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黒羊郷探訪(第2回/全3回)

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黒羊郷探訪(第2回/全3回)

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第5章 バンダロハムの戦い(3)

「……あの旗……間違いなく奴がいる……行くぞ……駆けろスレイプニル!」
「やっぱりあの時の人と戦いに行くんですね? 援護します。お願いホーヴィ!」
「やけに機嫌がいいと思ったら、そういう事。まったく……私まで呼ぶから何かと思えば。まあいいわ。私も少し興味があるから。行くわよグラニ!」
「えっと……今回も戦うんですね……出来るだけ被害が出ないように戦います。いいですよね? ヴァルプニル! 行って!」


5-01 騎狼部隊の到着

 戦いの砂塵が見えた。
 バンダロハム北の境界だ。
 戦線に駆けつけた騎狼部隊。
 デゼル、ルケト。続いて、イレブン。そしてカッティ、
「ついてこい、三人衆!」
 そのすぐ後ろに付き従う、シャンバラ兵らしからぬ三人は、酒場でイレブンが勧誘した食い詰めの三人だ(第1回第6章参照)。
「この戦いで皆の力がどれほどの者か見せてもらうよ」
「おう兄ちゃん。まかせんしゃい」
「俺はもと騎兵だぜ。とにかく、さっさとこれをもらわねえと」
 片手に菅槍を構え、片手でマネー。一人は確実に騎狼を乗りこなしている。その後ろに、ナイフの爺。
「……」
 青白い顔の術師は、無言で騎狼を駆る。こちらも手慣れたもののようだ。
 いずれも、腕に自信のある者らしい。
 一方、騎狼部隊としての初参戦となるのは、各メンバーのパートナー達。
 騎狼と仲良くなったルーは、騎狼を上手く御している、いや御されている?
 メイベルのパートナーは、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)。生前は英国ガーター騎士団所属していた。メイベル以上におっとりしたお姉さん、ではあるが、騎士だけあって乗馬にはこなれている……筈。騎狼、ではあるが。騎乗の者としての心得は同じ。騎狼と触れあい、充分なコミュニケーションを取っている。これで、人馬一体を目指す、いや、人狼一体……?
 イレブンのパートナー、グロリアーナ・イルランド十四世(ぐろりあーな・いるらんどじゅうよんせい)。出撃前は騎狼舎で騎狼の管理をしていた。こちらも、貴族だけあって……いや、しかし没落貴族であるグロリアーナ家。久しく馬には乗っていない……? 危なっかしいが、貴族の血で乗りこなしているようだ。
 ともあれ……いざ突撃だ。
 戦場。
 右翼が縮まり、食い詰め勢はほぼ包囲されている。
 先頭集団の方は黒尽くめに囲まれて見えない。
 左翼に打撃を加えつつ、境界から後退して戦ってきたようで、苦戦しながらも損害は抑えられているようだ。だが、倒れている食い詰めの姿は少なくはない。
 後方の士気はまだまとまりがあり、完全に包囲されるのを防いでいる。神楽坂 俊の姿が見える。
 しかしとにかく、このままでは瓦解は必至。
 敵の後方から、騎狼部隊が殺到する。
「誰が呼んだか「硬いだけ」!
 騎狼部隊が突撃隊長デゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)! 行くぜ!」
「デゼルその台詞……でも今は攻撃も立派なもんだぜ。よしオレも行くかっ」
 デゼル、ルケトがツインスラッシュで切り込む。
「るー も!」
 ルーも突っ込むが、文字通り敵兵にそのまま突っ込みそうなになったのを何とかうまく騎狼を、いや騎狼が御した。しかしこれこそ人馬(狼)一体かも……と、後方からフィリッパは思う。
 デゼルに続き、シャンバラ兵が続々と続く。
「我ら騎狼部隊が来たからには、黒羊軍の攻勢もここまでだ!」
「おお、騎狼部隊だ」
「騎狼部隊が来たぞ!」
「逆襲開始だ。私も野生の蹂躙で走り抜けるぞ!」
 イレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)は、ライトブレードを抜き放つ。「ゆくぞ、デロデロ!」デロデロは、イレブンの騎狼の名だ。
 騎狼部隊、包囲に切り込んでいく。
 その包囲の中心では、奮闘しているこの男。
「フン!」
「岩造様! 後方に騎狼部隊がお見えになりましたわ!」
「おお、フェイト!」
 手綱を引くのは、騎狼部隊突撃隊長のデゼル。
「岩造、いや龍雷の隊長さん。よく持ちこたえたな!」
「ああ、デゼルか。貴様ら、来てくれたのだな」
「あたりまえだぜ!
 まずは一撃を加え包囲を破り、離脱後再攻撃に移る。イレブンも来ている」
「イレブンか」
 イレブンがこちらに手を振り、敵兵を切り進んでいく。 
「おお、百合学のメイベルもいるようだな。
 ええい、龍雷連隊! 援軍が合流したぞ。いっそう奮起せい!!!」
 岩造は咆え、剣を振るった。
「よし。これからは浪人達を今後の決戦?に向け、厳しく訓練していかねばなるまい。腕立て、腹筋、懸垂は毎日六百回、武器の扱い方等も教え込ませ、敵の対策等も……」
「岩造様! 後ろ、あぶのうございます!」
「む。フンッ! 何のこれしき。そして、私は剣技と白兵戦を教えていくことで彼らを強くするために鍛えていく……」
「本隊が到着したぞ!」
 カルラも叫ぶ。食い詰めの士気は、にわかに上がる。
 が、まだ全軍ではない。
 統率の低い食い詰め100強に、騎狼部隊が50。まだ、数でも勝らず、こちらの兵力は戦いの始めからは減らされている。シャンバラ兵も個々の戦闘力では、黒羊の軍には劣る。
 敵の収拾は早い。
 騎狼部隊の一撃目で包囲は解けた。相手はすぐに両翼を戻し始める。
 二撃目の前に、相手は兵を横隊に。
 回り込みは難しい。
 敵兵は岩造と先頭集団の一部が戦った辺り以外、ほぼ減っている様子がなく、兵は密だった。傭兵達もすでに合流している。
 メイベルに先行し、露払いするフィリッパに、魔の手が。
「えっ……!!」
 落馬する、フィリッパ。
「しまった、メイベル気を付けてください! 何か、そっちに向かいましたわ」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)は悪寒がした。
「めいべる!(もうネタがきれたので漢字は使わないぜ?)
 心の底で、俺を呼ぶお前の声が聞こえた(と思う)。
 知る人ぞ知る。
 俺の名を言ってみろ。
 怒鳴堵濁巣憤怒一世(どなるど・だっくすふんどいっせい)也! ヒャハァァァ!!(俺についてはオークシリーズを見てな。)
 今、俺はバンダロハムの傭兵をやって生計を立てている。
 めいべる。
 シリーズをまたいでみたびお前とまみえるとはな! 会いたかったぞ♪
 おい、ここで言ってもいいか。
 ……
 お前が好きだーめいべるーーー!!!! ヒャッハァ!!
 お前に惚れたんだっ」
 どんっ
 ……
「どこの馬の骨かわかりませんNPCに用はないですぅ」
「めいべるひどいぞ。でも俺はそんなめいべるが」
 どんっ
 【鈍器で後頭部を狙う】セシリア・ライト(せしりあ・らいと)
 どんっ
 【鈍器で後頭部を狙う】セシリア・ライト(せしりあ・らいと)
 どんっ
 【鈍器で後頭部を狙う】セシリア・ライト(せしりあ・らいと)
 ……
「め……めいべる」
 フィリッパ、「あの、とどめ刺しておきます?」
 メイベル、「はい。遠慮なくお願いしますですぅ」
 フィリッパはミゼリコルデを取り出した。
「め……」さくっ
「…………」
 包囲は解けたことで、食い詰めも各々に態勢を立て直す。
「おおっ。なんだ爺さんいつから騎兵になったぁぁ」「む。おい見ろあの青白もいるぞ」「あの管槍がいるってことは、確かに金はもらえるってことか?」
「ちっ。おい奴らに手柄横取りされてもいいんかい。お前ら、俺らだって腕を頼みに生き延びてきたんだろうが! まだまだ、敵を切り崩すぜ!?」
「おうよ!」
 そんな中、デゼルは、冷静に戦況を見て取る。
「思ったより、ダメージは与えてなさそうか」
 イレブンも、一撃離脱の後、敵陣容を眺める。
「うむ。士気は盛り返したようだが、敵は固いな。このままでは時間の問題かも知れない」



5-02 ウルレミラ西の戦い

 一方、西回りの黒羊軍に向かった永谷も、ウルレミラの西で、敵勢に遭遇した。敵はウルレミラから一・五キロ程の地点まで迫っていた。
 夜の闇の中に、黒光りする兵ら。
「よし。ここで止まれ」
「?! ……おい。
 な、お前ら……? 何故だ。何故、教導団がここにいる?」
「ああ、その通り。俺は教導団の大岡永谷だ。この先には行かせない」
 騎乗の永谷。堂々としたものだ。が、相手にはその姿は見えていない。
「??」
 ファイディアスが前に出る。
「私の華麗な舞をその目に刻みなさい。(ペット達もですよ、私の勇姿を刻みなさい)」
「な、……ええい敵は寡兵。もみ潰せ!」
 光学迷彩で姿を消していた永谷が、踊るフィディの前から姿を現し、敵に先制する。
「わあ!」
「パ、パンダ?!」
 同じく永谷に並んで姿を現したのは熊猫 福(くまねこ・はっぴー)だ。そのまま打ちかかる。
 ランスを振り上げる、永谷。騎兵が突撃する。
「敵は倒すものではなく、混乱させるものという方針で行こう。
 陣が崩れたら、歩兵が攻撃だ」
 これで敵の出鼻は挫いた。
 パルボン私兵の攻撃力はなかなかのものだ。が、この数……夜の闇にまぎれて、ごまかせている分もあるだろうが、圧倒的に不利。
 敵の奇襲は防いだ、このまま何とか、敵を押し止めることができれば、いいのだが。
 囮が終わると、フィディは後方で治療に回る。
 歩兵が前に出ると、永谷も一旦後退する。フィディのもとへ。
「痛ってえ……今回は、だいぶ派手に暴れたからな……」
「仕方ありませんね。(ただし、戦いが終わったら調教させてもらいますよ?
 私を囮にする、などという作戦の責任をとりなさい。)」



5-03 第三の姫

 両者一旦間合いを取り、向かい合った教導団と黒羊旗の軍勢。
 カッティ・スタードロップ(かってぃ・すたーどろっぷ)が前に出る。
「やあやあ、あたしこそは撲殺の女王カッティ! この地に平穏をもたらすために帰ってきた!
 この星のメイスこそがスター(ドロップ)の証である!」(趣味特技が撲殺だったので、撲殺寺院に強い対抗心を燃やし始めた。セスタスを置いて、再びメイスを手に取ることに。「撲殺ならあたしは負けない!」(『カッティ日記』カッティ・スタードロップ著/2019.12「最近の出来事」より引用)PS騎狼部隊のポスターに登場しました。)
 ざわざわ……ざわ……敵陣がかすかにざわつく。
 イレブン、「何という後付設定! 落ち目の少年漫画でも通さんぞ、こんな展開!」
 グロリアーナ、「アホの子すぎますわ……」
 しかしカッティは、尚もメイスを高く掲げ、屹然と胸をはってみせた。
 ――そう、あたしの生い立ちが「過去を捨てている」だったのは、撲殺寺院のスターだったからなのさ! 戦いを求めて教導団に来たけれど、この地に乱が起きるならあたしが鎮めてやる!
 イレブン、「……」。グロリアーナ、「……」もはや苦笑するしかない二人。
 だが……敵陣からは其処此処で、別の笑いがもれた。
「ははは! そうか。それは残念だったな。撲殺寺院は、すでに我々黒羊軍の手に落ちた!」
「な、なんだってー!」(カッティ&イレブン)
 ここで若干の説明が必要になるかも知れないが、オーク二作目に登場した「撲殺寺院」とは決して今唯マスターが初期的なミスで「鏖殺寺院」を誤植したものではない。撲殺寺院とは、これからの今唯シナリオで登場するヒラニプラ南部勢力の一つとして、旧オークスバレーを含む最南一帯に根を張る列記とした独立勢力であった。だが、教導団第四師団との戦いに敗れ(『オークスバレー解放戦役』今唯ケンタロウ著 参照)勢力の衰えた撲殺寺院は、北より教導団攻略を窺う黒羊教によって、ついに滅ぼされることとなったのだ。二〇一九年十月、教導団が修学旅行に行っていた頃の出来事である。尚この戦の顛末については、後に国頭書院から出版されることになる『グラニニペス峠の決戦』(猫井又吉著)に詳しい。
「そんな……そんな……」
「まさか、カッティのあまりに強引と思われた後付設定が通るとは……これは人類の危機!」
 ということでカッティは、撲殺寺院のやんごとなき姫君であったことが今明らかになった。
 しんと静まる教導団陣営。
「なんか知んねえけど、えらい展開になったな……」
「そのようですぅ……」
 デゼルとメイベルも、カッティにイレブンに何と声をかけたものか。……
 ははは! 黒羊側では、高らかな笑い。……やがて黒羊旗の後方に砂塵が見える。



5-04 やってきましたクルード・フォルスマイヤー

 いよいよ戦いも佳境か。
 この男の登場だ。
「雑魚に用は無い! 道を開けろ! 冥狼流奥義! 【破狼爆炎陣】!」狼の形状をした闘気(爆炎波使用)が炸裂する。「邪魔だ! 冥狼流奥義! 【駿狼連牙斬】!」馬から飛び下りると、居合いの構えを取り、高速度で敵陣を駆け抜け、次々抜刀……斬り付けていく(チェンスマイト8連続使用)。再び馬に駆け乗り、「……これが、銀狼の爪牙だ……」刀を鞘にしまう。
「ぎゃ」「ぶべ」「が」「むぼ」「どっ」「ばやゃ」「ぎぺー」「ぱじゃじゃ」
 斬られた傭兵どもから、一斉に血が噴出す。
「るー☆ るー☆ きんいろおめめぎんいろながいかみのおにーさん めいろー るー☆ おーぎっ」
 はしゃぐルー。
「そうか、……アレか」
「なんて言うか……は、派手だなー……」
 ばっ。黒羊軍と教導団の間ど真ん中に降り立った、この男、クルード……フォルスマイヤー……そうだ。クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)だ……」
 ばっ。ばっ。ばっ。クルードの周囲に、三人の美少女戦士も舞い降りる。
「【蒼天のサファイア】! ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)
「【紅炎のルビー】! アメリア・レーヴァンテイン(あめりあ・れーう゛ぁんていん)
「【氷雪のダイア】! アイシア・ウェスリンド(あいしあ・うぇすりんど)
「るー おねーさんひとりふえてる るー」
「……さて……思う存分、雑魚は屠った……大将はどこだ……そろそろ、出てきてもいいはず……」
 今度は、しんとして動かない黒羊軍。
 威圧的な陣容。
 真ん中で「ボ」の旗が揺れている。
「……どうした……何故、出てこない……やつが、俺に気付かない筈はない……」
 敵陣の奥では、
「ああ、気付いているとも。そんだけ派手に現れれば気付かないでか。
 しかし、一軍の将たる者、何故どこの雑兵ともわからぬ一介の剣士の相手をすると思うておるのか」
 再び、敵陣が動く。
 一斉に襲いかかる黒羊兵。
「……く……雑兵に用はない! ……出てこい、敵将ボテイン……クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)はここだ……! ……」
 乱戦の最中、こちらも敵将を探す騎狼部隊のイレブン。
「敵将はどこだ? 私がメサルティムを討ち取る!」
 「めさるてぃむ」「ぼていん」の名は、ルーとコタローによってもたらされていた。
「な……??
 お、おい! 貴様っ、この大将旗が見えんのか! 「ボ」とあるだろ「ボ」と!
 いいか、俺が黒羊軍の将ボテインだ!!」
「……む……出てきたか……」
 ボテインと向かい合うイレブン。ライトブレードを抜……クルードが来た。
「……教導団の手を煩わすまでもない……俺が相手だ……」
「そ、そうか……。倒してくれるならありがたいことではあるが」
 イレブンはとりあえずライトブレードを収める。
「あのなあ。これは教導団と我々黒羊旗の戦いぞ? おまえは誰なのだ、おまえは」
「……言った筈……歴史に刻め……俺の名はクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)……」
「クルードさんに任せます。周りの兵士達は任せてください! まだまだ行きますよ……ブルー・エンド・ミスト!」
「あれがボテインね。馬鹿力だけはありそうね。周りの雑魚は引き受けるわ。クリムゾン・レイ・フレア!」
 周囲では、蒼い霧や真紅の炎や巨大な氷柱が巻き起こっている。
「クルード様の邪魔はさせません! アイシクル・ディザスター!」
 氷柱が、敵を阻む。「動かないでください。当てますよ?」
「……今回は本気だ……前回の様に行くと思うな……行くぞ……【冥界の銀狼】の爪牙……見せてやろう……その身に刻め!封印解凍!【羅刹】!……【冥狼縛封】……」奈落の鉄鎖で重力操作。動きを封じる。「冥狼流最終奥義!」高速で接近するクルードの、「【冥狼斬翔閃】!」(説明:羅刹モードで攻撃力を高めたチェインスマイトによる二回攻撃。)
 クルードは、漆黒の片翼を出現させ遥か上空へ全力で斬り上げて見せた。「……これが、最終奥義だ……」
 ボテインは動かない。
「……何故だ……?! ……現状のスキルでは効果がないということか……? ……どうにもならぬではないか! ……」
「おい黒羊ども! どけ、邪魔だ!
 貴様ら、俺の気にくわねぇ。とっととここからうせろ!」
 黒羊の兵を片っ端から斬り刻み、向かってくる者。ギズム・ジャトだ。
「おい、貴様黒羊の大将だな。俺が首級挙げて終わらせてやるよ!」
 ジャトは、斬馬刀を振りかぶり漆黒の鎧で身を固めたクルードに襲いかかった。
「……何……新たな敵か……まあ、いい……面白くないから、とりあえずはお前を倒す……」
「おい、俺が将だ! 馬鹿者ども、勝手に一騎打ちを演じるな!」
「騎狼部隊のイレブンだ。お相手仕ろう、メサルティム」
「この野郎!! 俺はボテインだ!! 侮辱しやがって!」
 ボテインが大きく振りかぶる。
 ライトブレードを抜き、打ち合うイレブン。
 数合で、イレブンのライトブレードが弾かれた。
「貴様では相手にならぬ」
「なんて力だ……!」
 イレブンは、次のサーベルを取り出す。
「無駄だ。何本あっても貴様の力では同じだ。
 死ね!」
 ボテインの大剣がイレブンを襲う。
 打ち合おうとしたイレブンのサーベルが、ボテインの剣をすっとすり抜ける。
「!?」
 ボテインの剣がイレブンの鎧を砕いて肩に突き立つ。
 イレブンのサーベルは、正面からボテインの鎧もすり抜け、体に達した。光条兵器だ。
「肉を切らせて骨を断つだ!」
「っと……!!」
 尻餅つくボテイン。
「峰打ちだ」
 目を見合わせるイレブン、ボテイン。
「イレブン!!」
 カッティが叫ぶ。
 イレブンは、ボテインに剣を突きつけた。
「黒羊軍の将ボテイン捕えたり!」
 一瞬、戦場が静まり返った。