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リアクション
【2】残るはお前だグラヒトリ! 1
機動要塞も落とされ、味方艦隊の攻撃はそのまま敵イコンに注がれている。
最早グラヒトリの護衛もままならぬ状況になっていた。
『……クックックッ、ハッハ、クハハハハハッ!!
やはり、木偶。雑兵如きはグラヒトリの一部こそが似合いだ!!
もうよい貴様等。適当に傷ついてこい、これは命令だ』
その声はどこまでも冷たかった。
エレクトロンボルトは、本気だ。
自分一人でこの局面を打開するため、味方であるはずのイコンにやられに行けと命じていた。
「エレクトロンボルト! ここまで戦ってきた味方になんてこと言うんだ!」
星心合体ベアド・ハーティオン内からコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)がエレクトロンボルトへ叫ぶ。
あまりの冷徹さに、正義の心がそう叫べとハーティオンを突き動かしていた。
『駒をどう扱おうが、キングの勝手だろう』
「民を思うのが、王の在り方だろうに!」
ハーティオンが尚も熱く咆える。
と、そこへ自称天才科学者の笑い声が聞こえてくる。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」
「同じく聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)!」
「そこのやたらでかいイコンよ! この俺の許可も取らず空京に攻め入るとは許さんぞ!」
エレクトロンボルトの侵攻をよしとはしないドクターハデス。
ベアド・ハーティオンの隣に立ち並び、グラヒトリの眼前に立ち塞がる。
『……どけ、貴様等のおふざけに付き合っている暇はない』
「おふざけではない。それを証明してやる!
行くぞカリバーン! ヤツに痛い目を見せてやるぞ!」
「了解した、ドクターハデス! 神剣合体!」
神剣勇者エクス・カリバーンに搭乗した二人はグラヒトリへと飛翔する。
「私達も続くぞ!」
「了解シタ」
星怪球 バグベアード(せいかいきゅう・ばぐべあーど)とハーティオンもエクス・カリバーンに続く。
『貴様等程度にこの装甲は貫けん!』
「それは……!」
「どうかな!」
「「神剣両断!カリバーンストラアァッシュ!」」
エクス・カリバーンとベアド・ハーティオンの極みに達した剣技が残骸を斬り飛ばす。
その様はまるで、ベアド・ハーティオンがエクス・カリバーンを振るっているようにも見えた。
しかしそれでも、まだ足りない。
シュゴォォォン!
『ぐおっ……! 貴様、先ほどの!』
「わりぃな。ちぃと不完全燃焼だったもんで、一発ぶち込ませてもらったぜ」
ここで昌毅が駆るフラフナグズから荷電粒子砲が撃ちこまれる。
この連携により、グラヒトリが纏っていた残骸の半分程度が取り払われた。
『くそ、すぐに残骸を集めなくては……!』
この隙を見たカリバーンがハーティオンに叫ぶ。
「我らの勇気がある限り、貴様などに操られはしないっ! ハーティオンよ、共に行くぞっ!」
エクス・カリバーンは剣状態({ICN0004107#神剣エクス・カリバーン})へと変形する。
「ああ。人々の心が未来を作るため、私達はその礎となる!」
集まる残骸とグラヒトリの間へエクス・カリバーンとベアド・ハーティオンが割って入る。
そして残骸を受け止めた。
「ククク、イコンの残骸と合体するなら、無理矢理押さえるまで!」
「皆、この隙にグラヒトリへ攻撃を!」
『ええい虫ケラそこをどけぇ!!』
グラヒトリが更に残骸を集め、二機を押しつぶそうとする。
追撃にエレクトロンブレードで斬りつける。そう長くは持たない。
「相変わらず、大胆なことをやるわね」
「私達も大概だけれど」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が静かに動き出す。
彼女たちは今、グラヒトリのすぐ側まで来ていた。
より集められると予測した残骸を見つけ待機。
案の定グラヒトリは残骸を集め始め、セレンたちを自分の懐へと呼び寄せてしまった。
「それじゃよろしくねっ」
「ええ。あんまり無茶しないでよ?」
「そんなの、今更!」
セレンとセレアナが駆ける。
その動きにようやくエレクトロンボルトが気付いた。
「な、生身だと!? 自殺志願者にも程があるっ、考えられん!」
「『壊し屋セレン』を懐に入れたアンタの方が自殺志願者よ!」
セレンがコクピットに向けて自らが染まった闇の力を敵に流しこみ、破滅をもたらす攻撃をぶち込む。
だが破壊することは敵わない。
「ふ、ふん。結局貴様等は一発屋よ」
「言ったでしょ、壊し屋よ。ただね壊し屋には相棒がいんのよ、それも極上のね!」
「なにを――」
ゴウゥンッ!!
「……何っ!? グラヒトリの電力回路に異常だと!?
くそ、とにかくこいつらを引き離さねば!」
セレンの次の攻撃を受ける前にグラヒトリが全てのパーツをパージする。
「セレン、落ちるわよ」
帰ってきたセレアナがセレンを抱きかかえる。
落ちる残骸を器用に飛び跳ねて下へと向かう。
「で、何したの?」
「さっきもらった動力部分と繋がっていそうな回路系列に一撃、見舞ってやっただけよ」
「そう。本人をぶん殴れなかったのは残念だけど、少しくらいは役に立てたかしらね」
そう言って二人は軽身功を使って安全に下まで降りた。