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結成、紳撰組!

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結成、紳撰組!

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■■第五章

■其の壱


 突入してまず、左の部屋へと、長原 淳二(ながはら・じゅんじ)海豹村 海豹仮面(あざらしむら・あざらしかめん)が向かった。
 するとそこでは、一見すると盛大な、お誕生会が開かれていたのである。
「紳撰組か――よぅ、お前さん等も飲みな」
 トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)等にすっかり感化されている、暁津藩の脱藩浪士がそう声をかける。
「海豹村の酒も美味しいんだよねぇ」
 海豹仮面が座り込むと、淳二が掌で瞼を覆った。
 ――そこへ。
 天井が抜けて、緋王 輝夜(ひおう・かぐや)坂上 来栖(さかがみ・くるす)、そしてフィアナ・コルト(ふぃあな・こると)が落ちてくる。
「いやいや突然の襲撃は、流石に見逃せないだろう。紳撰組か?」
 冷静に、暁津藩士の一人が呟いて、箸を置いた。
 輝夜は、この事態に思考をフル回転させている。よろずやをしている彼女は、猫を探していると、意外にもすぐに見つかったので、半ば安堵していた。だが、屋根の上にいた猫は……気を引こうとしても無視され、さらに奧へと言ってしまったのである。
 ――よし、直接捕まえよう。
 そんな心境で、屋根の上を追いかけて捕まえた! と思ったら屋根が抜けて落下してしまったのである。そこは奇しくも寺崎屋であり、浪士達の会合中だったのだ。しかも漏れてくる声や、正面にいる紳撰組の二人を見る限り、物々しい連中まで討ち入りしてきた事は明らかだった。
「成敗!」
 そこへ、不逞浪士たちが襲い掛かってくる。
 ――仕方ない身を護りながら逃げなきゃ。
 輝夜はそんな事を考えていた。
 向かってくる刃に対し、彼女は、フラワシを使っての非常に鋭い斬撃を繰り出した。フラワシなので、それは見えない。そうして相手の武器を破壊しながら、高い身体能力を活かして彼女はその場を切り抜けた。無論相手に、大怪我を追わせないよう気遣いながらの戦闘である。追われる原因を作りたく無かったというのが、本心だ。
 ツェアライセンという斬ることのみに特化したフラワシは、射程距離2mほどしかないが同じコンジュラーでさえ視認するのが難しいほど素早く動き、狙った対象を正確に切り裂くのである。真空波があたりへと炸裂した。普段は体を護るように纏わりついているので、あらゆる属性や状態異常に対して高い耐性を持っているのが特徴である。体から離れるほどに威力が落ちるので直接身体にフラワシを纏っての手刀や蹴り等を彼女は発揮した。
 一方の来栖は、『捕まえた!!』と思ったのもつかの間、三人の重みで屋根裏が抜け落下した事にショックを受けていた。室内では紳撰組と不逞浪士が一触即発な空気を醸し出しているように、来栖には見えた。
「……すぐ帰りますんでお気になさらず……駄目?」
 ――まずいですね武器らしい武器は持ってきてませんし……。
 来栖はそんな風に考えて、一同へと向き直る。
「どうやら話しを聞いてくれる感じじゃないですし――よし、逃げましょう」
 来栖はそう声をかけて、よろずやの二人に振り返った。
 『魔術糸』で襲いかかってくる秋津藩の脱藩浪士の動きを封じ、蹴り等足技で応戦する。
「か弱い女性に刀を向けるなよ、ミスター武士道」
 そんな来栖の姿には構わず、フィアナが告げる。
「あ、見ませんでしたか、それでは失礼しまし……あれ? 何か物々しい人たちが討ち入って来てますが……」
 彼女が、淳二と海豹仮面に目をとめる。すると淳二が応えた。
「御用改めだ」
「え、御用改め?」
 口にした彼女を、不逞浪士達が睨め付ける。
「わ、私たちは紳撰組とは関係ありませんよ?本当に猫を探してただけで……って、うわ!いきなり切りかかってこないで下さい!」
 しかし鍋の空気や、親睦館を台無しにしたような奇襲に、暁津藩の脱藩浪士達はやはり刀を取るべきだと決意していた。
「駄目です、完全に私達も紳撰組だと勘違いされてます……シャンバラの家に得物も置いて来て、そこら辺で買った木刀しか手元にありませんし、正面切って抵抗も難しいでしょう」
 フィアナが思わず呟く。そこで彼女は考えた。面打ちで怯ませてる内にうまく立ち回って逃げなければ、と。


■其の弐


 こうして左側の居室が騒々しくなっている頃、右の部屋には近藤勇理達が踏み込んでいたのだった。
 気づいた不逞浪士達が、部屋から出てきて刀を振るう。
 逃げようとしているのか、階段へと向かうその浪士の、退路をふさぐ形で草薙 武尊(くさなぎ・たける)が前へと出た。ローグである彼は、逃げ出す事を許さないように、相手の身体を床へとなぎ倒す。
 続々と出てきた浪士達に向かい、セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が、妖艶な体躯を揺らした。彼女は戦場では有得ないような服装で浪士達を惑わせる。
 その上で上、聞くに堪えないような罵詈雑言で不逞浪士を挑発した。
「貴方達みたいな×××で○○○な、カスなんて、××して、△△になっちゃえば良いのよ」
 彼女から放たれた、口にするのも恐ろしき罵倒の数々に、不逞浪士達は目を剥いた。
 彼らの怒りを誘って冷静な判断力を失わせた上で引きつけるというセレンフィリティの案が功を奏したようである。その後、不逞浪士達は我先にと、二人をめがけてセレンフィリティめがけて襲いかかってきた。それを彼女は、破壊工作を用いて少人数に分断する。その上一端退いて、待ち伏せ攻撃を行い各個撃破をした。
 その隣で、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、ディフェンスシフトで守りを固め、感覚を研ぎ澄ませて周囲を警戒している。そして彼女は、チェインスマイトとランスバレストを駆使して、襲い来る不逞浪士を冷静に討ち取った。
「扶桑でまったりとするはずが、なんだってわざわざこんな重労働しなけりゃならないのよ」
 セレンフィリティが呟きながら、シャープシューターとスプレーショットを用いる。するとセレアナが嘆息した。
「何言ってるのよ。いつも騒々しいのに」
 そんな容赦ないツッコミを入れつつ、彼女敵を巧みにさばいていった。
 弾幕援護とクロスファイアを使用しながら、セレンフィリティは返す言葉を探している。
 そんなやりとりをしている内に、弾が切れたので、彼女はアサルトカービンの先端に銃 剣を装着し、格闘戦を始めた。
 その後ろで、伍番隊隊長が叫ぶ。
「さぁ!お前らの罪を数えてみぃや!」
 暁津藩の脱藩浪士達は、それに狼狽えた様子だった。
「俺の鉄拳でお前らまとめて成敗したるわ!」
 社は、拳に得意の電撃を纏わせ、相手を威嚇をしながら接近した。
 感電させて捕獲しやすい様に倒していく。
 彼の戦闘スタイルは型にはまらない喧嘩殺法だった。
 その隣では、スウェル・アルト(すうぇる・あると)ヴィオラ・コード(びおら・こーど)が構えている。
 スウェルは、敵の腕や足を、ソニックブレードで狙い、刀の背で面打ちし、命を奪わずに相手の戦意を殺いでいった。倒した相手は、動けないように、縄で縛っている。
 彼女は考えていた。――戦いで、命を奪う選択を、迫られても。
「奪った命で重くなった刀を振るうには、私の腕は、まだ足りない」
 そんな思いで、不殺を貫いているのである。
 ヴィオラはとえいば、対峙している敵の注意がそれた瞬間、隠形の術を使って一瞬姿をくらまし、隙をついてブライドナイブスで攻撃していた。


■其の参


 その頃、いち早く寺崎屋から逃れていたオルレアーヌ・ジゼル・オンズロー(おるれあーぬじぜる・おんずろー)久坂 玄瑞(くさか・げんずい)は、続々と集まっている紳撰組と扶桑見廻組から、どのようにして逃れようか思案していた。
「こちらです」
 そこへ朱い牛面をつけた黒装束の者が一人、姿を現した。
「あなたは?」
 尋ねたオルレアーヌに対し、その者は名乗った。
朱辺虎衆(あかべこしゅう)の人間です。首領と朱雀様の依頼で、お連れに参りました。お逃げ下さい」
「だけどどうやってですか? それに寺崎屋には――」
「大丈夫です。あそこには朱辺虎衆四天王の一人である青龍様と、他の朱辺虎衆の者も控えております故」
 その声に、暫し逡巡した後、オルレアーヌ達は、無事にその界隈を脱出したのだった。


 一方、紳撰組が踏み込んだ右側の部屋の、最奧では、梅谷才太郎が唇を噛んでいた。
「どうしたら良いんじゃろう」
 その声に風祭 隼人(かざまつり・はやと)が声を上げる。
「退路は確保してある。一緒に逃げよう」
「えいがか?」
 驚いたように目を丸くした梅谷に対し、力強く隼人は頷いた。
「真面目にマホロバの未来を憂い、優れた才覚を持つ有望な士が存在する可能性は十分にあると思うので、そのような士の見いだせたら、紳撰組や見廻組の取り締まりから逃れられるよう、陰ながらサポートしたいと思う」
 こうして隼人の手で、梅谷と健本岡三郎、そしてその場に居合わせた八神 誠一(やがみ・せいいち)は、寺崎屋から逃げ出す事に成功したのだった。


 その頃隣室では、それまで一緒に酒を酌み交わしていたマイト・レストレイド(まいと・れすとれいど)近藤 勇(こんどう・いさみ)が、部屋に集まっていた暁津藩士と、柄と柄をあわせる戦闘を始めていた。紳撰組の面々と共に、不逞浪士に斬りかかっているのである。
「裏切り者!」
 暁津藩の一人が叫ぶと、原田 左之助(はらだ・さのすけ)が首を大きく振った。
「ん? 不逞浪士が裏切った? 何言ってやがる」
 佐之助が続ける。
「近藤さんは前もって侵入していたんだ、いいな」
 その声に、椎名 真(しいな・まこと)が引きつった笑いを浮かべながら頷いてみせる。まさか、迷い込んで此処にいたとは言えない。


 そのようにして寺崎屋の屋内外を問わず騒がしくなっていた時。
 東條 葵(とうじょう・あおい)が、一人残っていた朱い牛面をつけた黒装束の一人と退治していた。
 彼は、『隠れ身』で身を隠しながら不逞浪士と行動していた牛面の忍装束を探し追跡していたのである。――忍ぶからには夜だろうか、そんな推測が当たるように、この夜更けの寺崎屋へと彼は行き着いたのだった。ブラックコートで闇に溶けた葵は、ダークビジョンで、朱い牛面達の姿を視認していた。
 ――不逞浪士と繋がるなれば寺崎屋の会合の頃に最も動くか?
 その推測が的を射ていた為、葵は、カガチへと知らせるメールを打った。
 その内に、オルレアーヌ・ジゼル・オンズロー(おるれあーぬじぜる・おんずろー)達を逃がした朱い牛面の内の一人が、独りきりで闇夜に残った。これは良い機会である。葵は、ブラインドナイブスの要領でそっと捕獲し事情聴取を始める事にした。
「身分は? 所属は? そもそも目的は何で、誰の差し金なんだ? ――後は、美味い飯屋はご存知か」
 いくらかいらぬ事まで尋ねた葵に対し、朱い牛面の黒装束は押し黙ったのだった。


■其の四


 紳撰組の面々が、寺崎屋へ集合している為、芹沢鴨藤堂平助は、扶桑の都の他の場所の警備の為、ぶらぶらと街を歩いていた。
するとそこへ声がかかる。
「見つけた、芹沢鴨だな」
 声の主は、白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)だった。アユナ・レッケス(あゆな・れっけす)は彼に纏われている。
 竜造は、正面から突撃した。そして芹沢らに接近し、ハイパーガンドレットを利用した素早い抜刀により斬撃を繰り出す。その後、急所めがけて攻撃した。すると一見芹沢に好きが出来たように見える。そこへ竜造は、金剛力で強化した一撃を見舞おうとした。
「甘ぇ、甘ぇな」
 だが竜造の、防御に関しては龍鱗化とリジェネレーション任せで一切考えていない箇所を逆手に取り、芹沢は鉄扇の一撃を見舞ったのだった。それと同時に竜造は、地へと倒れ伏したのである。
 丁度そこへ、東條 カガチ(とうじょう・かがち)が、朱い牛面の黒装束――朱辺虎衆についての東條 葵(とうじょう・あおい)からの情報を携えて、現れたのだった。


 当の寺崎屋では、近藤勇理と、三道 六黒(みどう・むくろ)両ノ面 悪路(りょうのめん・あくろ)、そして葬歌 狂骨(そうか・きょうこつ)が対峙していた。ジガン・シールダーズ(じがん・しーるだーず)如月 正悟(きさらぎ・しょうご)をはじめとした壱番隊の隊士と対峙している。
 ジガンの戦いぶりにはすさまじいものがあった。
 敵に対して靡かぬ不屈の闘志を持つ狂人である彼は、最前線において紳撰組の陣を切り裂こうとしている様子だった。時には素手で隊士の顔面を殴り飛ばしたり、つかみ上げて壁に叩きつけるなど過激な手段をも厭わない。不逞浪士達の最前線にいる彼は、土方 伊織(ひじかた・いおり)の放つ魔法にも、正悟の銃弾が飛んできた場合でも、怯む様子無く、避けられないと判断したら近くの紳撰組隊士をつかみ、盾にし、そのまま投げつけ妨害してくるのだった。
 ――ジガンは、よくも悪くも裏切りだけはしない男であるが、チキンには容赦がなく、味方で有ってもぶっ飛ばしている。何人かの不逞浪士は、ジガンの縦となって地に横たわった。また彼は、痛みをも楽しみとしている節があり、どんなダメージを受けようと勢いだけは変わらず、寧ろ勢いが増していく様子だ。
「くそ」
 正悟が、ジガンの足を狙う。だが、足が負傷すれば腕力で、腕が負傷したら噛み付きで、顔面を殴打されても体当たりで、ジガンは戦いを止めないのだった。
 それを六黒が見守り、声をかけた。
「ここはわしが守る」
 そう告げて暁津藩士達を逃しながら、六黒は前へと出た。その姿勢に勇理もまた構える。
 六黒は、力を見せ、信念を見せる事で暁津勤王党内での頭角を握ろうとしていた。
 無論、その力量を見せるまでもなく、彼の戦いは百戦錬磨を感じさせる威風堂々とした 風格を兼ね備えていた。
「大人しくお縄につけ」
 叫んだ勇理の刀を、彼は歴戦の防御・砂時計――体感の高速化により見切る。
 狭い家屋内でも、構わず大剣を振るい、柱ごと一刀両断してみせた。
「危ない」
 如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が勇理を庇うように、その腕をひく。
 そんな光景にはまるで構わず、六黒は、武術・金剛力とガントレット効果による、高速の斬撃を繰り出した。これが暁津藩士が逃げる道を作った。
 そこへ悪路が声をかける。彼は、攻め寄せる紳撰組、近藤に問う。
 説得と歌のスキルで戦意を削ぐ計画だ。
「煮豆燃豆 豆在釜中泣 本是同根生 相煎何太急」
 ――皆、同じ扶桑より生れし者だというのに、それが争うとは、愚かなこととは思いませぬか?
 悪路は続けた。
「理由を考えた事がありますか? 国を憂いた瑞穂維新志士を潰し、今は護国たる暁津勤王党を潰す。国を、民を疲弊させ、果たして利するのは誰? 隣に居るシャンバラの者。違いますか?」
「それは――……」
 言葉に窮した勇理に対し、彼は静かに笑って見せた。
「答えは、次までの宿題です。それでは、御機嫌よう」
 告げた悪路は、光術でめくらましをし、ベルフラマントで隠れ身をする。
 残されたのは、暁津藩士数人だった。彼らは、六黒達の目から見て、暁津の中でも信念なき小悪党じみた者達だった。だからこそ激戦区に配して討たせ、暁津をより憂国の士の集まりとしようと彼らはもくろんでいたのである。
「お逃げ下さい」
 残された暁津藩士は、そんな事はつゆ知らず、そう声をかける。
「逃がすか!」
 だが紳撰組からはそんな声が上がった。
「退け、有象無象」
 それに対し、狂骨が低い声で告げる。彼は、アボミネーションを撒き散らし、不用意に間合いを詰めて抱きつきペトリファイを用いた。
 ――斬られても痛みを知らぬ我が体によりダメージ無視したものである。
 その対応に、紳撰組のある隊士は怯えた。
「臆したな? では、死ね」
 狂骨はそう声をかけた。そして、六黒と合体後、封印解凍・絶対暗黒領域で六黒の力を倍増させ、凶の力を振るう。
 六黒の立場は、世に言う悪、なのかもしれない。しかし確かな信念を貫こうとする少数派を守る者であるのは間違いがなかった。正義が正しくある為には対なる存在が不可欠なのかもしれない。その悪と言う存在を絶やさぬ為に、六黒はいるのかもしれなかった。

「その志気に入った。ここは退け、後は預かろう」

 そんな六黒達の元へ、不意に声がかかった。
 一同が視線を向けると、そこには朱い牛の面をつけた黒装束の忍びらしき者の姿があったのだった。
「我は朱辺虎衆四天王の一人、青龍である。後の事は任されよ」
 不意なる闖入者のその声に、六黒達は暫し思案したのだったが、頷いて待避を始めた。

「何者だ?」
 逆に狼狽えたのは、勇理達、紳撰組である。
「主等のような偽善ではなく、誠にマホロバを思うのが我らだ」
 そう告げると、朱い牛面の男が、勇理に斬りかかってきた。反射的に、紳撰組の局長は、刀で刀を受け止める。
「討ち入りの邪魔をするな」
 勇理の底冷えするような声が周囲に谺する。
「我らの大儀の邪魔をしているのはそちらだ、目障りである」
 青龍と名乗った面をつけた黒装束は、刀を煌めかせた。
 刀同士が交わる高い金属音が辺りへと谺し、その力押しに、勇理が一歩に補と後ずさる。
「なにやってるのよ」
 そこでセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が、青龍の足下を狙って銃弾を放つ。
 駆けつけていた原田 左之助(はらだ・さのすけ)が槍をふるった。
 草薙 武尊(くさなぎ・たける)もまた、勇理を庇うように雅刀で攻撃する。
 するとそこへ、右側の隊列の異変を聞きつけてやってきた海豹村 海豹仮面(あざらしむら・あざらしかめん)長原 淳二(ながはら・じゅんじ)が、攻勢に出た。海豹仮面の持つ女王のソードブレイカーが、青龍と名乗った黒装束の刀をへし折る。そこへ淳二のアルティマ・トゥーレが炸裂した。
 瞬間的に、青龍が体勢を崩す。
 そこへ正悟が、栄光の刀で斬りつけたのだった。その間に体勢を立て直した勇理が、意を決して青龍へと斬りかかる。
 ――こうして彼らは、当初の目的である不逞浪士の取り締まりの他、朱辺虎衆と名乗る組織の、四天王の一人を打倒したのだった。
 東條 葵(とうじょう・あおい)らの手により捕縛された朱辺虎衆の末端の者が、芹沢達を介して紳撰組へと引き渡されるのは、それからもう暫くしての事である。


■その伍


 事の顛末全てを見ていた天 黒龍(てぃえん・へいろん)黄泉耶 大姫(よみや・おおひめ)は、互いに顔を見合っていた。
「きな臭くなってきたね、黄泉」
 黒龍のその声に、大姫は大きく頷く。
 朝までは、未だしばらくの時間があった。
 しかし二人は、遊郭へと帰らなければならない。僅かな休日もそろそろ終わりを告げようとしているのであった。
「まぁ良い手土産はできたかな」
 闇の中、黒龍はそんな事を呟いたのだった。