切り替えた永夷選手。激しい水しぶきが跳ね上がり、水面が大きく揺れる。
 しかし、先を行く比島選手達も負けてはない。必死でゴンドラの舵を取る比島選手とサイモン選手の横で、メイベル嬢とセシリア嬢が突然、大きなクーラーボックスを取り出した。蓋を開けたかと思うと、大運河に向かって投げ捨てたぁ?!!!!
 濛々と白い霧のようなものが辺りを覆い尽くす。どうやらメイベル嬢達は、事前に大量のドライアイスを用意しておいたようだ。
 視界を奪われた永夷選手。小型飛空挺の運転を誤ったのか?
 大きく揺れた小型飛空挺は、水面へと突っ込んだ。
 その隙をついて、永夷チーム、比島選手達の百合と銃チームを抜き去って行ったのは、空飛ぶ箒にまたがったソア・ウェンボリス選手とフィル・アルジェント嬢。同じく空飛ぶ箒で出場の緋桜ケイ選手と稲葉繭嬢も後に続く。
 足場の悪い水上都市ヴァイシャリーでは、小型飛空挺や空飛ぶ箒に乗った選手達の独壇場だ。空を飛ぶ手段を持たない白馬やバイクは、やはり不利だったか。
今度こそはと悲願の優勝を誓った薔薇学の選手達は姿も見えないっ。このまままたしても他校生に優勝をさらわれるのかっ?!
 ………と、ここで!
 大運河に面したはばたき広場に薔薇学生の姿が?!
 愛馬イフィイにまたがった藍澤黎選手とロザリンド嬢のコンビだ。しかし、水上の決戦に参加するには、白馬では難しいっ、と思いきや。
「黎、こっちやで〜!」
 またしても藍澤選手の契約者フィルラント選手がゴンドラで登場だ。
 素早くゴンドラに飛び乗った藍澤選手、まるで馬車のように白馬をゴンドラにつなぐと、揺れる大運河に乗り出した。
「ここが踏ん張りどころだ。ロザリンド嬢も頑張れるなっ?!」
「任せてくださいっ!」
 必死で泳ぐ愛馬イフィイの手綱を取る藍澤選手。その横ではフィルラント選手だけでなく、ロザリンド嬢までも汗だくになりながら、手にした櫂を動かしている。
 悲願の優勝を力ずくで引き寄せるが如く、グイグイと先行する選手達との距離を縮めていく藍澤チーム。
 追いつかせるかと、必死で逃げるのは、葉月選手の小型飛空挺、空飛ぶ箒にまたがったソア&フィル、そして緋桜&繭。ゴールである騎士の橋は目前だ!
 と、そのとき。
「待たせたなっ、皆の者っ!」
 騎士の橋の手前にある、名も無き勇者の橋に一頭の白馬が走り込んできた。
 白馬に乗っていたのは、何とお騒がせ薔裸族、変熊仮面と最強オネーサマ篠北礼香嬢だ!
 このまま白馬で大運河に飛び込むかと思いきや、突然、水面が大きく盛り上がると、山のように大きな津波が小型飛空挺と空飛ぶ箒に襲いかかるっ。
 何が起こったのか分からず、呆然とするギャラリーを前に、篠北嬢を両手で抱え上げた変熊選手はふわりと津波の上に…乗っかったぁっ????
「でかしたぞ、イオマンテ!」
 津波の正体は、変熊選手の契約者、身長1800cm、体重4930kg巨体のゆる族巨熊 イオマンテ(きょぐま・いおまんて)だ。どうやら光学迷彩を使ったイオマンテ選手、ひっそりとその巨体を縮こまらせ、大運河に隠れていたらしい。
 イオマンテ選手に運ばれた変熊選手は、呆然とする人々を尻目に悠然とゴォォール!!!

 薔薇の学舎、ついに悲願の優勝達成だ!!!