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リアクション
第3章
ホイップが黎と早速、桃の木の対処へ当たろうとしているところへ、白馬に乗って駆けつけた桐生 円(きりゅう・まどか)が現れた。
「ホイップ! こいつを使え!」
と、前回使った札束の小道具を手渡した。
「へっ……?」
何が何やら解らない。
円の後ろにいるオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)、ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)はわくわくいていた。
そんな様子をみて、自分が求められているであろうことになんとなく気がついた。
「ホーイップ! ホーイップ!!」
あまりにもキラキラした瞳で声を合わせている。
「はう…………えーい!」
それに耐えきれず、近くにいたぼーっとしているコウモリを札束で殴ってみた。
3人からは満足そうな顔と拍手が出て、ホイップからは変な汗が出たのだった。
「ご主人に何やらせてるんだーー!」
後ろからホイップを追ってきていたメイド牙竜が猛スピードで3人に近寄ると3人は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
ホイップは札束が終わると直ぐに黎が当たりを付けた木へと近付いた。
「この木を始末しよう」
「うん」
「俺も手伝う! はーはっは!!」
「う、うん。牙竜さん、宜しく」
いまだにロングのメイド服をまとった牙竜に慣れないようだ。
黎がライトブレードで動きまわる根を切り落とした。
牙竜は2人が危なくないようにと周りのコウモリとオオカミの対処に当たっている。
桃の木の動きが止まったところで、ホイップがバニッシュを放つと周りに居た魔物達も道連れになった。
桃の木の動きは完全に止まったが、桃の実も一緒に消滅してしまったようだ。
「うっ……力の加減が難しいかも……」
「そのようだな」
「はーはっは!!」
「……牙竜さん、テンションが良く解らないよ……」
こうしてまずは1本の木が退治されたのだった。
こちら、桃の収穫組。
背中に大きな籠を背負って倒れた木から桃の収穫をしているのはルーク・クレイン(るーく・くれいん)だ。
隠れ身を使い、魔物に気配を察知されないようにうまく動いている。
「お手伝いしたら、ちゃんと分けてもらえると良いですね。部屋で待ってる者も居ますし」
桃が食べたいと駄々をこねている自分のパートナーを思い出し、少しだけ溜息を吐く。
「この木はもう良いでしょう。次の木に……へっ?」
隠れ身を使っていたのだが、どうやら傷ついた桃から匂いがだいぶ漏れていたようだ。
周りを魔物に囲まれてしまっていた。
隙間を発見し、ダッシュでその隙間から逃げ出した。
追って来る魔物の群れ。
自分1人では対処が出来ないと、隠れ身を解き、近くにいた人の所へと突っ込んだ。
「ごめんなさい! 骨は拾います!」
そう言うと籠を鈴木 周(すずき・しゅう)にパスしたのだ。
「俺ーー!?」
パスされて直ぐに、どういう状況なのかを理解してしまった。
何せルークの後ろには先ほどより増えた魔物が群れで追って来ているのだから。
「ちょっ! 早く逃げるか、籠を捨てるか、魔物を倒すかしないと!!」
周と一緒に桃を採っていたレミ・フラットパイン(れみ・ふらっとぱいん)が意外と冷静に3つの提案を出した。
「とりあえず、逃げるぞ!」
「うん!」
2人は他へと走っていったのだが、もう大丈夫と思いルークは一息ついていた。
しかし、魔物はルークにも近付いてきたのだ。
「な、なんでですか!? はっ! 桃の実の汁が服に……!!」
急いで走りだし、先に行っている2人を追いかけた。
「……あははは、捕まえてごらんなさーい!!」
「あまりの事に壊れてしまったみたいだな……不憫な……。端整な顔立ちのお嬢さん、俺が一緒に魔物から逃げてあげるよ!」
「こんな時までナンパしてるなーーー!」
レミは周に自作ハリセンで走りながらツッコミをしたのだった。
「桃の木ロデオなんて今しか出来ないよねぇ! ヒャッハー!!」
桃の木にしがみつきながら桃の実収穫をしているのは東條 カガチ(とうじょう・かがち)だ。
「あ、桃うまいねぇ」
収穫したばかりの桃を1つ頬張ると、ロデオを続けるのだった。
「そこの人! 逃げた方が良いかもよ!!」
「はい〜?」
声がする方を見ると魔物の群れに追われているルーク、周、レミの姿があった。
叫んだのは周のようだ。
ルークは未だ壊れており、レミが必死にフォローしているのが見える。
桃の木から下りようとしたが、間に合わず、進路が変更できずに突っ込んできた3人と魔物の群れがカガチの乗っていた桃の木に激突した。
「地面が上に見えるなぁ」
呑気な事を言いながら、カガチは桃の木ごと倒されてしまったのだった。
桃の木を囲んでいた魔物は雑魚退治をしている人達がやってくれているのを見て、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)はミラベル・オブライエン(みらべる・おぶらいえん)と久世 沙幸(くぜ・さゆき)にディフェンスシフトを使用し、桃の木へと専念する事に決めたようだ。
「うねうね動く根っこ……」
沙幸はスキルをかけてもらっている間、桃の木の根を凝視し、顔を赤らめていた。
「沙幸さん、大丈夫ですか? 顔が赤いようですけれど……?」
心配して優希が声を掛けた。
「う、うん! 昨日ねーさまから受けたスキンシップを思い出しちゃって……ううん! ごめん、なんでもないよっ! せっかくホイップが頼ってくれたことだもん、頑張ろうね!」
「はい!」
「そうですね」
優希とミラベルは沙幸の言葉に深く頷き、3人は戦闘態勢へと移行したのだった。
沙幸が根っこへと氷術を使い、動きを止めた。
その機会を逃さず、優希がバーストダッシュで一気に間合いを詰めハルバードの斧の部分を使い、幹の同じ個所を何度も攻撃する。
ミラベルは魔物がこちらに来た時に、優希と沙幸を守るように動いていた。
「はっ!」
渾身の一撃を幹へと入れると、とうとう桃の木は悲鳴を上げ、幹は折れたのだった。
「ここでオレの出番だな!」
国頭 武尊(くにがみ・たける)はそう言うと倒れた桃の木からつぶれていない桃の実を選別して収穫していく。
「発泡スチロールの箱を持ってきていますので、良かったら使って下さい。匂いでまた魔物が寄って来てしまいますから」
ミラベルが自分の持ってきていた白い箱を差し出した。
「そうだな。有り難く使わせてもらうぜ」
箱を受け取るとまた収穫に戻っていく。
ミラベルは魔物がこないのを確認して、自分も収穫をしていった。
「私達も収穫のお手伝いです」
「うん!」
優希と沙幸もそれに倣う。
「だいぶ人がいるみたいだし、早く終わりそうだな」
「そうだと良いですが……ミノタウロスの討伐は少し骨が折れそうですよ」
武尊の言葉に優希が心配そうに言う。
「結構人が行ったから大丈夫だろう?」
「そうそう! 大丈夫だって」
「そう……ですね」
あっけらかんとした武尊と沙幸につられる。
「優希様、いざとなったら助太刀いたしましょう」
ミラベルの言葉に頷くと収穫の手を早めたのだった。
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