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学生たちの休日7

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学生たちの休日7

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ヴァイシャリーの飼育書

 
 
「えっと、Ra-VITDIM3-ICN01、共に問題なし、と……」
 チェックシートをかかえた和泉 真奈(いずみ・まな)が、最終項目に印をつけてバインダーを閉じた。
 ディスティン商会の裏手にあるイコン格納庫――と言えば聞こえはいいが、現実は木造の大型倉庫である。そこに、横に寝かされた状態でイコンが格納されている。他にも機体があるようだが、今は触れないでおこう。
 基本的に、イコンの整備は和泉真奈の仕事である。さすがに、精密機械はミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)にいじれるとは思えない。まあ、精密機械と言っても、個人がメンテナンスでいじれる範囲は、部品ブロックごとの総取っ替えで比較的容易にできているのだが。それすらも、ミルディア・ディスティンに任せるのは怖いので、和泉真奈が率先してやっているのだった。
 その代わり、イコン倉庫の傍にあるワイバーン舎――ミルディア・ディスティンはドックと呼んでいるが、実体はおっきな納屋である――では、ミルディア・ディスティンがワイバーンのりゅ~ちゃんを世話している。また子供のワイバーンだが、こういった生き物の扱いはミルディア・ディスティンの方が得意ではある。何ごとも、適材適所というわけだ。
「はい! りゅ~ちゃん、ごはんだよ~♪ よいしょっと
 和泉真奈が様子を見にいくと、ミルディア・ディスティンはちょうどりゅ~ちゃんに竜カリカリの餌をやっているところだった。
「あ、真奈さん、もうイコン整備終わったんだ?」
「ええ。後で報告書書いておきますね」
「はい、お願いするんだもん」
 学校外でイコンを扱っているのだから、一応管理報告書のような物は提出している。だが、それもミルディア・ディスティンに任せるとあわや謎言語になりかねないので、和泉真奈がきっちりと作りあげていた。
「へえ、これがワイバーンか。みごとなもんだな」
 珍しくドックの方へ足を運んできたローザ・ベーコン(ろーざ・べーこん)が感慨深げに言った。つい先日、ミルディア・ディスティンと契約を行った英霊だ。現在は、パラミタという世界を把握するために、ミルディア・ディスティンの周りを見学しているというところだ。
「さっき、和泉の整備していたイコンというのも見てきたが、あれもなかなか凄い存在だったけど、こちらもなかなか。何よりも生き物であるということは、驚嘆にあたいするね」
 ぜひ、細かく解析したいものだと、ローザ・ベーコンが最大級の興味を示した。それにもまして、契約を交わしたミルディア・ディスティンの方も気になる。和泉真奈でさえ少し躊躇しているワイバーンを、まるで仔猫か何かのように扱っているではないか。大胆なのか、無謀なのか、それはこれからきっちりと見定めなければならないだろう。いい意味で、振り回してくれそうで楽しみではある。
「なんか変だけど、そうだよ、ちゃんとりゅ~ちゃんは生きてるんだよ。だから、世話してあげないといけないの。そうだ、これから散歩に行くんだけど、ローザさんも一緒に行く?」
「いや、ボクはここから見ているよ」
 ローザ・ベーコンが意見を求めるように和泉真奈の方を見ると、「ええ」と彼女も同意するようにうなずいた。
「うん。それじゃあ、散歩に参りますか。じゃ、行ってきまーす」
 りゅ~ちゃんに乗ると、ミルディア・ディスティンは、ローザ・ベーコンたちに手を振りながら空へと舞いあがった。眼下にある、ディスティン商会の建物があっという間に小さくなっていく。
「ヴァイシャリー湖一周、じゃあ、行くよ!
 ミルディア・ディスティンは、そうりゅ~ちゃんに言った。