薔薇の学舎

リアクション

終章　銃弾

愛は裏切り　（不夜城）

蘇生した二人は、どちらともなく立ち上がり、むかいあった。
息がふれるほど、間近で見つめあう。
テレーズの手には、影月銀に渡された護身用の小銃が握られている。
テレーズはそれを男爵のこめかみに押しつけた。
男爵は静かな表情のまま、懐から銃をだし、それをテレーズのこめかみにあてた。
お互いに銃口をあてあうアンベール男爵とテレーズ。
周囲のざわめき、制止の声も二人の耳には、入らない。

「さようなら、御主人様。
あなたのことは誰よりも理解しているわ。
アンベール男爵は、いなくならなければいけないの」

「私より先に引き金を引けたのに。
死に際にムダ口を叩く必要もないのに。
それだけ愛を示してくれれば、じゅうぶんだ。
さあ、テレーズ、引き金を引きなさい」

男爵はまぶたを閉じる。

「一緒に」

「……」

男爵は、首を横に振る。
二人とも銃はおろさない。
重い時間が流れる。
先に銃をおろしたのは、男爵だ。

「愚かな人」

テレーズも、また銃を降ろす。

ＦＩＮ