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リアクション
第7章 己に負けない精神の戦い
幽霊が苦手なセオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)は、屋敷からいなくなった魔女オメガをたった1人で探していた。
静かな森の中に突然、銃声が鳴り響く。
「不意打ちとは卑怯な!」
木々の死角から弾丸がセオボルトを狙い、何者かが襲撃してきた。
ガササササッと素早く草の中を移動し、セオボルトが手に持つ食べ物を狙う。
「これを狙うとは・・・何者!」
芋を狙い銃を撃ってきた者が彼の前に姿を現し、機関銃の銃口を向ける。
「なんですかな?この不可思議な現象は・・・・・・」
現れた男の姿はセオボルトとまったく同じ容姿と格好をしていた。
「―・・・幽霊ではないようですな」
苦手なモンではないと分かると、彼はどうやって相手を倒そうか思考を巡らせる。
草木の陰に隠れながら激しい銃撃戦を繰り広げる。
相手は的確に急所となる頭部や、戦闘不能にしようと腕を狙う。
「正に自分が最大の敵というわけですか。・・・銃弾が残り少なくなってしまいました。せっかく持ってきましたが、止む終えませんな・・・」
ズボンのポケットから袋を取り出し勝負に出た。
「さぁ、Japanが誇るソウルフード!」
手に持っていた芋ケンピをドッペルゲンガーにドンッと見せつけた。
「細切り芋ケンピが欲しければ降伏して、自分の邪魔をしないで頂こう!」
「素直にそれをこちらに渡してくれれば考えよう・・・」
トリガーに指をかけたまま、よこすように片手を差し出す。
「欲しければここまで来ていただこうか」
もう1人のセオボルトは、警戒しながらゆっくり接近する。
後もう少しで手が届くと思った瞬間、地中から何かが飛び出してきた。
ガシャアアッ。
「ぐぁあぅうああ!!」
セオボルトのトラッパーにまんまとひっかかり、トラバサミに足を挟まれてしまう。
スプレーショットの弾丸の雨を放ち、止めのスプレーショットでターゲットを蜂の巣にする。
「食欲に負けるとは・・・・・・。とはいえ・・・やはり他の食物でコレにかなう物はありませんな!」
芋ケンピを1つ口の中へ放り込み、モグモグと美味しそうに食べた。
「オメガちゃんを罠にはめるなど卑劣な奴め!この俺がクリスタルを破壊してやる」
犯人へ怒りをぶつけ、変熊 仮面(へんくま・かめん)が大声で叫ぶ。
「で、なんで俺様が目の前にいるんだ?」
「フフフ、何でだろうね」
進む方向へ向き直ると、ドッペルゲンガーの変熊が立ちはだかっていた。
「貴様は人様の前に全裸で出てて恥ずかしく無いのか?」
「貴様が言うな!」
同じ格好をしているもう1人の存在の変熊が、思わず本物にツッコミを入れる。
「そこを通させてもらうっ」
「させぬぅう」
変熊は相手へ素手で立ち向かっていく。
「ぐぬぬぬぬ!」
「ぐぬぬぬぬ!」
正面から激突し、互いに両手で押し合う。
「力が互角なら・・・これはどうだ!」
連れてきたネコを変熊が放つ。
「にゃ〜!」
「うにゃぁあん」
「みゃうー」
「にゃぃ〜」
放たれた4匹のネコがドッペルゲンガーの足元をうろちょろする。
「いや、どうだって言われても・・・」
足元のネコを見ながら、感想に困ってしまう。
「貴様は自分の体が好きで好きでたまらない・・・それでみんなに見て貰いたくてしょうがない。違うかい?」
気を取り直してドッペルベンガーは仮面を外そうとする。
「そうだよ!」
堂々と変熊はマイボディーラブということを易々と認め、仮面を外し終わらぬドッペルゲンガーの顔面に強烈な鉄拳を繰り出す。
「俺様が正体を隠すために仮面を付けているとでも思っているのか?自分の顔が嫌いなんだよ!!」
沼地にベシャァアアッと倒れ込む相手を睨みつけ、大声で怒鳴り散らした。
「よくも俺様の顔を・・・・・・」
殴られた顔を片手で押さえながら立ち上がる。
「おのれぇええ、そんなに自分の顔が嫌いならボコボコにしてやろぉおおっ!」
顔を殴られた恨みに燃え、怒り狂ったドッペルベンガーが変熊に殴りかかる。
「みゃぁああん!みぃ〜」
妨害するように彼の足元をくすぐり、ちょろちょろと走り回る。
「えぇえいっ邪魔をするなぁあ」
「一瞬の隙・・・それが時として命取りとなる!出でよ、魔獣ども!!」
野性の蹂躙の能力によって、どこからともなく魔獣を呼び出す。
「ぎにゃぁああっ」
2つの尻尾を持つ、巨大な猫又を呼び出した。
「ふぎゃぁあいいい」
「ぬぅううぁああわぁあ!!」
ドッペルゲンガーは一瞬にして魔獣の鋭い爪の餌食になってしまった。
「ふっ、朽ち果てたか。さぁてオメガちゃんのために、クリスタルを破壊しに行こう!」
ふわっとマントをそよ風にはためかせ、哀れな屍から離れていった。
「自分と同じ姿のやつね・・・本当にいたんだ」
佐々良 縁(ささら・よすが)は目の前にいるもう1人の自分を睨むように見せる。
「なあ、あの子を死なせておいて、生きてるのがつらくないのか?」
いつでも狙い撃ちできるように銃口を縁の頭へ向けながら草を踏みつけて近づく。
「つらい・・・?そうやって精神をゆさぶろうとするんだろう」
「お前が心の奥底に秘めていることを言葉にしてやってるまでだよ」
押し黙る縁に対してドッペルゲンガーは怪しい笑みを浮かべた。
「死にたいんだろ?・・・・・・だったら私と・・・」
トリガーに指をかけ引こうとする。
「48点」
その言葉を発したのと同時に、ハンドガンで額を撃ち抜いた。
「まったく中途半端なウツシミだな」
自分と同じ生き物でとっさのことに対応できない相手を嘲笑する。
「確かに、なぜ私みてーなろくでなしの方が生きてるんだとは思うがな・・・」
シュウシュウと煙をあげる銃口を見つめて言う。
「正解は“死にたい”んじゃねぇ、“殺したい”なんだよ。今回はある意味願いがかなったようなもんだが」
縁は物を言わなくなった死体を見下ろしながら呟く。
「・・・・・・一応オメガさん探しますかぁ〜」
何事もなかったように、亡骸を踏みしだき獣道を進んでいった。
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