空京

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創世の絆第二部 最終回

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創世の絆第二部 最終回
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アラムという少年

「無事ゾディアック・ゼロは止まったみたいだけど……アラム君は……?」
回復の歌や、勇気の歌で支援活動を行っていたあゆみは、レントのスクリーンに映し出されたアラムのストークを心配げに見つめながら呟いた。
「なんだか嫌な予感がする……様子を見に行きましょう」
メメント モリー(めめんと・もりー)が頷く。
「行くよヒナちゃん!」
スーパー鳥人型ギフトとともにイコンから飛び出して、アラムのストークに向かって駆ける。
アラム機のコクピットは開いてすらいなかった。
「アラム君! 聞こえる? 無事なの? ねえ、返事をして?」
あゆみが声をかけるが、返事はなく、キャノピーにも何の反応もない。
「ヒナちゃんっ!」
モリーの呼びかけに呼応して、ふくいくたるカレーうどんの匂いを漂わせて、スーパー鳥人型ギフトが槍に形を変えた。モリーはコックピットへの入り口を槍でこじ開けた。全ての機器が停止したコクピットは薄暗い表にもまして闇が淀んでいるように暗かった。そこにアラムの姿はない。
「アラムくんっ?!」
あゆみとモリーが同時に叫ぶ。淀んだ闇の中から微かに声がする。その中から漂うように現れたのは、幽霊かと見まごうほど透明に、希薄になったアラムの姿だった。あゆみとモリーが息を呑む。なかなか戻ってこない二人を気にして、他の契約者たちも駆けつけてきたが、みな一様にアラムの姿を見て立ちすくむ。
「……いったい、これは」
ホリイ・パワーズがやっとのことで言葉を搾り出す。風の吐息のような、微かな声でアラムが語りだした。
「……前に、僕がニビルやシャクティたちに感知されにくい存在だって言う話はしたよね。
 そのために僕は存在するための要素……生命エネルギーみたいなものとでも言えばいいかな。
 もともとそれががとても少なかった。
 そしてこのイコンに積み込んだギフトは、僕の存在エネルギーを消費して、ゼロを暴走させる機能を持っていた。
 そう、この作戦で僕の存在は消滅するはずだったんだ。」
アラムはいったんここで言葉を切った。彼を取り囲む契約者たちはあまりの衝撃に言葉も出せず、ただただ立ち尽くしていた。
「でも、完全には消えなかった。僕を強く気にかけてくれていた人たちがいたから……少しだけ残れたみたいだね」
「そんな……消えたりしちゃダメだよ……」
あゆみが目に涙をためて言う。モリーが叫ぶ。
「しっかりしてアラムくん! きっと……君が生まれてきたのは、きっとボク達と出会う為でもあるんだよ!」
集まった契約者たちがつぎつぎと同意を叫んだ。みなの熱いどよめきに包まれたアラムは幽霊のような顔に、微かに笑みを浮かべた。

 かくして王宮前に立ちふさがっていたルークは斃れ、インテグラル・クイーンは無事救出された。ゾディアック・ゼロもまたアラムの、文字通り存在をかけた秘策によりその機能を停止し、探索者たちを待つばかりとなっている。