百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

仲直りしたいの

リアクション公開中!

仲直りしたいの

リアクション


第一章 いざ、勝負です!
「け、喧嘩なんて良くないですよ! 仲直りして皆で楽しく遊び……」
「よく分かんないけど、桐条さんが勝ったら美味しいクレープ奢ってくれるって言うから、頑張るよん♪」
「何時ぞやの名も知らぬ山の主か…。丁度良い、わしをからかってくれた礼をするとしよう」
「…って、マーガレットも隆元さんも面白がらないで下さいよぉ〜!」
 一色触発、な空気を何とかしようとしたリース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)は、遮るパートナー達の言葉と態度にガックリと肩を落とした。
 売り言葉に買い言葉、でケンカに発展してしまった雪の女王冬将軍市倉奈夏エンジュ
 険しい顔の彼らの姿に、胸を痛めるリースは、出来れば喧嘩を止めたい、と思ったのだが。
 リースのパートナーであるマーガレット・アップルリング(まーがれっと・あっぷるりんぐ)桐条 隆元(きりじょう・たかもと)は戦る気満々だった。
「そんな、仲良しさん同士でケンカなんて、哀しいです」
「だがな小娘、本音を出してぶつかり合うのも時には必要なのではないか」
「隆元さん……?」
「その意見にわたくしも賛成だわ」
 と、声を挟んできたのは、ジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)だった。
「随分と妙な事になったけど、まぁ」
 ジェニファは口の端を微かに上げ、続けた。
「レクリエーションだと思えば、遊んでいるうちにどうでも良くなるんじゃないのかな……雨降って地固まる、と言うしね」
「姉さん、雪山で雨に降られたら目も当てられないと思うよ……」
 問うたマーク・モルガン(まーく・もるがん)は頭をくしゃ、と撫でられこてん、と首を傾げた。
 が、ジェニファからそれ以上の説明は無かった。
「さて、どちらのチームに入った方が、拮抗するかしら」
 青い瞳に思慮深い光を浮かべ、ジェニファは呟いた。

 『青』(雪の女王)チーム
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
及川 翠(おいかわ・みどり)
ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)
徳永 瑠璃(とくなが・るり)
ティナ・ファインタック(てぃな・ふぁいんたっく)
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)
遠野 歌菜(とおの・かな)
・エンジュ

           VS

 『赤』(冬将軍)チーム
・ジェニファ・モルガン
・マーク・モルガン
・リース・エンデルフィア
・マーガレット・アップルリング
・桐条 隆元
高瀬原 梢(たかせはら・こずえ)
布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)
エレノア・グランクルス(えれのあ・ぐらんくるす)
月崎 羽純(つきざき・はすみ)
・市倉 奈夏


「これくらいでいいかな?」
 チーム分けが済み、各チームが作戦会議をする中、中立である子供達を中心にフィールドの準備が進められていた。
 と言っても、旗を立てるくらいなのだが。
「いいんじゃない?」
「高さは揃えた方が良いですよね」
「そうね、公平にしないと。後でそれが原因でまたケンカ、なんてならないようにね」
「あまり固めない方が良いと思いますけど、ある程度は固定させないと、ですよね」
「皆、高い所は無理しないで俺達に任せるんだぞ」
「雪に足を取られて転ばないようにね」
「ほら、慌てなくても良い。……いい具合だな」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)樹月 刀真(きづき・とうま)、そして蓮見 朱里(はすみ・しゅり)アイン・ブラウ(あいん・ぶらう)達もかりだされ。
「ちなみにルルナ、『喧嘩両成敗』というのは『勝負に負けた方が謝る』のではなく『両方とも謝ってこれ以上の恨み事はなしにする』という意味だ。覚えておくように」
「はい!」
「ふふっいい返事ね」
 アイン先生にハッキリ答えたルルナに、朱里が笑みを零し。
 程なくして準備は整い、後はゲーム開始を待つだけとなった。
「じゃあ、打ち合わせ通りに。頑張りましょうね」
「ゆ、雪の女王さんと冬将軍さんの喧嘩を止める為にも早く勝負を終わらせなくちゃ!」
「うんうん、頑張ろうね♪」
 赤チームでは皆の顔を見回すジェニファに、リースとマーガレットが頷き。
「あぁほら奈夏さん、顔が強張ってるよ! リラックスリラックスだよ!」
「そうね、折角だから楽しんでいきましょ♪」
「……うっうん、頑張る!」
『うむ、元気が一番じゃな! そして、勝つ!』
 梢や佳奈子に励まされる奈夏に、冬将軍が満足げに笑みつつグッと拳を握り固め。
 一方の青チームでは。
「そんなシケた顔してたら、勝てる戦いも勝てなくなるであります!」
「……はい、です!」
(「奈夏のアレって、嫉妬よね」)
(「エンジュさん変わってきたから、不安なんだと思うけどね」)
 吹雪と「エイエイオー!」と声を上げるエンジュに、ティナとミリアは囁き合う。
 チラチラとこっちを窺う奈夏の視線に気づいて。
「む〜、どうして奈夏さんとエンジュさんよくわかんない喧嘩しちゃうのかなぁ…喧嘩は両成敗、なの。…でもでも、ゲームは面白そうだから一生懸命頑張るの!」
「け、喧嘩はダメです!…と言ってる間に何だか色々決まってる!? うぅ、気は進まないけど一応頑張ります…」
 気づかない翠や瑠璃はそれぞれ、奈夏達を気遣いつつ意識を切り替え。
「友達であれ恋人同士であれ、ケンカする時はどうしてもするわ。この際納得するまでやった方が後を引かないので、むしろやり合っちゃいなさいな」
「……ケンカはいいけど、そこから互いの関係を見つめ直すことも必要よ?」
 やはり奈夏の視線に気付いたセレンフィリティとセレアナは、やる気は十分なもののやはりどこか所在なさげなエンジュに一声かけてから、傲然と胸を張った。
「ふふふっ、まぁこのあたしが参戦したからには優勝は決まったようなものね!」
「あら油断は禁物よ」
『ふふ、頼もしい事じゃ』
 言い放つセレンフィリティに、雪の女王もまた笑みを零し。
 そんな和やかながら高まって行く戦意。
『絶対に負けぬ!』
『それはこっちのセリフだ!』
「……そのフラッグ、いただきますから」
「はいどーぞ、なんて渡さないんだからね!!」
 それが臨界点を突破する前、ゲームは始まったのであった。