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薔薇の学舎

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波羅蜜多実業高等学校へ

のぞき部だよん。

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のぞき部だよん。

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第1章 集結 【5限授業中】

 蒼空学園のプールは、校舎と離れたところに独立している。
 屋根は全面ガラス張りで、太陽光をふんだんに取り込んでいる。プールサイドには、裏に通じる出口が一つあるが、掃除業者くらいしか使わない。
 また、プール自体は他校の生徒でも、誰でも使用することができる。
 更衣室は、男女ともにプールに併設されている。窓はなく、どちらも出入口の扉を開けたところに目隠しとしてロッカーが置かれている。なお、全てのロッカーは固定されていて移動できない。

 さて、まだ授業中だというのに、男子更衣室には「勇者」が集まってきている。
 ここで「のぞき部」の創立時メンバーを整理しておこう。(順不同)

◆ 蒼空学園から集まった勇者たち

(男子)

弥涼 総司(いすず・そうじ)
鈴木 周(すずき・しゅう)
黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)
椿 薫(つばき・かおる)
ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)
影野 陽太(かげの・ようた)
坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)

(女子)

リリィ・エルモア(りりぃ・えるもあ)
百鬼 那由多(なきり・なゆた)
アティナ・テイワズ(あてぃな・ていわず)
マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)
御槻 沙耶(みつき・さや)

◆ 他校から集まった勇者たち

緋桜 ケイ(ひおう・けい)(男子・イルミンスール魔法学校)
クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)(男子・薔薇の学舎)
麻野 樹(まの・いつき)(男子・薔薇の学舎)
ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)(男子・波羅蜜多実業高等学校)
姫宮 和希(ひめみや・かずき)(女子・波羅蜜多実業高等学校)
笠岡 凛(かさおか・りん)(女子・百合園女学院)
メアリ・ストックトン(さら・すとっくとん)(女子・百合園女学院)


「出て行ってくれ。ここは、男達の……いや、勇者たちの場所だ!」
 なかなか出て行こうとしない掃除中のメイドを、弥涼総司が追い出した。
 更衣室中央に戻ってきた弥涼に、波羅蜜多実業の姫宮和希が握手を求める。
「お前、ハートが強いな。気に入ったぜ」
「当然のことを言っただけだ」
 早くも男の友情が生まれた……が、影野陽太がボソリと呟いた。
「でも、女子がいるのはちょっと……」
 姫宮はボロボロの長ランとぺったんこの学帽を纏い、髪はぼさぼさで男言葉を使う。が、女だ。と同時に、女扱いされることが嫌いだった。
「俺より男らしい男が、ここにどれだけいるって言うんだ!」
 いるわけがない。こっそり女子の着替えをのぞこうという連中だ。
 イルミンスールの緋桜ケイも乗っかってきた。
「あんたは正しい! いいか! 今のうちに言っておく。俺は……ウィッチじゃねぇ。ウィザードだ!」
「あ、はい。すみませんでした……」
 影野は小さく謝るのが精一杯だった。
 波羅蜜多実業のヴェルチェ・クライウォルフは女みたいだったが、
「胸はシリコンよ。でも柔らかいんだから♪」
 中身は正真正銘の男だから、問題ない。
 問題は、百鬼那由多だ。
「私は女子ですが、のぞきをする殿方の気持ちに興味がございますの。見学させていただきたいですわ。だって、そういう刺激が長生きの元ですから」
 パートナーのアティナ・テイワズは、明らかに困っていた。ああ。那由多がまたバカなことを……。
 見学だけで協力はしないという那由多の頑なな態度は不評を買ったものの、外での活動時にのみ見学が許された。
 次の女子は、御槻沙耶。
「あんたたち。どこに穴開けんねん? 女子更衣室に潜入するときに女子がいなくて、どないするつもり?」
 輪の中央に出て、男子たちの顔をいやらしく下からのぞく。惜しげもなく醸し出す色気。
 のぞき部員は、押し黙る。
「あんた、どう思う?」
 何故か虎のマスクをかぶっているベア・ヘルロットは、沙耶の大きな胸に生唾ごくん。
「沙耶さん。自分はあなたを守る!」
 答えになってないが、この一言で沙耶の入部はなんとなく認められた。
 このとき、最後の女子が入ってきた。
 百合園女学院の笠岡凛だ。180センチもある凛が、パートナーのメアリ・ストックトンを肩車しながら、
「メアリ様がこちらの部活動に興味がおありだと言うものですから……」
 とのぞき部の入部が当然といった態度だ。
 子供にしか見えないメアリはベアの虎のマスクを見て、やっぱり子供のように泣き始める。
「ふぇぇ……でも怖くないもん!」
 凛もメアリも女性だが、男子の気持ちはもう一つになっていた。
 なんかもう。男とか女とかどうでもいいや……。
 
「ところで、放送したのは誰?」
 
 みんな、ただただ顔を見合わすだけ。ここにいないのか? いるけど黙っているのか……?