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【アラン漫遊記】はじめての冒険

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【アラン漫遊記】はじめての冒険

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第1幕 山登り出発進行!


 春うらら。
 そんな言葉がまさにぴったりなお天気の日、ある山のふもとの入口ではアラン・バンチェスター(あらん・ばんちぇすたー)セバスチャン・コーラル(せばすちゃん・こーらる)の下に続々と人が集まってきていた。
 そう、セバスチャンがアランのわがままを叶えるために声をかけた人たちだ。
 アランはその様子を両手を腰に当てながら満足げに見ていた。
 アランの後ろではセバスチャンが来てくれた人のチェックをしているのだった。


「アランさん、覚えていますか? この間、お話をしに行った者なのですが……」
 そう話しかけてきたのは封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)
 その後ろには樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の姿もある。
「おお! そちか。うむ、覚えておるぞ! 『らぶらぶなりあじゅう』と言うのだろう? そなたらが帰ってから調べた!」
 アランのそんな言葉を聞くと、白花は真っ赤になってしまった。
「間違ってはいませんが……面と向かって言われるとなんだか恥ずかしいものですね。って、そうではなく。これアランさんに」
 白花は『アイシャのコイン』をアランに手渡す。
「う? これは一体? 貢物なら間に合っておるぞ?」
「ふふ。そうですねぇ……ある意味貢物ですが、ちゃんと持っていてくださいね。アランさんを守らせて欲しいからお渡しするので」
「むむぅ……わかった。そなたの気持ち、ありがたく受け取ることにするぞ!」
「はい」
 素直に受け取ったアランを見て、白花は嬉しそうにすると刀真たちの元へ戻っていった。


「あ、いたいた〜!」
 アランに駆け寄ってきたのは遠野 歌菜(とおの・かな)だ。
 後方では走って行く歌菜を眩しそうに見つめる月崎 羽純(つきざき・はすみ)もいる。
「そなたも来てくれたのか!」
「うん! 今日は任せてね! あ、それと今日は羽純くんも連れてきたんだよ。紹介するね」
「おお! あの王子か!」
「うん、そうあの王子様♪」
 アランと歌菜が2人の会話をしていると、意味の通じない羽純は少しだけ首を傾げたが、すぐに合点がいったらしい。
「歌菜から話は聞いている。月崎 羽純だ」
「余はアラン・バンチェスターだ! 今日はよろしく頼む!」
「ああ」
 簡単に挨拶を済ませると、歌菜と羽純は他にも挨拶したい人がいるだろうと少し離れたところに移動した。
 それから、羽純は道に迷わないようにと銃型HCの準備を始めたのだった。


 30分もすると、セバスチャンが声をかけた人全員が揃ったとのことで出発することになった。
 とうとう宝探しに行くことが出来るとアランは胸をわくわくさせながら、入口を見つめる。
 他の者たちもアランをまねるように山の入口の奥を見つめる。
 その行動にみんないつの間にか会話がなくなり、一瞬の静寂が訪れた。
 すると、山の奥から動物なのか例の植物モンスターたちなのかよくわからない鳴き声が聞こえてきた。
「ぐるるるる……」
「ぎゃっぎゃっ……」
「くえー……つく……くえー……つく……」
 さきほどまではみんなが話していたから気が付かなかったようだ。
 アランはごくりと喉を鳴らした。
「大丈夫です。呼雪さんやヘルさんや、強い人も沢山いるから、怖がることないです。いざとなったらぼくもアランくんを守りますよ!」
 マユ・ティルエス(まゆ・てぃるえす)はアランの手をぎゅっと握って、笑顔を向けた。
 紹介された早川 呼雪(はやかわ・こゆき)ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)はアランに笑いかける。
「余は……べつに怖がってなどいないのだ! だが、その……どうしても、そなたが余と手をつなぎたいというのなら、つないでやらないでもないのだ」
 マユはにこにこと笑って頷いた。
「ボクも頑張るよ!」
 ファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)もガッツポーズをとって、アランを励まそうとしてくれている。
「アランとやら、安心するがよい。わしも隣にいてやろう」
 ユーラ・ツェイス(ゆーら・つぇいす)が腕組みをしながら、アランの前で仁王立ちになった。
「それじゃあ、みんなで一緒にアニソンでも歌いながら行こうか」
 紅坂 栄斗(こうさか・えいと)は持ってきていた携帯音楽プレイヤーをスピーカーモードにして、音楽を流し始めた。
 曲が流れ始めると、ちみっこたちは目を輝かせて歌いだす。
 どうやら、最近はやりの戦隊ヒーローものらしい。
 そんな様子に周りの大人たちはくすくすと笑ってしまう。
(あれ? もしかして、俺も小さい子扱いされてる?)
 笑い声を聞いた栄斗はひとり、そんなことを思っていた。
「よし、では『仏の御石の鉢』探して出発なのじゃーーー!!」
 勇気づけられたアランが、山の入口をびしっと指さすと、それを合図にみんな山へと入っていったのだった。