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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第3回/全3回)

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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第3回/全3回)

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「はっ!」
 実力行使による騎沙良 詩穂(きさら・しほ)の一撃が、ゴーレムの左足を打ちつけた。
「里也、今だよっ!」
「えぇ。行きます」
 バランスを崩したゴーレム目掛けて、尼崎 里也(あまがさき・りや)ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)をスイングの後に投げ飛ばした。
「たぁぁぁぁぁぁっ」
 光条兵器である短刀の一閃が、ゴーレムの胸に炸裂した。
 倒れ込むゴーレムの背が地につくのと同時に、スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)煙幕ファンデーションを使って、煙幕を張った。
「今の内に、逃げるのです!」
「なっ、あなたたちは彼女に味方してたんじゃ…」
 スカサハに手を引かれながらに、詩穂が抱いた疑問は当然だった。鬼崎 朔(きざき・さく)と、パートナーであるスカサハ、カリン、里也はパッフェルと共にこの場に現れ、パッフェルと会話をしているのを詩穂は見ていたのだ。それが、パッフェルが撤退したも関わらず、彼女たちはこの場に残り、詩穂たちの手助けをしたのだから。
「直ぐにパッフェル様を追います。恨みはありませんが、朔様がお怒りになられていますので」
「………」
 気を失っている神代 正義(かみしろ・まさよし)クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)が背に抱えて、如月 日奈々(きさらぎ・ひなな)リョフ・アシャンティ(りょふ・あしゃんてぃ)が肩を抱いて駆け出した。
 水晶化した花嫁たちも操られたままである。その上、5体のゴーレムと真っ向から戦うにはリスクが高すぎる。
 場を変えて、まずは状況を報告する事、その為に。
 煙幕に紛れて一行は、森の奥へと駆け出したのだった。


 毒苺のなる巨樹の下、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)クイーン・ヴァンガードの本部へ現状の報告と、女王候補であるミルザム・ツァンダへの協力要請を試みた。
 女王器である『青龍鱗』が奪われたという事実、そして全身を水晶化された剣の花嫁が暴走しているという事態を収束させるにはヴァンガードの組織力が必要だと考えたからである。
「ただ今、ミルザム様は出向の準備をしております。準備が整い次第、現地に向けて出発する予定です。また、先行して援助部隊を向かわせておりますが、そちらは間もなく到着されると思います」
 ヴァンガードのオペレーターの声が感情を殺したような音をしていたのは、早朝の低血圧の為であろうが、その内容は美羽に少しばかりの安堵の息を与えた。
「そうよ、今から送るわ」
 言いながら、ポニーテールをなびかせて振り向いたテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)に笑顔を見せた。その笑みを受けたロザリンドは、シィリアン・イングロール(しぃりあん・いんぐろーる)エラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)に笑みを受け渡した。
「騒ぎの間中、樹の上にいたのですか?」
「うん、樹の上でマッタリしてたの。ねぇ、エル」
「そう、だって唯乃とシリィが駄目って言うから。私は戦ってもよかったのに」
「唯乃の判断は正しかったと思うよ、なんだか良く分からないうちにバトル一直線になってたし」
「それはそうだけど… あの戦いの中、携帯で撮っていたのは… 凄いです」
「はい、テレサは頼りになるんです」
 そう言ったロザリンドの笑顔が、シィリアンとエラノールの顔を赤くした。それほどに、信頼と嬉しさに満ちた眩しい笑顔をしていたから。
「イルミンへの報告は終わったよ。さ、今度はうちの校長に、ね」
 テレサが携帯をロザリンドへ手渡した。顔を真っ赤にしたロザリンドへ。
 彼女たちの報告によって、少なくともイルミンスール魔法学校、そして百合園女学院へは、パッフェル側についた生徒の情報が伝わる事となった。彼らへの処遇が決まるのは、まだまだまだまだ先の話になるのだが。


『青龍鱗』を取り返したかったら、俺に追いついてみな」
 駆けながらも器用に舌を見せた李 なた(り・なた)が進行方向へ顔を戻した時、すぐ横に夕凪 あざみ(ゆうなぎ・あざみ)が並走している姿を見てとれた。
「なっ、いつの間に」
「………… ここまでです」
 あざみのりターニングダガーを避けようと、李が足を止めた瞬間、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が李の背に爆炎波を、そして倒れ込んだ李をファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)が押さえ込んだ。
「ウィング、これ!」
 李が抱えていたトラの毛皮に包まれていたのは『青龍鱗』ではなく、ラウンドシールドであった。
「くそっ! 一体どこですり替えた!」
「さぁ、どうだかな」
 パッフェルの影武者として人質交換の場に立ち、そして煙幕の中をいち早く飛び出した李が『青龍鱗』を持っていなかった。頬が潰れる程に地面に押しつけられながらも、李は笑みを浮かべて見せたのだった。