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【2019体育祭】魔法と科学の借り物競走!!

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【2019体育祭】魔法と科学の借り物競走!!

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 *12:30* 昼食

 お昼休みより少し前。
 広瀬 ファイリアと如月 さくらが朝からひっきりなしに作り続けていたサンドウィッチや、おにぎり、お弁当は売店:賽の目に並べられていく。シフォン・リゼンハルトによって全て綺麗にラッピングされていた。ウィノナ・ライプニッツが値段を書いて、数字の管理をウィルヘルミーナ・アイヴァンホーが行う。予算ぎりぎりの設定だが、全て売れたら皆でお茶して帰れる分くらいは売り上げられる計算になっていた。

「こんな予算ぎりぎりで売るのもったいないな」

 店主の神名 祐太は一つの弁当を手にとって呟いた。色とりどりの小さなお弁当は、女性とたちに受けそうなかわいらしいハートや動物をデザインしたおにぎりや、煮物が入っている。そうかと思えば、大食漢向けに焼肉や揚げ物が沢山入ったお弁当まである。ベジタリアン向けや、アレルゲンに気を使ったものまでそろっている。和・洋・中・伊を取り揃えたこのラインナップは、他の購買でもなかなか見かけない質と量だった。残念ながら、2人がかりなため全校の生徒文用意できなかったというのが、心残りではある。

「まぁ、料理が得意なのが2人だけじゃねぇ……」
「ボクやウィノナがやるより、二人がやったほうがひどく手際がいいし、かえって邪魔になっちゃうから……」

 かなり落ち込んだ様子でウィルヘルミーナ・アイヴァンホーは呟く。飲みものの準備を終え、後はお昼のアナウンスが流れるのを待つばかりだ。一通りの作業を終えて売店の準備に着手していた如月 さくらは会場内の地図を確認しているルインアームズ・アリアに声をかける。

「アリア、一足先に売り歩きをしにいってくれませんか? 荷車にはもう積み込んであるわ」
「あと、受注表こっちな」

 神名 祐太が午前中に入った注文の一覧表を差し出すと、頷きながらルインアームズ・アリアは受けとる。

「了解。何時に戻ってくればいいでしょうか」
「買い手が少なくなったら移動して、売り切れたら戻ってきてください」
「了解」

 赤い瞳がわずかに細められて微笑んだように見えた。売り歩きにいったアリアを見送ると、アナウンスの合図が聞こえ始める。
 

 九条院 京『ではでは、お昼の時間なのだわ! 皆さんたっぷり食べて午後もがんばるのだわ!』

 お昼のアナウンスが流れると、早速購買に生徒達がなだれ込む。応対の不得意なシフォン・リゼンハルトや広瀬 ファイリア、如月 さくらは在庫のお弁当を前に出す作業に徹した。ウィノナ・ライプニッツやウィルヘルミーナ・アイヴァンホー、神名 祐太が3人がかりで客対応をこなしていく。
 お弁当だけでなく、おまけで持ってきた各校の校章入りタオルやドリンクホルダー、応援用のぽんぽんに何故かストラップやキーホルダーまで飛ぶように売れていった。
 ある程度落ち着いたところで、神名 祐太が調理担当の二人に声をかける。

「お二人さん、こっちはもう大丈夫だから、休憩がてら次に取り掛かってくれ」
「では早めに食事をして、後夜祭に向けて準備始めましょうか?」
「そうですね! 後夜祭用のご馳走も今からやらないとまにあわなそうですっ」

 広瀬 ファイリアと如月 さくらは顔を見合わせて残りを任せてまた調理室へと駆け出していった。



「がんばれ、俺」
「刀真、大丈夫?」

 漆髪 月夜は自分が作った『少しいびつで味が濃いだけのサンドウィッチ』を片手にパートナーの顔を覗き込む。顔が青ざめているのは、きっと寒さのせいだろうと思い、水筒に入れた温かいお茶を差し出す。

「ありがとう」
「他の皆さんも、食べておくれやす」

 積み上がっているお重を広げているのは、信太の森 葛の葉だ。好物ばかりが入っているからか、荒巻 さけはニコニコしながらお弁当をほおばっている。椎名 真も自前の弁当を持参していたが、交換しながら他のメンバーとの昼食を楽しんでいた。

「やっぱり、こうして皆で食べるのは楽しいな」
「そうですわね……こんなに寒いけど、なんだか心まで晴れやかになりますわ」

 荒巻 さけはエビフライをほおばりながら、晴れ渡った空を見上げていた。

「たいやき〜」
「たいやき〜」

 立川 るるは、一足先におやつのたい焼きを手にして柳尾 なぎこと一緒にほおばっていた。購買まで買いに行った東條 カガチは、あんまり目を輝かせる二人を見て負けてしまい、自分や他のメンバー用に買ったたい焼きまで差し出していた。食事が終わると、二人はアルパカの写真集を東條カガチの前で広げた。その場にいたほかのメンバーも、写っている愛らしいアルパカの姿に心を和ませる。ラピス・ラズリはおとなしくお茶を飲みながら、もふもふ〜と和んでいる人々を眺めていた。



 放送用テントにも色とりどり野菜弁当に、スタミナ弁当が届けられた。テントの柱に逆さに縛り付けられた明智 珠輝の前にお弁当を3つ持ったリア・ヴェリーが姿を見せる。ポポガ・バビも飲み物を持って現れた。

「ほらバカ珠輝、弁当だ」
「ふふふふ、リアさん……この状態で昼食宣言という事は、はい、あーんのプレイができるわけですね」
「ポポガ、飲み物を皿に入れてやるといい。珠輝は口だけで食べるのが得意だからさ」
「分かった。兄貴、手、使わない。凄い」
「うふふふふ、そんなに照れなくても私はいつでもOKなのですよ」
「あはは、向こうは凄いですね……」
「審判、どうでした?」
「私は、スタートの合図メインにしたから、遙遠さんが請け負ってくれて助かってます」

 クリス・ローゼンはそういいながらも、ユーリ・ウィルトゥスお手製のお稲荷さんをほおばる。審判仕事のよしみで誘った緋桜 遙遠には筑前煮や出し巻き卵を勧める。神和 綺人は水筒に入れてきた飲み物を人数分手際よく用意する。

「遙遠が役に立てているなら、何よりです」
「……あの格好も、なかなか似合っていた」
「ユーリも救護テントで活躍できているみたいで、安心したよ」
「……」

 無言で頷いて、食事に出してくれた仲間がいる救護テントのほうに無意識に視線を向けた。その頃、救護テントにもお弁当が届けられていった。競技中は生徒達の出入りがひっきりなしに行われていたのだが、昼食時になるとそれもぱったりと途絶えたため、簡易ベッドが置かれている所に大きなテーブルを置いてお弁当を広げていた。戸隠 梓や藍乃 澪は食事の合間に香ってくるほのかなハーブの香りに頬を緩ませる。

「いい香りの中でする食事は、とても良いですわね〜」
「本郷くんの用意したアロマポットのおかげで、先生たちが癒されてるわぁ」
「それじゃ、今度は俺を癒してほしいなぁ、なんて」

 ソール・アンヴィルが両校の養護教師の間に入り二人の両肩に優しく手を置こうとするとその両手を勢いよくひねり挙げるのは本郷 翔だった。

「その前に多少は痛めつけておいても大丈夫ですよね?」
「翔、お昼の間くらいは他所に行ってればいいのに」

 心底残念そうに金髪の守護天使は言い放ち、おとなしく食事の席へと戻った。四方天 唯乃は放送席で活躍しているフィア・ケレブノアの頭を撫でてやる。

「盛り上がってるからそれはそれで良いでしょうしね」
「私も聞いててとても楽しかったですわ」
「そうですか? 唯乃やエルに楽しんでもらえているなら、この調子で午後もがんばりますね」
「飲み物、忘れずに持っていくのよ?」

 パートナーの言葉にこくん、と頷いて新しいペットボトルのお茶を受け取ると時計がお昼休憩が終わりを告げているのをみて、フィア・ケレブノアは立ち上がった。