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ざんすかの森、じゃたの森 【後編】

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ざんすかの森、じゃたの森 【後編】

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 第3章 立ち上がれジャタ族! グレートマシンガンに対抗せよのこと

 ジャタ族の集落では、シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)が、じゃたの力をジャタ族に見せつけるため、ゲテモノ料理を作っていた。
 「見ろ! じゃた様は、どんなものでも浄化する森の精なのです!」
 「簡単お手軽最悪料理」として、シルバが用意したのは、シュールストレミングを皿に移して、一番辛いデスソースを掛けるだけという、大変おそろしいものであった。
 「これって料理なんだろうか……」
 シルバ本人も、自分で疑問を口にせずにはいられない。
 パートナーの剣の花嫁雨宮 夏希(あまみや・なつき)は、シルバとともにじゃたをジャタ族の前に連れてきていたが、シルバの作る料理には納得がいかない様子で、渋々お皿を用意し、缶詰の開封時には、離れたところから見守っていた。
 「どうかと思います……」
 口下手ながらも、率直な意見を述べる夏希だが、ジャタ族の反応は期待通りであった。
 「す、すげえ、あんなものを平然と食っているぞ!」
 「やはり、じゃた様は、ジャタの森を浄化してくれる、神聖な精霊だったんだ!」
 「もぐもぐ……うまいじゃた」
 臭さと辛さのハーモニーを奏でる料理を、じゃたは美味しそうに頬張る。
 
 一方、棚畑 亞狗理(たなはた・あぐり)は、グレートマシンガンをディスり、ジャタ族をじゃたの信者および農業従事者にしようとしていた。
 (ざんすかとじゃたとグレートマシンガンは、3名ともキャラ立ちがパフォーマンスと語尾と名前に依存……。ちゅうことは……これらを征した者が、ジャタ族の覇権握る事になるんじゃ。是非、じゃたのもと、ジャタ族を農学的に掌握したいモンじゃきに!)
 そう考えた亞狗理は、グレートマシンガンをディスってアジる。
 「グレートマシンガンは語尾も普通、芸無しで名前負けじゃ。ざんすかは毒霧……除草剤と語尾が立派なだけ。『ジャタの真の覇王的な森の精という地位』『ジャタ的に強そうな語尾』『毒霧吸収能力』を持つじゃたは凄いんじゃ!」
 「グレートマシンガンの身長じゃ、イルミンにも四天王にもラリアットが届かん! じゃたが覇王の呼気で瘴気と毒霧を制した! 魔大樹が苗木の従順さでじゃたに懐いた! 噂じゃ鏖殺寺院をヤったのもじゃたらしいけん!」
 「ゴーツーJMC(ジャタの森シティ)! ゴーツーJMC!」
 そんな亞狗理の言葉に、ジャタ族は動揺する。
 「おい、やはり、じゃた様を崇拝すべきなんじゃないのか?」
 さらに、亞狗理は、「農業主義の豚」に扮し、じゃた相手にドMプレイを開始した。
 じゃたは、特に疑問を持たないのか、亞狗理にドロップキックをかましたりしている。
 「オラオラじゃた。……これでいいのか、じゃた?」
 「じゃき……」
 亞狗理の恍惚とした喘ぎ声に、ジャタ族が興奮する。
 「おお、俺もじゃた様に踏んでもらいたい!」
 「じゃた様、奴隷にしてください!」
 (よし、これでジャタ族はじゃた&農林業に心酔じゃ!)
 農林業はともかく、おおむね亞狗理の思惑どおりの展開になる。
 アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)のどピンクのステージの飾り付けにより、ジャタ族が、妙な気持ちになっていたのも原因であった。
 
 こうして、着実にジャタ族のドM化が進行する中、譲葉 大和(ゆずりは・やまと)は、パートナーの吸血鬼九ノ尾 忍(ここのび・しのぶ)とともに、ジャタ族に噛み付きまくり吸精幻夜を使い、操ってグレートマシンガンをこき下ろすサクラにしようとしていた。
 幻影を見て記憶が混乱したジャタ族は、グレートマシンガンに恨みがあったと思い込み始める。
 「俺はグレートマシンガン様におやつを取られたんだ! 三日前から楽しみにしてたやつをだぜ?」
 「俺はグレートマシンガンの本名を知っている! やつの名はソルデス……オマタゲ・ソルデス!」
 「やヴぁいぜ! そいつは卑猥すぎるぜ!」
 「皆! あんまりオマタゲに近づかないほうが良いぜ! やつの水虫は世界樹も枯らすって噂だぜ!」
 「なんだよ! 俺たちはグレートマシンガン様、いや! オマタゲのやろーにだまされてたって言うのか!?」「皆! 今こそオマタゲを倒し、新たな族長と成るべき時だ!」
 「なんじゃこの血……まずくてかなわん……。どうせ吸うならあっちの女子の血がええわい……。グレートマシンガンとやら、はなかなか見所があるのう。わしが生きた4000年のなかで、やつのような不細工は初めてじゃわい」
 忍はぶつぶつつぶやきながらも、着々とサクラを増やしていった。
 「血を吸うならやはり美人でないと面白みがありませんね。しかし……。くくく、順調ですね。一時的とはいえ、他人を支配下に置く感覚は言いようのない恍惚感にあふれていますね……」
 普段は、ドMの眼鏡をかけたドSであり、伊達眼鏡を外すとドSに戻る大和が、端正な顔に怪しい笑みを浮かべる。
 「ふふふ、グレートマシンガン、集落を放置して儀式に没頭するとは、呆れる位の大ヴァカですね……貴方は新たな族長となる俺の姿を目に焼き付けるといいでしょう」
 そんな野望をつぶやく大和であった。

 朱 黎明(しゅ・れいめい)は、それに乗じて、グレートマシンガンに対抗するため、ジャタ族に二つ名を与えて七将軍をスカウトする。
 「ドージェ様以外に神を名乗る資格はないのだフハハハハハハハハハッげほげほ……実に悔しいことだが1人であのグレートマシンガンに勝つことは不可能! ならば仲間を増やして突撃だ! 君達に二つ名を差し上げよう! とりあえず私は『腹黒大将軍』を名乗る。いつも悪いこと考えているぞ! 腹芸が得意だ! 宴会には是非呼んでください!」
 「なんだ? 何か、強そうな名前がもらえるのか?」
 こうして、黎明は次々にジャタ族に二つ名を与える。
 「『蝶人将軍』! なんか蝶すごい! 蝶服装が派手! 蝶テニスが上手い! 決め台詞は「蝶サイコー!」」
 「『盲腸将軍』! なぜか盲腸! 腹が痛い! きつい! その痛さを克服した先にこそ幸せがある!」
 「『快調将軍』! 今日も元気だ飯がうまい! いつも3杯飯だぞすごいんだぞ!」
 「『要発注将軍』! なぜか大事な仕事を任せられる! 発注は慎重に間違えないようにね!」
 「『マ行将軍』! マ! ミ! ム! メ! モ! 不思議な呪文だ気をつけろ!」
 「『握力将軍』! なんと握力100kg! すごいぞ握力将軍お前がNo1だ!」
 「『大昆虫将軍』! ムシバトルが大好きだ! 例え相手が子どもであっても全力これは戦争だ!」
 こうして、「腹黒大将軍」こと黎明と、七将軍はグレートマシンガンに突撃した。
 「なんなんだおまえらはああああああ!! なめてんのかあああああ!!」
 かくして、黎明と、七将軍はぶちキレたグレートマシンガンにより、ぶっ飛ばされてお星様になった。
 七つの星と一つの星で、星座になったかもしれない。
 
 そんな中、佐々木 真彦(ささき・まさひこ)は真面目にジャタ族を説得しようとしていた。
 「ジャタの森に育つ動植物で有益なものを探していたのですが、その途中でとんでもない話を聞いて、皆様に伝えに来ました。ジャタの精霊さんは相当苦しんでいると言う話です。苦しいということはジャタの魔大樹も苦しんでいること、万が一にもジャタの魔大樹が枯れるようなことになると、瘴気を吸収する存在がなくなって、瘴気があふれて生活できなくなると思うのですが、どうですか。基本的に瘴気はパラミラ人であります皆様にも、悪いものでしょうか。ですから、瘴気を発するような真似や、無意味に瘴気を吐き出す存在を倒してしまいましょう」
 いかつい巨漢マッチョだが、心優しい真彦は、真摯な態度で根本的解決をしようとする。
 真彦のパートナーのドラゴニュート関口 文乃(せきぐち・ふみの)は、魔法学校の図書館から借りてきた、写真集をジャタ族に見せようとしていた。
 「もう、蛮族って馬鹿ばっかりね!! ともかく馬鹿にはマンガみたいに視覚で訴えるものが良いわね。飢餓状態の地球人とかが中心の、環境難民が中心の社会派の写真集を探しておいたから、こいつを持ち出して、佐々木の説得時にジャタの無教養な連中に見せて教えてあげるの!!」
 (……『蛮族』って)
 同じく真彦のパートナーのシャンバラ人マーク・ヴァーリイ(まーく・う゛ぁーりい)は、こっそりへこんだりしていたが、普段はなかったことにしている過去の自分の、一族をことを思い出していた。
 (奇行、暴行、変態、うぁ、グレードマシンガンの踊りって禍々しいというより、あれは)
 マークも、文乃とともに、説得に参加する。
 「もし、破壊兵器になっちゃったら生きていくところがなくなって、こういう風に彷徨って、つらい思いするんだからね」
 「一度、環境が破壊されたら、元に戻るのにはものすごい時間を必要とするんだ。このままだと、部族はみんな滅んじまうぞ」
 ジャタ族たちは、露骨に顔を引きつらせたり青ざめたりした。
 (うん、わかってくれたみたいね。愉快愉快)
 文乃は、満足げにうなずいた。
 
 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)も、また、じゃたとともにグレートマシンガンを倒そうとジャタ族を説得する。
 「今、君たちは人生の岐路に立っている。このままグレートマシンガンに協力すれば、鏖殺寺院に協力したとしてシャンバラ教導団をはじめとした侵略者たちに土地は奪われ、一族郎党皆殺しの憂き目にあうやもしれない。しかし、君たちは運がいい、ここにおわすじゃた殿はこの魔大樹の精霊。彼女に協力し、反旗を翻した族長を打ち倒せば、君たちは勇者として、ジャタの森をはじめ、多くの部族の尊敬を集めるだろう。さあ、共に戦おう。敵はステージに在り、討つはグレートマシンガン」
 涼介のパートナーのヴァルキリークレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)は、演説の間、じゃたの護衛をしていた。
 「なんの話をしているじゃた?」
 「じゃた殿、心配しないで。おにいちゃんがきっとうまくやってくれるから。ジャタ族の皆とも、また仲良くなれるはずだよ」
 きょとんとするじゃたに、クレアが優しく言う。
 「おお!! 敵はグレートマシンガン!!」
 「もとい、オマタゲ・ソルデス!!」
 「誇大妄想のオマタゲをぶちのめせ!!」
 「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 ジャタ族は、涼介の言葉に雄叫びを上げる。
 (よし、ジャタ族の気持ちにクリティカルヒットだ!!)
 涼介はクレアとじゃたに、微笑みかけた。
 「えへへ、やったね、おにいちゃん」
 クレアも、かわいく笑ってみせる。

 こうして、ジャタ族の内部に、反グレートマシンガンの勢力ができたのだった。