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占い師の野望

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占い師の野望

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一章 占い師と占い師

 フードを外し、振り返った占い師は、
「あやつを捕まえよ!」
 と言うと青みがかった白髪をなびかせ、後ろのドアへと歩いて行った。
「おい! 偽占い師! 待ちやがれ!」
 アッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)は、後ろの部屋に移動する占い師を追いかけようとするも、別の部屋から現れた占い師と同じ赤いフード付きコートを着た人達に阻まれてしまった。

「ゆうた通りどっしゃろ」
 後ろの部屋に移動した占い師に高崎 トメ(たかさき・とめ)が声を掛けた。
「ヌシの言った通りであった。礼を言う」
 占い師はお礼を言いながら、更に廊下に続く扉に手をかけようとした。
「あんさんには、これからも大きぃ災難が降ってかかる相がでてる」
 トメは急ぐ占い師に更に声を掛けた。
「それを避けるための方法を持って来ました。人々を災難から救ってきたし、これからも生き延びれば救う事が出来る筈のあんさんを失うのは、世界の損失!」
 トメは更にまくし立てると、後に控えていた高崎 朋美(たかさき・ともみ)が大事そうに石の壺を持って占い師の方まで近づいた。
「で、これです。 災難厄除け開運間違いなしの、御利益のあるツボどす。 あんさんの噂を聞き、あんさんの霊の波長に合うたンを、誂え慎重に選んで持ってきました」
 占い師は石の壺を怪しげに見た。
「たったの100億G。悪いこと言わん、買いなはれ。それであんさん、明日からもハッピーらいふ」
「ヌシには助けられたが……その壺、怪しいもんだのう……まあ良い、金が欲しいのなら金庫室から幾つか持って行くが良いぞ。」
 そう言うと、占い師は廊下に続くドアを開け出て行った。
「おおきに」
 トメは占い師の行った方向に頭を下げた。
「人を呪わば穴二つ……と。偽占い師さんには、偽占い師で対抗だよね! ……って言っても怪しまれていたみたいよね」
 石の壺……改め、ガラクタの壺を近くのテーブルに置いた朋美は、トメに声を掛けた。
「……そうどすな。」
「まあ、このまま占い師が逃げ切れば、また近づいて今度こそ懲らしめる事もできるかもしれないわ。おばあちゃん、その為の資金として今回はお金を頂いておこうよ」
 やや渋い顔をするトメを引っ張りながら朋美は金庫室に向かった。

二章 占い師の協力者との対決

 天貴 彩羽(あまむち・あやは)は襲い掛かる敵を魔導銃サンダーボルトで撃退していた。
「ここら辺は大丈夫かな。後は……敵が1、2、3……まだいっぱい居るわね」
彩羽がディメンションサイトと行動予測を使い、大広間に居る人の動きを把握した。
「次は、ここを対処しましょう」
 そういうと彩羽は目を開き、ある一点を見つけてポイントシフトでの移動を行った。

 彩羽の向くはずの方向では、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)がソード・オブ・リリアを突きの構えで持ち、シーリングランスで赤いフード付きコートを着た人達の武器を狙った。丸腰となったところをエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)がディテクトエビルで多方面からの攻撃を警戒しながらサンダーブラストで敵を痺れさせ気絶させた。
「アッシュ君には困ったものだな、これじゃあ関係者が全員捕まえられなくてまた、同じような事件が起こってしまうじゃないか」
「それよりも今は、後ろにいる一般人の救助が優先でしょ?」
 エースは後ろを見た。後ろでは、突然の乱闘で怯え縮こまっている一般人が十数人居た。
「そうなんだが、あの奥で指揮している奴のせいか妙に連携が取れていて中々、敵が減らんな」
 エースが向いた方向には、他の敵とは違い赤い刀身の直刀を抜き身で腰にぶら下げ、赤いフードを被って顔はあまり見えないがニタニタと笑いながら指示を飛ばす人物が目に入った。
「敵の指揮官かな? どうにかしないと一般人の救助もろくに出来ないよ」
「一般人は、私に任せて敵にだけ集中して……終わるまで眠りなさい」
 エース達の後ろにポイントシフトで移動してきた彩羽が現れ声を掛け、ヒプノシスで一般人を眠らせて担ぎ上げながら近くに居る敵をグラビティコントロールで動きを封じ、片手で構えた銃で気絶させた。
「よーし、行って! エレス!」
 リリアは野性の蹂躙でワイルドペガサスを動かし、同時に走り出し再度、シーリングランスを行い、敵を蹂躙していった。

「危ない! お嬢さん!」
 彩羽が一般人を安全な場所に移動させていると怯えていた人達が突如、彩羽に襲い掛かってきた。
「きゃぁっ!」
 エースの声で一般人を庇いながら何とか攻撃を避ける事に彩羽は成功した。
「くそっ! お嬢さんが危ない!」
「あたし達にまかせなさい!」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が跳ねる様に移動しながら彩羽に襲い掛かる一般人を構えている銃で狙い、その身を蝕む妄執で幻覚を見せ怯ませた。
「セレン、あんまりはしゃぎすぎて無関係な人まで攻撃しないようにね」
 後ろから付いてきたセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、幻覚で怯んだ者に天のいかずちで発生させた最小限の威力の稲妻で気絶させていった。

「後は、あの薄気味悪い男だけだな」
 エースは遠くに居る赤刀の男を一瞥し、後ろに居る三人に歩み寄り、
「素敵なお嬢さん方、お花をどうぞ、俺はエース・グランツと申します」
 エースは、にっこりとした顔で何処から取り出したのか、薔薇を一輪ずつ渡していた。
「はぁ、エースの悪い癖が出たわね」
「けっ! 戦場で女を口説くとは、面白い奴だな」
 リリアが呆れていると、前で笑っていた赤刀の男が声を掛けてきた。
「まだ戦うの? ちょっとしびれるわよ?」
 彩羽が銃を赤刀の男に向けた。
「けっ! 親分からは何やっても良いって言われたから皆殺しにでもしてやろうと思ったが、興がそれた今回は見逃してやるよ、今度会った時は全員殺してやるからな!」
 赤刀の男は、笑いながら姿を消した。
「ふー、アイツ強そうだから帰ってくれて助かったな。お嬢さん方はこれからどうする? 俺達は、ここに残って占い師の協力者達を見張っておくが」
「私は、一般人の救助をしましょう」
 エースの質問に彩羽がお答え、横に居たセレンフィリティが勢いよく、
「あたしは、さっき廊下に向かった人達と一緒に占い師を追いかけるよ!」
「勢い余ってどじしないでよ?」
 走って行き、セレアナが呆れながら追いかけていった。