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リアクション
深夜――
「ねぇねぇ、ロック鳥の雛ってどんな姿をしてるんだろうね?」
「そうだね。どんな子が生まれてくるんだろう? 楽しみぃ♪」
祝勝会も終り、ほとんどの生徒が眠りについた中……まだ何人かの生徒は鳥小屋に集まってロック鳥の卵を見守っていた。
その中には――
「元気な雛が生まれてくるといいわね」
「聴診器で卵の中の様子を聞いてみたが、動きが活発になってきている。明け方までには生まれてくるはずだ」
「おぉ、そうか! ヒヨコは生きたままが食うのが特にオツだからな。元気で活きの良い奴が……って、あー分かってる、喰わねぇって。そんな目で睨むな。わはははっ!」
シャンバラ教導団のルカルカや、彼女のパートナーであるダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)と、竜族のカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)など、雛が心配で他校から集まってきた生徒たちもいた。
「でも、こんな形で用意してきたランプが役に立つなんて以外でしたね」
そう呟いたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)たちの周りには、卓上ランプが数個用意されていた。
彼らは、孵化後に不要となった殻を使ってランプシェードを作るのが目的だったのだが……鳥小屋は月明かりだけが照明の代わりだったので、用意してきた白熱灯を使うこととなったのだ。
「無事に生まれてきて欲しいものです」
暖かな光で満ちた鳥小屋は、真夜中にも関わらず卵を見守る生徒達で賑わっていた。
と、そこへ――
「ふにゅ……卵はいつ孵るですかぁ?」
眠い目をこすりながら、エリザベートが鳥小屋へやってきた。
彼女も、雛の誕生を心から楽しみにしていたのだ。
しかし、まだまだ幼い彼女にとって夜更かしは難関のようだ。
「エリザベートさん。卵は私が見ていますから、休んでいてください。孵化するときには、ちゃんと起こしますから」
ベアトリーチェ・アイブリンガーが、毛布を持ってきてエリザベートに掛ける。
すると――
「うぅ〜ん、校長として見守りま……すぅ……すぅ……」
エリザベートは、あっという間に眠りの世界へと旅立ってしまった。
「あの……みなさんもよかったら眠気覚ましに紅茶など用意してきましたので、休憩するときにはどうぞ御自由に飲んでください」
ベアトリーチェは、集まった生徒達が孵化を楽しみにしていることを察していたので、コーヒーよりもカフェインが多く含まれている紅茶を用意してきたのだった。
そして――
「ロック鳥ってどんな鳥なのでしょう? 可愛いのかな? 可愛かったらいいなぁ!」
シャロン・ウォルコットは、初めて見るロック鳥に心を躍らせているようだ。
「待っててね、鳥さん。生まれてきたら、わたしとおともだちになろうね♪」
生物部のゴルゴルマイアル 雪霞は、優しく卵を撫でている。
それから、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)やパートナーのメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)などのランプシェード班は――
「ランプシェードは、どんなデザインにしようか? なるべく、思い出に残るものを作りたいしな……」
「――とっ。よしっ、定点カメラの設置はバッチリだな。あぁ、エース。ランプシェードは古王国のデザインも少し織り込み、アンティーク調に仕上げたまえ」
「なんだよそれ……そう言うなら少しは準備を手伝えー!!」
「いやいや。私は、後進たちの為に資料作りに忙しいんだ。資料さえあれば、いつでもロック鳥に関する人工飼育が可能になるからな。こうして歴史は積み重ねられて行くのだよ」
賑やかにランプシェード作りの準備を整え、後は雛の誕生と殻の採取を待つばかりとなった。
しかし、いくら賑やかとはいえ真夜中なので――
「ほわぁ〜今日はぎょーさんやったから眠いわぁ〜……いろいろやりはったけど、また盗まれんか心配やさかい、うちはここで寝させてもらうわぁ」
火軻具土 命はパラミタペンギンのドージェと卵を温めるかのように優しく抱きついて眠りについた。
「今日は……怖い思いさせちゃってごめんね」
フレデリカ・レヴィは、そっと卵を撫でる。
「でも大丈夫。ほら、ここにはこんなにアナタに会いたがっている人がたくさんいるよ? だから、安心して生まれておいで」
彼女の言うとおり、雛の誕生はイルミンスールだけではなく、沢山の人たちに心待ちにされていた。
――そして。
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