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リアクション
”おっぱいセンサー騒動”に駆けつけたのはヴィサニシア・アルバイン、杜守柚、杜守三月だ。
「雅羅ちゃん! 雅羅ちゃんがいたですぅ〜」
ヴィサニシアは移動する雅羅の蝋人形を必死で追いかけている。
夢悠もヴィサニシアに続く。
夢悠にゲブーが並走している。
「俺様に勝てるかな?」
「雅羅さんには指一本ふれさせないっ!!」
「言ったなてめえ。いいぜ、勝負だ!」
三月のスキル『殺気看破』が周囲に高まる殺気を感じた。
「気をつけろ! 蝋人形たちが襲ってくるぞ!」
三月が大きな声で叫ぶ。
「ぱいに襲われるのは本望だぜ! さぁ来い俺様の嫁!」
蝋人形たちは右へ左へ移動しながら、”人間たち”に体当たりをしてくる。
セレアナ・ミアキスは襲ってくる『蝋人形(になった人たち)』を峰うちして回る。
セレアナが進む先に見えているのは……ビキニ姿でポージングを決めた恋人だ。
見事なポージングのセレンフィリティの蝋人形はまるで……
「水着姿を見せつけて回って喜んでるみたいじゃない! セレン! 本当に手のかかる娘なんだから!」
雅羅の蝋人形は追いかける三人から逃れるように移動する。
「待って、雅羅さん」
「逃すか! 俺様の嫁!」
「雅羅ちゃん、今いくですぅ!」
ヴィサニシアがスピードを上げ、ゲブーと夢悠を追い越し、雅羅の服に手が届きそうなとき、
行く手を蝋人形になったアルセーネが塞ぎ、三人を襲ってきた。
「アルセーネちゃんがいたですぅ!!」
「てめえも俺様の嫁になりにきたのか? アルセーネ」
「だめー! アルセーネさんにもさわっちゃだめー!」
”アルセーネがいた”という三人の叫びに杜守柚と杜守三月が駆けつける。
「アルセーネさんは僕たちに任せて! 君たちは雅羅さんを!」
三月が叫んだのだが、雅羅とアルセーネの蝋人形は入れ替わり立ち代わり五人を翻弄する。
「本人たちに使いたくなかったが……柚! あとで『回復』をかけてくれ!」
三月が『しびれ粉』を襲ってくる雅羅とアルセーネに振り掛ける。二人の動きが鈍くなった。
「三月ちゃん、アルセーネさんを押さえましょう」
柚と三月がアルセーネに、ヴィサニシアとゲブーと夢悠が雅羅に近づこうとした。その時。
彼らの前に現れたのは右手にブリーフ、左手に女性用下着を持って襲ってくる国頭武尊の蝋人形と
腰にバスタオル、薔薇学マントを羽織った変熊仮面の蝋人形だ。
柚とヴィサニシアが悲鳴をあげる。
「きゃあああ、こっちこないで!」
「いやあああああああ」
国頭武尊(の蝋人形)は両手の下着をひらひらさせながら、まるで柚とヴィサニシアに見せつけにくるかのような動きをしている。
「ブリーフなんて持ってこないで! パンティーもいやぁ!」
柚が思わず武尊を突き飛ばす。突き飛ばされた武尊がまた柚を標的にやってきたかと思うと、ヴィサニシアに向き直り突進してくる。
「どっちの下着もいやですぅぅぅ」
三月が柚とヴィサニシアを迫りくる国頭武尊(の蝋人形)からかばう。
「下着野郎は僕がどうにかしないといけない……んだね」
「なんだてめえら! なんてぇ格好してやがんだ、風呂上りかてめえは! 男には手加減しねえぜ!」
ゲブーが襲ってくる変熊仮面に立ち向かう。
「おい、てめえ! てめえも手伝え! 嫁を護りたければなっ」
ゲブーが夢悠に指示する。
「わかった! さぁ来い、風呂上りマント野郎!!」
ゲブーと夢悠に向かって襲い掛かってくる変熊仮面(の蝋人形)は二人の目の前で2体になった。
「え、分身した?」
「おいおい、てめえ、ほんとは人間なんじゃないだろうな。忍者かよ」
「違う! そいつは忍者じゃない。最初から二体あったんだ。忍者の俺が言うんだから確かだ。」
紫月唯斗は特別室に向かったロベルトを追ってきて、この騒動に巻き込まれていた。
「ついでに言うとロベルトも二人いる! 一人はこの部屋に。もう一人は工房で面接してるやつだ。」
唯斗が指さした先には不敵な笑みを浮かべるロベルトの姿があった。
ゲブー、夢悠、唯斗に2体の変熊仮面が襲ってくる。
唯斗が一体に手刀を喰らわせる。ゲブーと夢悠がもう一体を抑え込もうとしたが――
「しまった!」
夢悠が叫んだ。夢悠の手から粉が二体の変熊仮面にふりそそぐ。
「ん? なんだ貴様。っていうよりどうなってるんだこの状況は」
唯斗が組み敷いていた方の変熊仮面が普通の人間の動きをした。
「……助けに来たんですよ。こっちは人間だったのか。怪我はないか? 痛い所はないか?」
「俺様の完璧なる肉体にはいかなる攻撃も無効なのだよ。心配は無用だ」
「さっきの粉はなにかな?」
唯斗が夢悠に尋ねる。
「『石化解除薬』です。雅羅さんにかけてみようと用意していたんだけど……」
動きの鈍った雅羅にふりかけてみようと握ったままになっていたのだ。
「ふむ。石化解除だな。ふふふふ……」
変熊仮面は立ち上がり、セレアナ・ミアキスを襲うセレンフィリティ・シャーレットの蝋人形に走り寄って抱き着いた。
「はぁはぁ…美しい!」
「い…いやぁあああああああああああ!」
「セレン!」
「は〜な〜れ〜ろっ!」
セレンフィリティは思いっきり変熊仮面を蹴り飛ばした。
変熊仮面が蹴り飛ばされた反動でゲブー、夢悠、唯斗のところに帰ってきて仁王立ちして言う。
「俺様のスキル『石を肉に』。これを使えば蝋人形になった女たちを元に戻せるのがよくわかったであろう」
――嫌な予感がする。
「要するにかたっぱしから俺様が抱き着いてゆけばよいということなのだよ!
では貴様らの願い通りに雅羅・サンダース三世を人間に戻してやろうか」
ゲブー、夢悠が叫ぶ。
「てめえが抱き着くのは許さねぇ! ぱいを揉んでいいのは俺様だけだ!」
「だめー! 雅羅さんだけはだめ! 他の女の子もだめー!」
「……蝋人形な分、下着くんの方がましだったな、柚」
三月は柚と一緒になんとかアルセーネを取り押さえ、運び出そうとしていた。
「美術館の外に運べばなんとかなるかもしれないですし」
特別展示室の外に出ようとしたが出られない。
「三月ちゃん?」
動けない三月に柚が問いかける。
「引っ張ってるんだけど……」
三月の隣にやってきたのは夏侯 惇(かこう・とん)だ。
「この部屋もそうなのだな。『動ける人間』は自由に出入りできるが『蝋人形になった人間』を外に連れ出せんようになっておるのだ」
カル・カルカー(かる・かるかー)が補足して言う。
「さっきの部屋。一般展示室で僕たちも『蝋人形になっている人たち』を外に運び出そうとしたんだ。でも運び出せない」
夏侯惇が続ける。
「しかし、安心めされよ。蝋人形はすべて蝋に戻してやったわ! 残ったのは『人間』だけになっておるという寸法よ! カル坊!」
カルが『火術』を使い、夏侯惇が『爆炎波』を天井の四隅に向かって放つ。
「やれやれ。あなた方が火傷させた人達の治療をするのは、はてさて誰の仕事になると思ってるんです? ま、さっきの部屋で実践済みだけどね」
ジョン・オーク(じょん・おーく)がカル・カルカーを迫る蝋人形たちから守る。
「目的の為には、多少の犠牲者はつきもの? ……にしても、一寸手荒い気もしますがね、カル?」
「ふむ、面妖なからくりを悪魔とやらは作るものだな、罪つくりにも。人間の形をしたものが、人間でないとは不遜の極みではないか ロベルトとやら」
夏侯惇はロベルトの前にたどり着いていた。
紫月唯斗が夏侯惇に加勢する。
「ロベルト、お前が二人いることはわかっている」
「ほう、二人の悪魔の仕業とは。まずはこちらの悪魔をば」
夏侯惇はバトルアックスの柄でロベルトに一撃を喰らわせた。ロベルトの体は大きく後ろに突き飛ばされたが『見えない壁』を蹴って二人を飛び越した。
『見えない壁』を蹴った瞬間、床に線と文字のようなものが光った。
着地しようとしたロベルトにジョン・オークが『バニッシュ』をかける。ロベルトが床に倒れこむ。
夏侯惇がロベルトのところにやってきてカル・カルカーとジョン・オークに言う。
「もう一度試させてもらえるかな?」
夏侯惇が特別室入口通路にロベルトを放り投げる。ロベルトは『見えない壁』に当たって床に落ちた。
床に魔法陣が浮かび上がる。
「こやつ、蝋人形なのではあるまいか? カル坊!」
カルはロベルトの片手に『火術』を軽くかけた。ロベルトの手が溶けた。
「ますますもって面妖なやつ」
「ロベルト、術を解け。蝋人形になっている人々を元に戻してくれればこれ以上溶かしはしない」
カルがロベルトに言った。
「わたしは溶かされても大丈夫ですよ」
「大丈夫ってどういうことだ?」
「蝋人形がなくなってもかまわないということです」
「術はどうやって解くのだ?!」
夏侯惇がロベルトに詰め寄る。
「蝋人形になっている人たちは……もうすぐ元に戻りますよ」
「どういうことだ? おまえが術を解くということなのか?」
「――さっきの部屋でわかったでしょう? すべての蝋人形を溶かしてしまえば、『蝋人形になった人たち』が襲ってくることもなくなる」
「おまえが溶けてしまっても……『人』は無事なんだろうな?」
「保証しますよ」
「きちんと動けるようになるのだろうな?」
「――ええ。もう工房で本体がね」