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アトラス・ロックフェスティバル

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TRACK 22

 ドラゴンは怒り狂って咆哮している。ドラゴニュートであるガガ・ギギ(がが・ぎぎ)エルゴ・ペンローズ(えるご・ぺんろーず)はそのことで言い争っていた。
「エルゴたちが好き勝手しすぎたせいでこんなことになったじゃねえか!」
「知ったことじゃないね! これもミーたちの望むところね!!」
 菊が見とがめてガガを問いただすと、ガガはこう答えた。
「あのドラゴンは生贄の儀式が行われたことに腹を立ててるのさ。
 “生贄の儀式を再開したら今度こそブチ殺す”って、ドージェに言われてたらしい」
「じゃあ“これは本当の儀式ではなく演出だ”ってわからせればいいんだな?」
「ミーたちの儀式は本物ネ!」
 菊とガガはエルゴを無視して、まだ演奏のできそうなメンバーを探しにいった。


 『シャンバラの薔薇』のメンバー、イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)ルカルカ・ルー(るかるか・るー)、それにダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の3人はラストに舞台に上がろうと思っていたのだが、出るタイミングを見失って往生していた。
 イリーナとルカルカはまるで宝塚のような格好だ。ふたりともフランスブルボン朝時代の軍人のような衣装だが、それに加えて眼帯、背中にはジェイダスのような羽根、という大仰な姿のイリーナは、身動きするのも大変そうである。

「ラスト付近では会場が破壊されているのではないかと予想してはいたものの、想定を超える最悪な状況だな」
とイリーナ。あまり深く考えないルカルカは、
「どうする? ドラゴンと戦う?」
などと聞いている。
「よしたほうがいい。むしろ撤退を考えるべきだ」
ダリルはルカルカの安全を優先して撤退を提案。

 そこに菊とガガがやってきた。
「おう、いたいた。
 正直おまえたちに頼みたくはないんだが、人手が足りないんだ。
 トリは取らせてやるから手伝ってくれ」


 ステージ上ではドラゴンとヨーコがにらみ合っている。ドラゴンは興奮して何か吼えているが、ドラゴン語なのでヨーコには何を言っているのかさっぱりわからない。

(いい加減にしろ! この生贄を俺が要求したと思われたらどうするんだ!
 今度こそドージェは容赦しないぞ!! 殺される! 殺されてしまう!!)


 自分の命がかかっているのでドラゴンも必死だ。

 そのあいだに『シャンバラの薔薇』は舞台装置に使おうと用意してきた大階段を設置して、観客席とステージの移動をしやすくした。その階段を通って、『シャンバラの薔薇』の三人がステージに上がる。

 イリーナとルカルカは芝居がかった調子で両手を広げてから、ロック調の歌を歌い始めた。アレンジされているが、どうも教導団の校歌のようだ。
 それを聞いてハーリー・デビットソンは自分たちへの挑発行為だと認識、エンジン音で対抗し始める。
 ダリルがシンセサイザーを鳴らす。
 珠代がベースを弾く。

 ドラゴンの興味は足下の音に向けられた。その隙に真奈美が走ってドラムにたどり着く。

 今度はイリーナとルカルカの曲が蒼空学園の校歌に変わった。
 その音を聞いて、十字架に吊されていた雪華や虚雲がぼそぼそとあわせて歌う。
 ドン、ドンという太鼓の音が加わった。ドラゴンを見て戻ってきた翔一朗が叩いているのだ。
 エレキギターが響く。ドラムが鳴らされる。疾風と遥が戻ってきた。

「さあ、みなさんも加わってください。ステージに上がりたい人はどうぞ」

 曲は順にイルミンスール魔法学校、百合園女学院、薔薇の学舎と順に変わっていき、そのたびに所属する生徒が歌い、演奏に加わった。

 そして最後に波羅蜜多実業高等学校校歌が流れはじめた。