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リアクション
司たちの前を通った舞妓の集団は、橘柚子がガイドを務める百合園女学園の面々だ。
人力車で一行は、仁王門近くまで来ていた。
後は、徒歩での移動になる。
「すごかったですぅ」
如月 日奈々が、遠鳴真希と車夫に手をとられて車をおりながら、呟く。
連なる人力車と舞妓は絵になるようで、ここに来るまでに多くのカメラが向けられた。
目の見えない日奈々は、フラッシュだけは感じることが出来る。
「みんな、本当の舞妓と勘違いしたのかなぁ」
真希が心配している。
「大丈夫ですよ。私たち髪の色も瞳の色もさまざまですしね」
そういった神楽坂有栖は、仁王門を見上げて感嘆の声を上げる。
「威厳がありますね」
柚子が簡単に今回のスケジュールを説明する。
「せっかくそやさかいに、ここから清水の舞台へいきましょ」
そのころ、イルミンスール制服の制服を身につけた日下部 社(くさかべ・やしろ)と望月 寺美(もちづき・てらみ)は、八坂の塔から清水寺に続く二年坂から三年坂の石段を登っていた。
坂の両側には土産物や食事処など様々な店が軒を連ね、見ていて飽きない。
ゆる族の寺美は、巫女姿なので、まるでこの街のPRキャラクターのようでもあり、道行く子供たちが手を振ったり握手を求められたりしている。
「はぅ〜☆ありがとねぇ〜☆」
少し照れながらも寺美は子供たちに挨拶を返している。
「あぶねぇ!」
バランスを崩して転びそうになった寺美を社が支える。
「ここで転ぶと三年後に死ぬっていう言い伝えがあんだぞ、気ぃつけぇやぁ」
社は、口に八つ橋をくわえたままだ。両手にもいっぱいの八つ橋の袋を持っている。
三年坂を登り終え、少し歩くと、仁王門が見える。
「おっ!舞妓はんの集団がいるわ〜、おおっ!あれはあゆむんやないかぁ?」
清水寺の仁王門を通ると、そこから西門、三重塔、鐘楼、経堂、田村堂(開山堂)、朝倉堂などを経て本堂まで、登り坂や階段だ。
おぼこ(靴)を履いた舞妓には少しきつい道になる。
レロシャン・カプティアティは、重たい頭と馴れない足元にふらふらしながら歩いている。バランスを崩しそうになったとき、ヴァーナー・ヴォネガットが後ろから支えてくれた。
「あ・・ありがどうですっ」
「どういたしましてっ!ねっ・・」
ヴァーナーが大きな銀色の瞳を輝かせている。
「このあと、レンアイの神社に行くでしょ?誰と占ってもらいますか?ボクはね、・・・と・・と、えーっと、40人超えちゃうかも。大好きな人たちと、もっと仲良くなりたいんです」
レロシャンがくすッと笑う。
「羨ましいです。お友達が多いんですね」
「うん!ケイおにいちゃんに呼雪おにいちゃんに・・・いっぱいなかよくなりたいんです!」
清水寺の本堂には、先に、緋桜 ケイ(ひおう・けい)と悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が来ていた。
和服を好んできるカナタは、今日も秋らしい深緋色の着物を着ている。流れるような長い銀髪が美しい。
ゆたかに秋の景色を楽しむカナタに反して、ケイは落ち着かない。
「しっかし、すげー人だな。ヴァーナーたちは大丈夫かな。あいつらお嬢様だから、悪いやつに騙されてないか、心配だぜ」
清水の舞台前に広がる絶景に背を向けて、人混みばかりを気にしている。
可愛らしい少女のおしゃべりが聞こえてくる。ざわぁざわっと観光客が色めきたつ。舞妓の大集団が現われた。
「やっときたのであろう」
カナタが笑顔を見せる。
「良い眺めだのう。京都に来れたのは嬉しいが、舞妓になれなかったのは、やはり残念だったのう」
カナタがぼそっと呟く。
「今度は、着せてやるよ。カナタの舞妓姿、格好いいだろうなぁ」
ヴァーナーは、ケイとあえて嬉しそうだ。
「ケイおにいちゃん、会えてよかったです」
レロシャンが、ゆらゆら歩きながら、清水の舞台の縁までやってくる。
「よいっしょ」
なんと下を覗き込み、飛び降りようとしている。
「何してるのだ」
カナタが慌てて背中から抑える。
きょとんとした顔のレロシャン。
「えー?みんな飛び降りないんですか?」
「誰がそのようなことを」
「飛び降りると幸せになれるお寺って聞いたんですけど」
ん?天然ボケ?
一同は「清水の舞台」を後にして、目的の地主神社へ向かう。
先頭を行く柚子が地主神社の説明をする。
「あそこに見える10メートルほど離れてたっているのが、2つの守護石どすっ。片方の石から反対側の石に目を閉じて歩き、無事たどりつくことができると恋の願いがかなうと伝わる願掛けの石なんどすえ」
「やってみる!」
そういったものの、レロシャンは目とつぶってしまうと、怖くて歩くことができない。
「うーん」
唸ったあと、怖くて手をついてしまった。
「頑張って!」
勇気を出して、前にすすむ。どうにか、反対側の石にたどりつくことが出来た。
フィルは目をつぶって、
(大切な人を守れますように)と願いを呟く。
フィルの大切な人・・・セラであり、シェリスである。
ゆっくり進む足取りには迷いがなく、すんなりと反対側の石にたどり着く。
他に心に浮かぶ人があったかどうか、フィルの心の奥底に隠れていて知ることが出来ない。
悠希がチャレンジする番だ。
(静香様と・・・成就しますように)
心の中で呟き歩き出す。しかしおぼこが思うようにうごかない。
「悠希ちゃん、曲がってる!もっと右だよ」
見ていた七瀬 歩が声をかける。
悠希が足の向きを少し右に動かす。
「その調子!あっ、でも、もっ、もう少し右…!」
遠鳴 真希も応援する。
皆が息を呑んで見守るなか、ゆっくりと 悠希の上の手が石に触れる。
悠希はその場に、へなへなとしゃがみこんでしまった。
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