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【ぺいゆさんイラスト500枚突破記念】夢のぺいゆ王国

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【ぺいゆさんイラスト500枚突破記念】夢のぺいゆ王国

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第一章


「ボクのお城へようこそ!」

居並んだ来訪者を見て、ぺいゆちゃんは弾んだ声をあげました。
目の前にいるのは幾人もの可愛らしい少年たち。
物珍しそうにあたりを見回したり、怯えたように視線を彷徨わせたり、今にも遊びたそうにそわそわしていたり。
そんな少年たちに囲まれたぺいゆちゃんは、うずうずと両手をあげました。
と、ぺいゆちゃんの前に進み出たのは東條 カガチ(とうじょう・かがち)です。
「ええと、国王様、ですね?」
いつになく畏まった言葉遣いのカガチに、ぺいゆちゃんが視線を向けます。
自分より高い位置にあるカガチの顔に視線を合わせると、柔らかな眼差しと行き合いました。
いつも下してある前髪をきっちりとセットしたカガチは、なるほど端正な面持ちの甲斐あってなかなかのイケメンです。
「本日はお招きありがとうございます。俺は東條カガチ、こっちはシオンです」
「よ、よろしくおねがいします」
スキル【貴賓への対応】をフル活用して恭しく頭を下げる隣で、シオン・プロトコール(しおん・ぷろとこーる)もぺこりと頭を下げました。
「うは! 可愛いショタ来た!」
イケメンなカガチに見惚れかけたぺいゆちゃんでしたが、シオンを見るなりぎゅうっと抱きしめました。
「え、ボクおん……」
「この素敵なお城を見せていただけるという機会を頂いて光栄です。シオンともども感謝します」
「見学だけじゃなくてずっといればいいよ! 本当はショタしかダメだけど、ちみイケメンだから許す」
「だからボクおn」
「よかったなシオン」
女の子なんだよ、と口走りそうになるシオンをカガチは笑顔で止めます。
うーん? と頷いたシオンはぺいゆちゃんにされるがままになりながらも、「そうだ!」と声をあげました。
「ねぇ、ぺいゆちゃん。フリ」
「シオン、折角許可が出たんだから城を見に行こう」
「え、でもフリー」
「ぺいゆちゃん!」
シオンが言い募ろうとしたよこから、ぴょこっと飛び出してきた少年が一人。
紅護 理依(こうご・りい)でした。
身体が縮んでしまったせいで少しだぶついた服を押さえながらも、理依はぺいゆちゃんの前に進み出ます。
「あの、今日はありがとう! おかげで男に戻れたよ」
「ほわぁ、萌え袖!」
「えっ」
「この着せられてる感もヨシ!」
抱きついて頬ずりしてくるぺいゆちゃんを押し返すことも出来ずに、理依はわたわたと手をばたつかせます。
「あのっ、ぺいゆちゃん」
折角男に戻れた理依としてはもう少し年相応の身体になりたいのですが、それを言い出そうとも今のぺいゆちゃんには聞こえていないようでした。
「ちょ、いじらないで話を聞いて〜!」
せめて離して〜、と身じろぐ理依が、使用人や周りのみんなのとりなしでやっと離されると、それを待っていたかのようにぺいゆちゃんの前に何かが差し出されました。
チトニアの小さなブーケを差し出してきたその少年はすっかり姿の変わったエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)でした。
「お招きありがとう!」
にこにこと笑顔で差し出されたそれとエースを見比べながら、ぺいゆちゃんが花束を受け取ります。
「これを、ボクに?」
「うんっ! チトニアって花だよ。ぺいゆちゃんに似合うかなって」
「ありがとう!」
「わっ」
えへへっ、と笑うエースの愛らしさに思いっきり抱きしめると、苦笑する声が聞こえました。
「ぺいゆちゃん、ほどほどにしてあげてください」
「ぬ?」
声をかけられて振り返ると、そこにはいつもより背が低くなったエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)の姿が。
柔らかい笑顔で小首を傾げたエオリアも、ぺいゆちゃんから見れば垂涎もののかわいいショタでした。
思わず腕の力を緩めるとエースがその腕から逃れていきます。
それを見たエオリアは逆にぺいゆちゃんをぎゅうっと抱きしめました。
「ご挨拶のハグ、です。手土産にお菓子をお持ちしてますから、お茶にしませんか?」
「うわー! ショタからのハグ! かわいい! もえ!」
ぎゅうううっっとエオリアを抱き返すと、ぺいゆちゃんはこれ以上ないほどに破顔しました。
そんなぺいゆちゃんを宥めながらハーブティーを淹れるためにその場を辞すると、入れ替わりに神和住 瞬(かみわずみ・またたき)が歩み寄ってきました。
「ぺいゆちゃん、ですね?」
静かに呼びかけると、ぺいゆちゃんが振り返ります。
そして隣に立っている嘉神 春(かこう・はる)と瞬を交互に見て目を輝かせました。
「ぺいゆちゃん! お城すごいね〜、これだけ広いと大変でしょ? ボク今日おてつだいするからね!」
「僕も少年が好きなんですよ、お嫌でなければ傍についていてもいいですか?」
「もっちろん! ショタが身の回りのお世話をしてくれるなら大歓迎ですよー。お供もイケメンなら許してあげなくもないです」
「ありがとうございます」
にっこりと微笑する瞬に、ぺいゆちゃんはうっかりふらりと靡きかけてしまいます。
けれど春に手を引かれて、すぐに気を取り直しました。
「じゃあさっそく行こ! あっちでお茶淹れて待っててくれてるって言ってたよ!」
「お菓子も用意してくださってるようですよ」
「よーし、ぺいゆちゃんのお通りだー! 道をあけーい!」
歌うように高らかに言いながら手を引くショタっ子の可愛さに、ぺいゆちゃんが黙っているわけがありません。
はぐはぐっ、と春を抱きしめました。
ああ、これが萌えというやつでしょうか。天国。
「はふー、ショタは正義……」
「ふぇ? だめだった? ちょっと言ってみたかったんだよね」
へへ、と笑う春の可愛らしさにくすりと笑みをこぼした瞬は、二人の背を軽く押して先を促しました。
「駄目ではないけど、春、あまりお城で騒いではみんなびっくりするよ」
「そっか、ごめんね」
「さぁ、ぺいゆちゃん。向こうにも可愛らしい少年たちが待っているようですよ」
「む、そうでしたですよー。早く行かなくては」
「ちょーっと待った!」
そんなぺいゆちゃんを呼び止めたのはフィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)でした。
横には藍澤 黎(あいざわ・れい)あい じゃわ(あい・じゃわ)もいます。
「あー……パートナーがいつも世話になっていて」
「世話になんぞなっとらんわ! てかショタショタいうけどやな、ちゃんとショタの良さをわかっとんのか? ショタの何がええかこの際はっきりさせときたいんや!」
「フィルラ、あいさつがまだですー」
「それよりショタ論議の方が先や!」
「親しき仲にも礼儀ありだと思うですー」
「だぁっ、もう!」
「何なのですか……?」
「ああ……すまない。ええとだな」
突然の来訪者の意図がまったく伝わらず、ぺいゆちゃんが首を傾げると、黎が小さくなった体に見合わない大人びた口調で説明を始めました。
無理矢理姿を変えられて戸惑う者も多くいることと、何か不穏なものが混じっている気配がすることを簡潔に告げると、けれど、と言葉を転じます。
「こうしてぺいゆ殿の城に招かれて歓談できるのもまたとない機会。楽しんでいる者がいることも事実」
「そうですー。ぺいゆちゃんはやさしい『いい人』なのですよー。のぞまないのにショタ化させたりすることはないとおもうですー」
「いや、現に黎がショタになっとるやないか」
「むー」
そうなのです。フィルラントの言葉通り黎も今はいつもとは違う姿でした。
いつもより低くなった頭身と、涼やかでありつつもきゅるんと柔らかさの増した青い瞳。
銀の髪はさらさら、というよりふわりと風を含んだような軽さを持って靡いています。
けれど黎はいや、とゆるく首を振りました。
「我がこのような姿になるのは条件的に致し方ない、というか理解できる話ではある。しかしずっとこのままというわけにもいくまい」
「それくらいボクもわかってるですよ。ちゃんとあとで戻すつもりです」
「我々も野暮を言うつもりはない。だから此処にいるパートナーもお付けして我々でぺいゆ殿に楽しんで頂けるような環境をご用意しようではないか」
「はぁ!? 何言うとんねん!」
「そのかわり、だ」
フィルラントの言葉を無視して、黎は続けます。
「先ほども言ったが不穏な気配も感じる。国王であるぺいゆ殿の身を守るためにも、ぺいゆ殿がもっている『ぺいゆクレヨン』をお借り出来ないだろうか」
「ぺいゆクレヨンを?」
「そう。それはどうやら素晴らしい効果があるようだ。それがあればぺいゆ殿の護りもより万全になる」
黎の訥々とした説得に、ぺいゆちゃんはふむぅと考え込みます。
けれど、黎が「だめだろうか?」と小首を傾げると、「首こてん来た!」と小さく叫んで頷きました。
「いいですよー。今回だけはかしてあげるです」
そんなわけで、ぺいゆクレヨンは無事に貸し出してもらえることになったのでした。
「って、クレヨンもええけどやな! 問題はぺいゆはんがショタをどう思ってるかや!」
話がひと段落つきそうになったところで、フィルラントが再び割り込んできました。
半ズボンのふとももがどうの、育ちきっていない手足がどうの、高すぎず低すぎない声がどうの、とあっという間にショタ談義に花が咲き、いつしか花畑を形成しそうなほど語り合う二人にちゃっかりと瞬も参加しながら、お茶の時間を過ごすのでした。