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奪われた妖刀!

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奪われた妖刀!

リアクション

「俺とミゼ、ガランと真珠で組んで空賊退治と行こうぜ!」
 十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)が支持すると、竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)は少し不満げに口を尖らせた。
(つぐむちゃんと一緒じゃないんだ……でも、ガランくんのことを考えたら、しょうがないよね……)
「オレの代わりに操縦を頼もう」
「……わかったわ」
 隻腕のガラン・ドゥロスト(がらん・どぅろすと)はそう言って、真珠に操舵を任せ後ろに乗り込んだ。
 加えて、ミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)とガランの組み合わせにすると攻撃範囲が相当狭くなってしまうために、つぐむの配置は適切であり、そう思うと真珠もワガママを言えるわけがなかった。
「ミゼ、操縦は任せた」
 そう言って、つぐむがミゼの後ろに乗ると、2機の小型飛空挺が宙に飛び立った。
「よし、行くぞミゼ。速度を上げろ!」
「……」
「ミゼ?」
「え、ええ、はい、行きますわ」
 アクセルを全開に、ミゼは前方の空賊に向かって走らせた。
「オオッ!? いい女じゃねぇか! そんな操縦もできないやさ男と代わって、オレの後ろに乗らねぇかぁ!?」
「てめぇ、相手は契約者だぞ、油断してんじゃねぇよ!」
「ウルセェ! テメェはその臭い口を閉じて落ちやがれ!」
「テ、テメェ……だが、言い合いしてる場合じゃねぇ! ぶっ殺してやんよ!」
「……ッ! 回避しろ!」
 空賊の二丁銃での射撃に、ミゼは機体を大きく転回し、上空へ逃れた。
 少し距離を置かねばならない。
(……ああん、もっと強い口調で命令して欲しい……)
 そう、自分自身をクールダウンさせるために。
「まちやがれぇ!」
「来るぞ! 一撃で仕留めてみせる! イケぇっ!」
(あふっ……イキます!)
 急降下する小型飛空挺から感じる風圧に顔色一つ変えることなく、つぐむは構えたライフルの引き金を引いた。
「グアアアッ!」
 操舵手のハンドルを握った手とハンドル自体を打ち抜いて見せ、追い越し様に、それを操舵をフォローしようとした空賊の足を打ち抜いて見せた。

「ウオオオッ!」
 ブンッと剣を振り回すガランだが、小回りの利かない飛空挺が足枷となり、自分自身の戦闘スタイルを貫けないことに苛立ちを覚えていた。
「フライトユニット等の飛行用のオプションが欲しいな……ッ! ウオオオオッ!」
 ――ブンッ!
 刃は再び虚空を切った。
「ギャハハ、届かねぇなぁぁぁ!」
 空賊のボーガンを剣で捌きながら、ガランが真珠にもう少し近づけと命令しようとした時だった。
「……い…………り、……い……」
 真珠が何やらぶつぶつ呟いているかと思うと、交戦していた空賊の小型飛空挺のエンジンに火がついたのか、一瞬で火だるまになった。
 それは火術とサイコキネシスの組み合わせであり、今この場でそれができるのは真珠だけだった。
 フォローしてくれたのだろう、とガランは声を掛けようとしたが、その異様な雰囲気に出かかった声は止まった。
 多分、大人しくしていた方が正解だ。
「やっぱり納得いかない……真珠がつぐむちゃんと一緒じゃないなんて……ミゼ……泥棒猫……許せない……」
 空賊は哀れだ。
 嫉妬からくる八つ当たりで火だるまになって落ちて行ったのだから。



 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)はパートナーであるデーゲンハルト・スペイデル(でーげんはると・すぺいでる)の小型飛空挺オイレに同乗し、空を駆けていた。
「スピードは控えめにな、デーゲンハルト」
「……ふ、承知。空賊共を駆逐しに行こうぞ!」
 デーゲンハルトは速度を落としながら飛行を続けた。
 それは空賊から見れば、鴨に違いない。
「ヒャッハー、どうしたんですかぁ!? エンジンの不調ですか!?」
「あれぇ、それともあれか、速度を出すのが怖いってか!? ヒャハハ、お子ちゃまだねぇぇ!」
「ふん……食らえ!」
 囲まれた3機の小型飛空挺に向かって、エヴァルトはショットガンを放ち弾幕を張った。
「ハァッ!? そんなのに当たるわけねぇだろうがぁ!? オラ、やっちまえ!」
 リロードに手間取るエヴァルトを見て、空賊達は一斉に襲いかかった。
「我のいかずちを浴びよ!」
「おおっと、ハズレェ!」
 デーゲンハルトが天のいかずちで接近を拒もうとするが、操舵と同時にこなすのは難しく、正確性は失われていた。
「もらったぁぁぁぁっぁ!」
 1機の空賊が、射程にエヴァルト達を捉えた。
 だが、エヴァルトは口元に笑みを浮かべていた。
 リロードはハイパーガントレットで高速化して、すかさず肩口に担ぐように銃口だけ向けて、空賊に放った。
「ガアアアッ!?」
「芝居に引っ掛かるとは、全く馬鹿で助かる。デーゲンハルト、突っ込め!」
 オイレは急加速して、空賊達に特攻した。
「ぶ、ぶつかるかよ!」
 間一髪で飛空挺同士の接触を避けた空賊だが、飛空挺にエヴァルトが飛び移ってきた。
 ――ガッ! ドガッ!
 銃床で執拗なまでに殴りつけ、反撃を受けそうになると神速で次の飛空挺に飛び移った。
「これぞ八艘飛びだ! 見たか!」
 再び狭い飛空挺の上で、上半身だけのインファイトを繰り返し、即座に次の飛空挺へ――、
「……あ……」
 移れなかった。
 完全に警戒され、飛空挺は寸での所で急降下と急発進をし、足場にできないようにした。
「エ、エヴァルトぉぉぉぉ!?」
「ああああああああれえええええええええええ〜〜〜!?」
「ギャハハハ、馬鹿だぜ、あいつ!」
「さてと、残ったのはテメェだけだ……ん?」
 フェードアウトしていく悲鳴が、再び耳に届いてくる。
 幻聴は、すぐ下まで迫り、上に突き抜けた。
「ああああれええええ〜〜〜ってか、ハハハハハハッ!」
 空飛ぶ魔法で一気に高笑いしながら浮上してきたのである。
「さて、騙し討ちも飽きた。悪いがそろそろ、死んでくれ」
 ショットガンの弾切れまで、空賊相手に打ち尽くしたのは言うまでも無い。



「出遅れてるぞ忍よ! ところで、私の飛空挺の調子はどんな感じだ?」
 織田 信長(おだ・のぶなが)はカタパルトデッキで調整中の桜葉 忍(さくらば・しのぶ)に声をかけた。
「俺は機工師じゃないから、詳しいことは分からないけどたぶん大丈夫だと思う」
「そうか、ならばそろそろ出撃だ!」
 おかしい、と忍は思った。
 時間が掛かり過ぎたメンテナンスに、怒声の一つでも飛んでくるかと思いきや、信長は子供のようにうずうずした、そんな笑みを浮かべているのだ。
「なあ信長、お前待っている間に何か面白い策を思いついたんじゃないのか」
「フッ、さあな」
 シラを切るのだが、顔にはハッキリと面白いこと発見、と書かれていた。
「俺は信長のやろうとしている事を止める気はないけど無茶はするなよ」
 忍は溜息を付きながら、すでに小型飛空挺に跨った信長に言った。
「忍よ!」
 忍自身もオイレに跨り、信長に遅れまいと出撃の準備に入ったところで、声をかけられた。
「雑魚の目は、全て任せたぞ」
「……ん、なるほど」
 それだけで信長のしたいことを察した忍は、信長の後についで空に出た。
 瞬く間に信長を見失い、忍の眼前には空賊達が他の契約者と戦っているのが見え、そのうちの1機が旗艦に向かって突撃してくるのを確認した。
「空賊達も焦っているのか。狙いが見え見えだ」
 忍はオイレを上昇させ、飛び込んでくる空賊の射線上に入った。
「ドケェェェェェェ! 船を落とせば、船を落とせばぁぁぁぁぁ!」
「せめて旗艦でもという思いはわからなくもない……が……ッ!」
 忍のオイレが空賊に向かって加速した。
 ハンドルを離し、片刃の大剣を水平に構え、空賊の小型飛空挺を真っ二つに切り裂いた。
「もう遅いが……自分達の旗艦に気をつけた方がいい。俺のパートナーが向かってしまったから」