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「水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌」(第2回/全2回)

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「水中での戦い!人魚と魚人の協奏歌」(第2回/全2回)

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「ぷはあっっっ」
 海面から顔を出して、陸へと上がり来たのは薔薇の学舎の清泉 北都(いずみ・ほくと)と、パートナーの吸血鬼ソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)である。北都は首元へ手をやってから、小さく笑った。いつも着ている上質な執事服、そのタイを緩めようと無意識のうちに手をやってしまったのだが、今は紺のサーフパンツ姿だった事を忘れていたのだ。
「アリシアさん、含気錠、もう一つ貰えるかなぁ」
「さすがに自力で潜り続けるのはキツイぜ。訳の分からない奴も現れたしな」
 ソーマの言葉に追して、北都はアリシアに水中の様子を伝えた。それはシーワーム、シーサーペントの出現によって起こった水中の混乱を伝えるものだった。
「という事は、どこかに隠れている人魚たちは、ずっと怯えてるって事だな?」
 パートナー2人と現れたのは薔薇の学舎のプリースト、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が北都に声をかけた。
「呼雪、無事だったんだねぇ」
「当たり前だろ。それよりも人魚だ、救助しておく必要がある、そうだろう?」
 呼雪がアリシアに問いかけた時、アリシアの「声帯ガチガチ換エル」が断末魔のような悲鳴をあげた。
「はい、私です」
「わかっているよ、どうだい? 順調に混乱してるかな、くっくっくっ」
 ノーム教諭が笑い声を見せた時、アリシアたちの上空から多くの小型飛空艇と空飛ぶ箒が降りてきた。
「遅くなりましたぁ」
 先頭に立って降り立ったのはイルミンスール魔法学校のメイド、ナナ・ノルデン(なな・のるでん)とパートナーのズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)である。ナナはイルミンスール魔法学校の図書館で調べた事をアリシアに伝えた。それは歌声には魔力を込める事で聞く者の戦意を高める効果がある、という事であった。
「ルファニーさんは、今どこに居るのですか?」
「……、どうしてですか?」
「アリシア」
 換エルの口からノーム教諭の声が静かに聞こえてきた。それだけで、アリシアは瞳を微かに閉じただけにして、事実を受け入れた。
「ルファニーは、私たちの前から姿を消したままです」
「彼女ならこちらに居る。それよりも追援の生徒たちは到着してるかぃ?」
 いつの間にか、到着した生徒たちがアリシアを囲むように集まり、教諭の声を聞いていた。無論に誰もが従順な表情をしているわけではないのだが。
「まずは青刀の双岩へ向かう事、そして双岩を護る事が必要になるんだけど……」
「それは私達がやるわ」
 声を上げたのはチーム「真実の探索者」ルカルカ・ルー(るかるか・るー)であった。パートナー3人に加えて、バトラーのエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)とセイバーのセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)も並び出ていた。
「私達の仲間が青刀の双岩に居るの、どちらにしても合流するつもりだったし」
「そうかぃ、同時に女王器の龍と彼を止める役が必要なんだけど、他にも誰か居るのかな?」
「そいつは俺に任せてもらおうか」
 蒼空学園のソルジャー、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が綾刀を肩にかけながら歩み出たが、同じく蒼空学園のソルジャー、ヴィンセント・ラングレイブ(う゛ぃんせんと・らんぐれいぶ)が眼鏡を光らせたのも同じ時であった。
「頭を落とせば戦況は一気に優勢となる。俺達も龍の上の男とやらせてもらおう」
「何だよ、横取りするような真似するなよな」
「おまえの様に小さくて幼い者だけでは荷が重いだろう、と言っているだけだ」
「何だと!」
 掴みかかろうとするトライブを止めたのは、パートナーの千石 朱鷺(せんごく・とき)であったが、朱鷺は瞳を鋭く据えてからヴィンセントと、彼のパートナーである王 天鋒(おう・てんほう)に静かに言った。
「人を見た目で判断するのは下賤者の証。トライブ、行きましょう」
「何だと! オイコラ、待ちやがれ」
「止めろ、天鋒」
 小さく息を吐いたヴィンセントに重ねて、ため息を吐いたのは蒼空学園のセイバー、雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)である。悪食丸は濃い眉を歪ませながら、チーム「聖獣封」のメンバーであるローグのクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)に目を向けた。
「やれやれ、俺たち正義の味方は、あんなイザコザも止めるべきなのかね?」
「いや……、目的が等しければ問題は無い……、馴れ合いは……必要とは限らない」
「なるほど。俺たちも龍とあの男を止めますよ。洞窟内に仲間が合流すれば、完璧だ」
 チームのメンバーであるナイトのソウガ・エイル(そうが・えいる)は洞窟内で魚人に掴まっているが、彼らはそれを知らないでいる、知っていたとしても同じ事なのだ。アイツなら戻ってくる、その信頼が揺らぐ事はない。笑みを見せた2人の目がそれを物語っていた。
 後から合流したローグの黒崎 天音(くろさき・あまね)に声をかけたのは早川 呼雪(はやかわ・こゆき)であり、天音は湾に向かうまでにウィザードの佐伯 梓(さえき・あずさ)と目的の一致を確認していた。天音は呼雪に梓の事を紹介すると、そのまま湾内へと向かって歩き出していた。
「僕たちは湾内で怯えている人魚たちを救出に行く。行くよ、呼雪、梓」
「そういう事。行ってくるぜ、教諭」
「えっと俺は人魚を見たいだけ…… なんだけど…… いや、行くよ!」
 2人に遅れた梓に並んで、ウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)とパートナーのフェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)も同行を志願した。
「俺たちも行く、ここの守りは彼女達たちに任せられそうだ」
 振り向いたウェイルの先にはシャンバラ教導団のメイド、朝霧 垂(あさぎり・しづり)ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)、そして蒼空学園のプリースト、今井 卓也(いまい・たくや)が力強く握った拳を見せていた。
 各々がそれぞれに行動を開始していた。時間もない、故にそれが正解であるのであろうが。
 アリシアは換エルに口を当てた。
「よろしいのですか?」
「いぃよぅ、必要な行動は上がったみたいだし。あぁそうだ、何人かこっちに来れないかなぁ、面白い事になってるんだ」
「それなら俺たちが行きます」
 アリシアの前に立ったのは蒼空学園のウィザード、御凪 真人(みなぎ・まこと)と波羅蜜多実業高等学校のソルジャー、五条 武(ごじょう・たける)、そして百合園女学院のローグ、夜薙 綾香(やなぎ・あやか)であった。
「やはりこの状況を収束させるにはノーム教諭の力が必要でしょう」
「そうだな、龍に乗る男をブチのめしたいが、大将が居なけりゃ、奴に舞わされるだけかもしれねぇからな」
「こちらの陣を完成させる事を優先させるべきだわ」
 ノーム教諭の声が笑ったように聞こえてきた。
「よぅし、頼もしぃよ。それじゃあ、黄水龍が通った穴から、みんなで落ちてきてくれるかな? 急ぎでねぇ」
「はあぁぁあ??」
 武と綾香は驚いた声を上げたが、真人、そして話を聞いていた清泉 北都(いずみ・ほくと)はため息をついて歩みだしていた。
「相変わらず、無茶な事を言いますね」
「まぁ、それがあの人だけどねぇ」
 黄水龍が通った穴は青刀の双岩の中央部、確かにその通路ならば湾内と洞窟内を結んではいるのだが。
 ヴァジュアラ湾内、そして上空と洞窟内。あらゆる場にて、各々の活躍が明暗を左右する、そんな状況になってしまっていた。