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リアクション
★ ★ ★
一方、こちらはブース入り口である。
「さあ、オレと握手……」
「お〜い、垂、ライゼ、遊びに来たぜ〜」
手を差し出すエヴァルト・マルトリッツを軽く無視して、朝霧 栞(あさぎり・しおり)が元気よく中へと入っていった。
「お嬢様、食堂内ではお走りになってはいけません」
やんわりと、しかしきっぱりと朝霧垂が朝霧栞をたしなめた。
「どうぞ、こちらへ」
「は、はい」
ちょっと勝手が違って、朝霧栞が思わず素直に従ってしまう。どうせ朝霧垂はしっちゃかめっちゃかな接客をしているだろうとたかをくくってきたのだが、予想もしない真面目さにちょっとおちゃらけるタイミングを完全に逸してしまったのだ。
「オムライスでございますね」
「うん」
きちんと椅子を引いて座らせたもらった朝霧栞が、こくんとうなずく。
あまり間をおかずに、ネル・ライト(ねる・らいと)によってオムライスが運ばれてきた。
「あ……、え〜と……、いただきます」
おとなしくオムライスを食べ始める朝霧栞のそばのテーブルでは、朝野 未羅(あさの・みら)と朝野 未那(あさの・みな)がはしゃいでいた。
「いちごパフェなの〜」
「バナナサンデーですぅ!」
テント設営までの土木工事と電装系の工事をてきぱきとこなした二人は、お役ご免でお客様としてはしゃいでいる。二人の目の前には、ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)特製の巨大いちごパフェとバナナサンデーがどーんっとおかれていた。
「お嬢様方。お静かに願いますわ」
「えーっ、だって、これ美味しいんだもん。あ、ちょっと一口ちょうだいなの〜」
「ああ、ずるいですぅ。じゃ、私も一口」
キャッキャと朝野未羅と朝野未那が、お互いのデザートを食べ合ってじゃれ合う。
「お嬢様方、お戯れがすぎますわ。お控えくださいませ」
ネル・ライトにキッと睨みつけられて、たちまち二人はおとなしくなった。
「やれやれ、未沙の目がないと、二人ともしょうがないねえ」
カウンターに座った孫 尚香(そん・しょうこう)が、二人の方を振り返って苦笑した。
「そこの可愛くてダンディな店員さん、一杯くれないかな。モノはお任せするよ」
「ふふふふふ、可愛い……、可愛い……。いや、承りました」
孫尚香の可愛い発言に多少顔を引きつらせながら、館山文治が言った。
さすがに、メイド服を着たリスのゆる族なので、言い返したいのだが言い返しにくい。
「ダンディな俺からのおすすめでギムレットをどうぞ」
館山文治が、フレッシュライムを搾ると、ジンとともにシェイクし、縁を砂糖で飾ったグラスに注いだ。できあがったギムレットを、孫尚香の前に差し出しす。
「ふふ、ありがと。あんたも一杯どうだい?」
「いただきましょう」
館山文治は、いい気分の孫尚香に、そう答えた。
★ ★ ★
「オムライス一丁追加だよ!」
「はーい、喜んで!」
ライゼ・エンブの声に、麻上 翼(まがみ・つばさ)が元気よく答える。
月島悠の歌声が響く食堂側とはうってかわって、厨房側は戦場であった。
たまに朝野未沙が手伝いに来るものの、実質、ライゼ・エンブと麻上翼の二人ですべての料理を作っている。
もちろん、人数的には他にも何人もいるわけだが、食中毒でも引き起こされたのではたまらないと、厨房で調理をする者は厳選されていた。特に、月島悠と朝霧垂は要注意人物にされている。
「何かできたー?」
「何かじゃなくて、ちゃんと注文を言うんだもん!」
フライパンをせわしなく動かしながら、ライゼ・エンブが、厨房に入ってきたマリーア・プフィルズィヒに言い返した。
「んーと、できたのあったら持ってくよ。あっ、これ美味しそう」
「ああっ、つまみ食いしちゃだめ!」
つけ合わせのキャロットグラッセをつまみ食いするマリーア・プフィルズィヒを見て、あわてて麻上翼が止める。放っておいたら、出す物出す物丸裸にされてしまいそうだ。彩りも何もあったもんじゃない。
「はい、今一瞬でまかない作ったから、お腹すいてるならこれ食べて」
ハンバーグを作った後の肉汁にさっとライスを絡ませると、ライゼ・エンブがフライパンを返してドンと皿の上に載せた。
「わーい」
すかさず、マリーア・プフィルズィヒがそれにかぶりつく。
「ハンバーグランチ上がりましたー」
その隙に、麻上翼が急いで料理をカウンターへと運んでいった。
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