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【借金返済への道】突然変異!?

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【借金返済への道】突然変異!?

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第5章


 桃の木が植わっていた場所から少し離れたところで、収穫パーティーの準備が着々と進んでいた。
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)、ファイリアが楽しそうに調理をしていた。
 調理器具はホイップが元々準備していたものだ。
 その横ではフィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)と武尊がタノベさんに卸す事の出来る桃を選別していた。
 その選別で卸すことの出来ない桃を調理へとまわしていた。
「こいつは綺麗な桃だぜ」
「あらあら、こっちは傷がついてダメみたいですわ」
 和気あいあいと梱包していく。
 こちらは調理チーム。
「ファイは桃の盛り合わせとジュースを作るです〜」
 ファイリアは2人に宣言すると直ぐにとりかかった。
「私は桃のコンポートに、桃の冷製スープ、ヨーグルトムースを作るですぅ」
「じゃあ、僕は料理が苦手なメイベルのお手伝いをしながら口直し用のクッキーやタルトを作ろうかな。シャーベットはタノベさん特別メニューとして作るよ」
 こちらも仲良く調理がスタートしたようだ。

 調理が終わった頃ミノタウロスとの戦いを終えた者達が帰ってきた。
 結局、卸せる桃は27個のみだった。
 100個以上の収穫があったにも関わらず、魔物との戦闘、食べられたりしており、数がだいぶ少なくなってしまったのだ。
 その分、収穫パーティーではタノベさんが用意した大き目のテーブルに料理が所狭しと並べられた。
「せっかくの料理です。紅茶も淹れましょう」
 クレイはそう言うと余っていた桃を薄くカットし、ブランデーと蜂蜜を振りかけた。
 それを火術で少しだけ温め、なじませる。
 そして、濃い目のダージリンを淹れ、カップに注いでからなじませた桃を入れた。
「おお〜! 美味しそうじゃのう。しかし熱過ぎじゃ、もう少し冷めるのを待つとするかのう」
 ファタは歓喜の声をあげ、自分のカップの中身に息を吹きかけぬるくなるのを待った。

「今日は有難うございました!」
 ホイップが頭を下げると、皆は柔らかく笑うだけで責める者などいなかった。
「それでは、収穫が無事に終わった事に……乾杯!」
 ホイップの声に各々、持っていたカップやグラスを軽く持ちあげ、乾杯とした。
「ホイップ、この桃のコンポート私が作ったんですぅ。是非食べてみてください」
「うん!」
 早速ホイップの所にやってきたメイベルの言葉に頷き、コンポートを口へと運んだ。
「……」
「どうですぅ?」
「美味しいよっ!」
「それは良かったですぅ!」
 ホイップが嬉しそうにコンポートを頬張る様を見て、メイベル自身も笑顔になっていた。
「あらあら、本当に美味しいですわ」
 メイベルの側に来ていた、フィリッパもコンポートを褒めたのだった。

「ホイップ、ごめんね。真由美さんも何か理由があってやったことだと思うんだ」
「ううん。大丈夫だよ! 気にしないで」
 真由美が桃を持って逃げた事を、申し訳なさそうに寛太が謝った。
「ほらほら、せっかく皆が作ってくれた料理、一緒に食べようよ」
「そうだね。料理はカーラと2人で楽しませてもらいますね」
「その前に、今回の騒動で尽力した謝礼の桃を求めます。別に桃じゃなくても良いんですよ? ようは気持ちです」
 カーラが言い放つ。
「え、えーっと……はい、あーん」
 ホイップは悩んだ末、カーラに桃のパイを食べさせた。
「これじゃ……ダメだよね?」
「……今回はこれで良しとしましょう。次はもっと良いものを用意しておくのです」

 ホイップが1人になったのを見計らって、カガチがこっそりと近付く。
「ホイップちゃん、はじめまして。エルくんからお噂はかねがね」
「あ、はい! はじめまして。エルさんとお友達?」
 急に挨拶されびっくりしていたが、素直に返す。
「うん、そんな感じだねぇ。で、エルくんなんだけど、あいつ金色だし変だしちょっとナンパしてるけど良い奴だよ。ホイップちゃんの事も本気みたいだから、宜しくね」
「へっ……!? え、え〜と本気……だったの? てっきり他の方と同じようにナンパされてるだけかと思ってた。だって最初に会ったのが……」
 真っ赤になったり、エルと初めて会った時女性に看病されたいとか騒ぎまくっていたのを思い出し笑ったりしていた。
「ま、ともかくさ。本気で考えてみて」
 それだけ言うとカガチは遠くにある料理を食べてくると居なくなってしまった。
「本気……か」
 ちょっと考えてから皆と談笑しているエルの方を見遣った。

「ホイップ、無事か? どこか怪我はしてないか?」
 今度は呼雪がファルとユニコルノを連れてやって来た。
「心配有難う! 大丈夫だよ! メイドな牙竜さんが凄く守ってくれてたから」
「そうか。無事な顔が見られてなによりだ」
「ホイップちゃん、いっぱい食べてる? どれもこれも凄く美味しいよ!」
 ファルはヨーグルトムースを頬につけながらホイップに聞いた。
「うん、いっぱい食べてるよ」
 そう言い、ホイップは自分のハンカチでファルのほっぺについたヨーグルトを拭いた。
「えへへ、有難う」
「どういたしまして」
「こちらがドジっ子のホイップ様でございますか。はじめまして」
「ど、ドジっ子……外れてはいないかも……。うん、はじめまして」
 ユニコルノは丁寧に挨拶をしたが、ホイップの方はドジっ子にダメージを受けたようだ。

「みな、このローストビーフも食べるのじゃ」
 セシリアとレイディスはお皿に切り分けた美味しそうなローストビーフを皆に振る舞った。
「特にホイップはちゃんと美味しいもの食べておけよ」
 そう言ってレイディスがホイップにお皿を渡す。
「有難う……うん、お肉だぁ〜。ところで、このお肉って…………もしかして?」
「ミノタウロスじゃ! 美味しくて何よりじゃ。それでこそミノタウロス退治に行った甲斐があったものよ」
「まったくだ」
 2人はお肉に口を付けずに、嬉しそうにしていた。
「ほう……ミノタウロスの肉というのはなかなかいけますね。美食家のドロウさんと相談して新しい料理が出来そうです」
 タノベさんは別の事で嬉しそうにしている。
 他の皆はミノタウロスのお肉ということで一度はフォークを置いたのだが、美味しかったので、気にしない事にしたらしい。

「ご主人! またいつでもご奉仕させてもらう! 何かあればいつでも笛を吹くと良い!」
「う、うん。有難う。……そのメイド服は……ううん、よく似合ってるよ! これからも宜しくね。あの、その口調はメイド姿の時は変わらないの?」
 牙竜は一つ頷いた。
「まさか牙竜がそんな姿になっているとは驚きだったぜ。あ、ホイップ。今回でそのー、この前のチュー分くらいの働きはしたからな」
 武はホイップの背後から話しかけた。
「う、あ、うん。今日は守ってくれて有難うございました」
 ほっぺにチューの事を思い出し、ホイップはしどろもどろになりながらも、お礼を言った。
「借金を無闇に増やすんじゃねーぞ! まっ、そうなったら面倒臭ぇが返済を手伝ってやるからな。チッ……」
 気持ち、顔が赤くなっているように見えた。

「せっかく育てた桃の木がダメになって残念だったな」
「ホイップさん、落ち込んでません? 大丈夫ですか?」
「そうだよ! 大丈夫!?」
 ベアとソア、歩が心配して声を掛けてくれた。
「うん、大丈夫だよ! 心配かけてごめんね?」
「大丈夫なら良いんだよ」
 4人は軽く笑い合う。

「ホイップちゃん」
 ホイップがまたも1人になるのを見計らって近付いた者が居た。
「エルさん!」
 何度かタイミングを見計らっていたのだが、なかなか人が途切れなかったのだ。
「その、前回のほっぺチューは羨ましかったなぁ。ボクにも! 今日ボクたぶん頑張ってたよ?」
「へっ!? えー!?」
 ホイップは驚き、声を上げてしまったが周りには気がつかれていない。
 そう大きな声ではなく、また、皆の笑い声があったからだ。
 少し考える。
 エルの表情がいつもより真剣に見えたからだ。
 さきほどのカガチの言葉があったせいかもしれないが。
「えっと……じゃあ目瞑って」
「うん!」
 わくわくしながらエルはすぐさま目を瞑った。
 何か柔らかいものがエルの頬に当たって、直ぐに離れた。
「えーっと、は、恥ずかしいよぅ!!」
 唇を手の甲で押さえながら、ホイップは走り去ってしまった。
 エルはまさか本当にもらえると思ってなかったらしくぼんやりしてしまっていた。
「ほほぅ……ご主人にそんな不埒なおねだりをするとは良い度胸じゃないか」
「ホイップに何をさせたの?」
 牙竜とアメリアがエルの背後に仁王立ちをした。
「え、や、別に何も……」
「氷術っ!」
 その言葉にアメリアは問答無用でエルを凍らせてしまった。
「ナイスな魔法だ!」
「任せて」
 エルは氷漬けのまま、パーティーは楽しく過ぎて行くのだった。


 その後、薫が頑張って集めた署名はほとんどの人が書いてくれていた為か、校長がおとがめなしとした。
 邪気寄せの桃も勿論献上した。
 邪気払いの桃より珍しいと大変喜んでいたらしい。
 で、署名をした皆とホイップとで、魔物と桃の木に荒らされた土地を修繕したのだった。
「うんうん、良い事をしたでござる。ニンニン!!」


■今回の返済■
借金
  −75,500G
報酬
桃の実
27個×1,000G
   27,000G
桃の木
 1本×5,000G
今回の合計
  −43,500G

担当マスターより

▼担当マスター

えりか

▼マスターコメント

 シナリオ参加有難うございました。

 今回は桃狩りの方がだいぶ多かったようで、さらにネタを仕込んでいるのも桃狩りの方が多かったように感じました。
 ミノタウロス戦は皆、バラバラなグループアクションや単独アクションだったにも関わらず、役割分担が出来ていて面白かったです。

 さらに、今回からホイップがNPC登録されています。
 覗いてみて下さいね。
 新しい発見があるかもです。

 さて、次は20日公開のシナリオガイドでお会いしましょう!

 シナリオガイドの情報やリアクション裏話が知りたい方は『蒼い予告編』を検索してみて下さいねぇ〜。