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リアクション
第二章 想いのままに突き進め
洞窟内を駆けている。蒼空学園のナイト、ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)と並び走るのは、イルミンスール魔法学校のプリースト、エレート・フレディアーニ(えれーと・ふれでぃあーに)である。エレートはベアとベアのパートナであるマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)を交互に見ながら問いていた。
「魚人たちは、そんなに多いのですか?」
「あぁ、多いぞ、同じ顔が幾つもあって、分身したのかって思えるほどに、そう、金太郎の飴を切って並べて体と手足を生やしたような、そんな」
「ベア、わからない」
「んなぁにぃ? ようし、それなら、広間は広くて、そこを埋め尽くすように、そう、満員電車の如くに魚人たちが肩を寄せ合っていてだなぁ」
「そんなに多くなぁい!!」
「ぐふぁぁあっ」
マナの拳がベアの腹部を強打した。
倒れこみそうになるベアの体を支えたのは、エレートのパートナーであり、英霊の武田 信玄(たけだ・しんげん)である。それを見たエレートは信玄に微笑みかけてから、マナに言った。
「私たちが広間に着いた時、それは魚人たちの包囲の外側という事かしら」
「そう、私とベアもノーム教諭と一緒に来たんだけど、騒ぎの中でも、広間の端に居れたの、だから包囲される前に広間を飛び出したの」
「それは正解、だな。兵法において敵に包囲される事ほど絶望的な状況は無い」
「だとしたら、包囲の外から攻める事で崩せるかもしれませんわね」
「おぉ、更に外からの攻めであれば、定石にも対抗できる」
信玄の言葉に確信を得てから、エレートは先頭を走るソルジャーのラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)に呼びかけた。
「という事ですので、ラルクさん、広間に着いたら……」
「おらあぁっ」
「邪魔だぁぁぁっ」
ラルクと、ラルクのパートナーでドラゴニュートのアイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす)は走りながらに立ち塞がった魚人の1体ずつを殴り飛ばして道を開けさせていた。
「悪ぃな、テメェらに構ってる暇は無いんだ」
あっさりと、簡単に魚人を殴り飛ばしたラルクとアインを見た4人は、ただただ感嘆の声を上げるばかりであった。
「あぁ? エレート、何か言ったか?」
「あっ、えぇ。ですから、広間についたら魚人たちの気を逸らせて、混乱を起こします、そして今は囲まれている生徒の皆さんと一緒に動き出す事で、包囲を崩します」
「ああ、そうかい、了解だ」
「何が了解だ、何が分かったってんだ? あぁ? ラルク」
「うるせぇぞ、アイン、黙ってろ、っと! 見えてきたぜ」
駆ける先に大きな光りが見えてきた。よく見れば、いま走っている通路も光りに向かって広くなっている。光りを指差してベアが叫んだ。
「神殿のアル広間は、あそこだぁ!」
「おっしゃあ!! 行くぜぇ!!!」
叫びと共にラルクは自身にドラゴンアーツを唱えると、大きな拳を握り締めて振りかぶっていた。
「ラルクさん? ちょっと」
「おらぁぁぁぁぁぁ!!!」
エレートの静止声も届かず。ラルクの拳が洞窟内の壁を打ち砕き、見えていた光りは、それはもう大きなものになっていた。
爆発音と違える程に大きな音がして、目を向ければ神殿広間内の壁の一部が吹き飛んでいる所だった。
破壊された壁からはラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)を先頭に、何人かの生徒の姿が見えた。それを見たのは魚人たちに囲まれている生徒たちだけにあらず、魚人たちの視線を集めるにも成功していた。
瞬間に、樹月 刀真(きづき・とうま)が魚人の集まりに光条兵器の片刃剣をもって突進していった。そこには魚人たちに捕えられていた生徒の姿があった。そして捕えられていたナイトのソウガ・エイル(そうが・えいる)とローグの志位 大地(しい・だいち)も同時に反撃の初動を起こしていた。
ソウガはパートナーのアリア・エイル(ありあ・えいる)に光条兵器の片刃の長剣を出させると、地面に突き刺し、軸にして回転しながら魚人たちの顔を蹴り飛ばしていった。大地も光条兵器の漆黒の太刀を呼び出すと、刀の腹で魚人の腕を打ち下ろし、下がった顎を打ち上げた。
魚人たち薙ぎ払い、刀真はパートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の元に辿りついた。
「月夜、無事ですか?」
「刀真!!」
戦線の真っ只中だというのに、危機的状況真っ最中だというであるのに、月夜は刀真に飛びつき抱きついた。
「あっ、ちょっ、月夜」
刀真は顔を赤らめ、背筋が伸びた。胸の中の月夜の手が、刀真の背を強く抱き寄せている。
月夜の頭に手を添えようと、した所で刀真は月夜を強く抱き寄せて、そのままに魚人の拳を光条兵器で受け流した。
「さすがですね、刀真さん」
「大地、無事か」
「おかげさまで。我々もまずは教諭の元へ向かいましょう」
そう言って大地はソウガに視線を送ると、ソウガも受け取りてしっかりと返した。大地は光精の指輪を用いて光を発し、皆が飛び出すタイミングを作った。
ソウガはパートナーのアリアを姫に抱えて飛び出した時、百合園女学院のメイド、桐生 円(きりゅう・まどか)はノーム教諭の護衛をさせられていた。スナイパーライフルで魚人の足を狙い撃つ。そんな事が出来るのも、パートナーの吸血鬼オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)と英霊のミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が前面で暴れているおかげであった。
「教諭、アンタも戦えるんだろう? 少しは戦ったらどうだい?」
言いながら円はオリヴィアの雷術が動きを止めた魚人の足を撃ち抜いた。
「私が戦う? くっくっくっ、君たちが居るんだ、手は出さないよ」
ミネルバは笑顔絶やす事なくランスを振り回していた。円はミネルバが戦っている魚人の足も狙おうとライフルを向けたが、ミネルバの不規則でデタラメな動きを見て、円はライフルを下ろしていた。
和原 樹(なぎはら・いつき)と、パートナーのフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)は魚人に火術を放ちて牽制した上で後退してくると、息を切らしたまま樹は問いた。
「キリがない!! 教諭、ルファニーさんを何とかすれば、魚人さんたちが暴れるのは止められるんだよな?」
「そうだねぇ、そうなるよねぇ」
「どうすればいいんだ」
「ふむ」
教諭が天井を見上げた時、双岩の中央から7人の生徒が降りて来たのが見えた。加えて神殿内も7人の生徒が到着したを見て、教諭は笑みを深めた。
「始めよう、君に指示をする。人魚の彼女を操っているのはフラッドボルグの洗脳魔術だ、それを解くには……」
聞いた樹の口は勢いよく開いたが、教諭の笑みに圧され、顔を歪めながらに飲み込んだ。
ルファニーは、広間の隅で魚人たちに囲まれたまま広間を出て行こうとしているようだった。
「フォルクス、行くぞ。あなたも、来てくれ」
「えっ、ちょっと」
樹が六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)の手を取って走り出した時、突然に爆発音が広間のあちこちで起こった。同時に大量の煙が広がり始めた。閃崎 静麻(せんざき・しずま)が、広間内に仕掛けた爆薬を一斉に爆発させたのだ。
駆けだした樹と優希に入れ替わるように、教諭の元には天井部から降り来た7人が駆け寄っていた。
「教諭、お待たせしました」
「言われた通り、あの穴から落ちて来ましたよ」
ノーム教諭と面識のある御凪 真人(みなぎ・まこと)と清泉 北都(いずみ・ほくと)が挨拶をしている間に、五条 武(ごじょう・たける)は変身ポーズを取りて、改造人間「パラミアント」への変身を完了させていた。
「ノーム先生、俺が来たからには安心だ。改造されたこの体、それでも平和を愛する想いまでは変わらなかった、この世界の平和を守るた……っおうっ」
武が言い終えるよりも先に魚人の拳が襲いかかって来た。武はこれを両腕で受け、雄叫びを上げた。
「俺の口上を妨げようなどぉぉ」
「武、落ち着いて、まずは距離を取って」
武の肩の上から言ったのはパートナーで体長15センチのドラゴニュート、トト・ジェイバウォッカ(とと・じぇいばうぉっか)である。武がトトの言う通りに、魚人の拳を弾いてい距離を取ると、
魚人の顔にサッと切り傷を刻んでは姿を消した何かが見えた。
「ほら、綾香さんが攪乱してくれてる」
「綾香さん?」
トトが言ったのは、百合園女学院のローグ、夜薙 綾香(やなぎ・あやか)の事である。綾香はスキルの隠れ身と持前の素早さを駆使して、魚人へのヒット&アウェイを仕掛けていた。武器は匕首で魚人の顔や腕などの表皮を切るだけにしていて、あくまで牽制を目的としているようだった。
「だからね」
「おぉうおう、皆まで言うな、分かったぞ」
綾香が切りつけて動きを止めた瞬間に、トトが火術を放つ。向かってくる拳は武が綾刀の刀身で受け、ドラゴンアーツで強化した拳で殴りつける。更には武が止めた拳のままに綾香が切りつけ、2人が離れると同時にトトが火術を。狭い範囲の中においても3人の連携は成功していた。
襲い来る魚人の足元に氷術を放ったのは御凪 真人(みなぎ・まこと)である。
「セルファ」
「任せて」
真人のパートナーでナイトのセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)は、真人が凍らせた足元の氷をフェザースピアで砕いて飛ばした。氷撃が多数の魚人を一度に襲い、魚人たちを一度に後退させた。
「教諭、今は良くても、このままでは」
「真人! あと少しだ」
清泉 北都(いずみ・ほくと)が向けた視線の先を真人も追った。そこにはルファニーを囲む魚人たちと戦う者、そしてそこへ向かう者たちの姿があった。
「ですよね? 教諭」
ノーム教諭は今や、ずっとに笑みを浮かべていた。
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