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ざんすかの森、じゃたの森 【後編】

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ざんすかの森、じゃたの森 【後編】

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 第5章 真のラスボス! 巨大怪獣大決戦のこと

 しかし、これで終わりではなかったのである。
 
 「ふはははは、これは良質な瘴気だ! ヘルジャッジメント円!」
 桐生 円(きりゅう・まどか)が、瘴気を吸収して、ステージ上で巨大化したのである。
 「世界征服はあんな頭の足りないやつよりボクの方がふさわしいよ!」
 前回からの特殊なテンションにより、円は暴走気味である。
 「予定調和の力で服も一緒に巨大化だ! な、なんだって? 胸が大きくならない? 胸囲は大きくなってるのに!!」
 巨乳に嫉妬する円は、血の涙を流す。しかし、気を取り直して叫ぶ。
 「グレートマシンガンの奴は実によいことを教えてくれた!!
  瘴気を増やし続ければ、ジャタの魔大樹は暴走するのだ!!
  これで、ボクはエリザベートですら超えることができる!!
  このボクが世界を征服するのだ!」
 パートナーの吸血鬼オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)と、同じく円のパートナーの英霊ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)は、解説を行う。
 「はろはろー。解説のオリヴィアよ。それにしても、あの子、スカートの中丸見えって気づいてるのかしら?」
 「解説のミネルバちゃんだよ。おそらく気づいてないよねー」
 そんなステージに、初島 伽耶(ういしま・かや)とパートナーの魔女アルラミナ・オーガスティア(あるらみな・おーがすてぃあ)が乱入する。
 「グレーター初島伽耶! 変身!」
 そう叫ぶと、伽耶もステージ上で巨大化した。
 「名前にグレートまたはそれ以上の巨大な前書きをつける。好き嫌いをしない。瘴気はまずいから食べないとか言わない。細かいことにはこだわらない。これにより、巨大化のロマンは実現できるんですよ! 円さん! 実証できましたね〜」
 円に推測を話して結果的にそそのかしたのは伽耶だったのである。
 一方、アルラミナは、身体こそ巨大化しなかったが、態度が巨大化していた。
 「伽耶! 今日こそお前を引きずり下ろして、ワタシがメインキャラになる! とりあえずオマエのアクションを三百字に制限してやる!」
 そう叫び、ケラケラ笑うアルラミナであったが、瘴気で精神がイッているだけであった。
 「うるさい!」
 「ぷちっ」
 しかし、すぐに伽耶に踏み潰されてしまった。
 「見よ、この力! うははは! グレートは美! グレートは魂!」
 ジャタ族のグレートマシンガン信仰を揺るがしつつ、伽耶が叫ぶ。
 「どっちがグレートなのか勝負です、円さん!」
 「望むところだ! 巨乳共何故もがき生き続けるのか。滅びこそボクの喜び死にゆく者こそ美しい。さぁボクの腕の中で息絶えるがいい!」
 決め台詞を叫んで、円が伽耶に応戦する。
 巨大女子二人によるキャットファイトが始まった。
 「あの子は青じゃなくてピンクなイメージよね、残念だわ」
 女の子や下着の色について、エロス的視点から、オリヴィアが解説する。
 円と伽耶は、ステージ上でプロレスを行うが、ほとんどは反則技であった。
 「あれは危険なのー」
 ミネルバが、手段を選ばない円の技を解説する。
 「ううっ、せめて、せめて巨乳を、一人でも、この手で滅ぼしたかった……」
 「あ、あたしの力がー……」
 えぐい戦いの後、円と伽耶は相打ちになり、ステージに倒れる。
 倒れた二人の身体からは瘴気が抜けて行き、元の大きさに戻っていった。

 一方、世界征服のため、ステージに残って邪悪な踊りを踊っていた日堂 真宵(にちどう・まよい)に、桐生 ひな(きりゅう・ひな)が宣言する。
 「すごいバルカンさんが倒されても、まだラスボス狙いの人がいるのですっ! 駄目なことしてる人は、分銅で突撃なのですっ!」
 ひなのパートナーのアリスナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)も、分銅を用意していた。
 「どうせ行くにゃら、女の子狙いたいがのぅ」
 そして、ひなは、真宵に向かって分銅を担いで突撃する。
 「そんなステージで世界征服とかするのはめーなのですっ!」
 「え!? 何その分銅!? ……ぷちっ」
 「うきゅっ……ぶちゅ〜……」
 真宵とひなは、仲良く潰れるのであった。
 一方、ナリュキであったが。
 「にゃはは、妾を止めれるモノなら止めてみるが良いのじゃー」
 そう言うなり、やはり分銅を背負って、円と伽耶に突撃した。
 「にゃぶへっ……」
 「うはうっ!?」
 「ぐにゅあっ」
 ナリュキ、円、伽耶も、こうして仲良く潰れるのであった。

 戦闘の隙をついて、比島 真紀(ひしま・まき)は、破壊工作でステージに爆薬を設置していた。
 パートナーのドラゴニュートサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、真紀の作業中、辺りを警戒する。
 「真紀、順調そうか?」
 「あと、もう少しです。ステージを破壊してしまえば、グレートマシンガンがこれ以上強くなることもなく、瘴気を利用して悪事を働こうとする人もいなくなるでしょう」
 サイモンの警戒により、邪魔が入ることもなく、真紀は、鮮やかな手際で爆薬を設置すると、サイモンとともに離脱する。
 「いきますよ!」
 「ああ!」
 直後、ステージは爆破され、跡形もなく破壊された。

 こうして、ラスボスらしき人物も全員倒され、ステージも破壊され、ついにやったと皆が思ったときであった。
 (気に入りませんな、気に入りませんな! 何が悲しくて、あんなオッサンのオンステージを眺めてなければいけないのか……。お茶の間のヒーロー(自称)たる俺を差し置いて目立とうなんて不届き千万! デカイだけの厳ついオッサンなんてお呼びじゃないのです。時代のニーズは、俺のような仮面の貴公子(自称)を求めているはず! なればこそ、彼奴らの野望の中核たる魔大樹は俺がいただいて、有効活用してくれましょう)
 そう考えたクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)は、魔大樹を破壊兵器として使用しようとしていた。
 パートナーのドラゴニュートマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)が、グレートマシンガンをおだてて、事前に使用法を聞き出していたのである。
 (暴走寸前まで瘴気を吸い過ぎた魔大樹は、完全な破壊兵器になる前に適度なガス抜きをする必要があると思う。そういった意味では、破壊兵器になる前に魔大樹を使ってやろうというクロセルの提案には大いに賛同するところだ)
 マナは、クロセルの思惑を良い方向に勘違いしていた。
 マナの予想通り、グレートマシンガンは少しおだてただけで、魔大樹の使用法をベラベラしゃべった。
 「クロセル、世のため人のため、悪党共を懲らしめてやるのだ!」
 「はーーーはっはっは、一番目立つのは俺のようなヒーローであるべきなのです!」
 こうして、クロセルは、ステージの上で両手を頭の上に乗せ、右足を上げ、その場でぐるぐる3回転した。
 これが、魔大樹を破壊兵器として起動させる鍵となる行動だったのである。

 魔大樹からは、真っ黒な瘴気が一気に噴出し、大爆発した。

 「はーっはっはっはっはっはっはっは!! これでジャタの森は平和になるはずです!!」
 「なんなんだこれはあああああああああ!?」
 「ふざけんなざんすー!!」
 「じゃたー!?」
 クロセルと、いまさら事態の真相に気づいたマナだけでなく、ざんすかやじゃたはじめ全員が吹っ飛び、辺りは爆炎と煙に包まれるのであった。