リアクション
ほんとの終結
なんだか良い感じの大団円だった。
なんだか音楽のピッチが異様に早い事と、異常に場内温度が高い事を除けば。
設備制御室の音響担当セルシアは、ウィンディアを咎めるような目つきで見た。
「ちょっと、ウィン……。機材壊したでしょ?」
「オレじゃねーって、なんか機械が勝手に壊れたんだよ」
「そのスイッチ、なんで床に転がってるのよ……?」
その横では、脚本担当の菊が空調設備担当の薫に普通に怒りをあらわにしてた。
「ちょっと薫! 温度上げ過ぎじゃねーか!」
「老若男女脱ぎ脱ぎで皆幸せになるでござる。これが拙者の演出プランでござる。問題はないでござろう?」
「問題あるっつーの。見やがれ! 役者が脱ぎ始めてんじゃねーか!」
「ほう。健康的で良いではござるぬか?」
「そう言う問題じゃねぇよ。ラストなのに最悪じゃねぇか。おい、緋音?」
「はい?」
「ナレーション流してくれ、エンディング・プランB行くぞ」
「エンディング・プランBって何です?」
「台本の最後のページを見るように、皆に伝えてくれ! こんな事もあろうかと用意してたんだ」
ナレーションが流れ終わると、舞台上であるにも関わらず、みんな一斉に台本を読み始めた。
「OK、上出来だ。本番もこの調子で頑張れば優勝は間違いないぜ!」
菊と裏方チームが舞台に上がって来た。団員達は片付けのため、セットを分解し始めた。普通に素でみんな雑談なんてしてる。エンディング・プランBとは劇中劇オチなのであった。確かにこれなら、音響がぶっ壊れてても、空調が馬鹿みたいになってても、あまり気にならない。と言うか、普段通りでいいのだから、気が楽だ。
「キング様はよく頑張ったよ」
ぽんと大鋸の肩を魅世瑠が叩いた。
「あー、なんだよ?」
魅世瑠に続いて、フローレンスとラズも声をかけた。
「ああ、あれだけの連中を敵に回して自分を通すなんて、なかなかできるこっちゃねぇぜ」
「キングさま、カッコよかっタよ!」
「ま、まぁな……、俺様ぐらいの豪傑じゃなけりゃ無理だな」
「これは、あたしたちからのご褒美さ」
そう言うと、三人は大鋸の頬にキスをプレゼントした。
「な……、なななな……、なにしやがんだ!」
大鋸はガラにもなく顔を赤くして、頭から湯気を出していた。
「次こそは主役をめざそうぜ、な、わんちゃん」
大鋸はむっと顔をしかめ、繰り出した鉄拳で三人を彼方へぶっ飛ばした。
「わんちゃんじゃねぇ!!!」
「わんちゃん、元気そうだね」
団員達と雑談していた愛美が、ふと客席を見つめて微笑んだ。
「来年はあなたも舞台に上がらない? 楽しいわよ!」
おわり
マスターの梅村です。
本シナリオに参加して下さった皆さま、ありがとうございました。
楽しんで頂けましたら、本当に嬉しいです。
それはまた、シナリオでお会いしましょう。