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リアクション
イースター・コード
カフェテリアの床、金色の小鳥の巣は着々と育っていた。最初径が20センチほどで小さな出来かけの小鳥の巣のようだったものは、イースターバニーたちが髪を刈り取るごとに大きく育ち、今や大降りの果物かごほどの大きさになっていた。集められたカラフルなイースターエッグはそこに入れられ、巣と同じ金色の光を放って輝いている。
戦闘力を封じられた明日香と縁は、カフェテラスのベンチに寝かされていた。
「雅羅、もう半分みつかったんだね、がんばってるぴょん」
かすかなささやきが、雅羅の耳を掠めた。早く事態を収拾しなくては。残る卵は、いったいどこに隠されているのだろう。そして、事態収束までに何人の犠牲者が出るのだろう。
強い不安感と焦燥感が、雅羅をさいなむ。自分の何がいけなかったのだろうか。いけないのだろうか。
雅羅は唇を噛み、小鳥の巣を見つめた。
自分の存在は、災厄なのだろうか。存在していて、いいのだろうか……。
そのころ、パートナーの縁に襲われそうになり、熾乃火はとにかく購買から離れるべく必死に走っていた。
「まいったな……何がどうなってるんだか。
……あんなのでもうっかり契約した相手だしな……まったく!」
廊下を曲がった瞬間、雅羅から事情を聞き、愛美を探していた朝野 未沙(あさの・みさ)とぶつかりそうになった。
「うわっ!」
「ひゃ!」
おのおのなんとか身をかわし、衝突は避けられた。熾乃火は謝った。
「あわててたもので、すまん」
「ん、大丈夫よ」
「……あ、そうだ、あんた何か騒ぎのこと、聞いてないか?」
朝野は少し前に雅羅から聞いた、イースターエッグ騒ぎの話を熾乃火にした。
「あたしは、愛美がよく行ってた美術室を探そうと思うんだけど。
あなた良かったら手伝ってくれない?」
「そういうことなら……」
二人は美術室へ向かった。奥のほうの石膏像やイーゼル、予備の道具類をしまう棚、展示された作品などさまざまなものが多数あり、物を隠すにはもってこいの部屋である。2人が捜索にかかろうとしたときだ。
「み〜つけたぴょん」
大鎌を手に、愛美が美術室へと入ってきた。その姿を見て、浅野は悩ましげに言った。
「マナったら、なんと言う姿に……」
鎌を振るって襲い掛かる愛美。熾乃火はその攻撃を避け、彫像のわきへと飛んだ。その隙に朝野が愛美の背後を取り、愛美の胸をいきなり鷲掴みにした。思わぬ展開に熾乃火は目を丸くして固まっている。
「な、なにするんだぴょん!!!!」
悲鳴を上げて飛び上がる愛美。即座に朝野はパワーアシストアームと超人的肉体を使用して右手で愛美の両手を掴み、武器を振るえないようにした。
「マナ! あなたの暴走はあたしが止めてあげる!」
「いやああああぴょん! 放してぴょん!!」
愛美が足をじたばたさせ、身をよじる。その頬をあいているほうの手ですっと撫でると、朝野は言った。
「正気を失ってる時は、やっぱりキスだよね。
……とびっきりの熱いキッスで、マナを正気に戻してあげるからね!」
「男の人じゃなきゃ嫌だぴょん!!!!」
愛美が悲鳴を上げる。紅い瞳が燃えあがり、すさまじいパワーで身を振りほどくと美術室から飛び出していった。
「ああ〜ん、もう〜、マナったら照れ屋さん♪」
朝野の言葉に、真っ赤になって棒を飲んだように固まっていた熾乃火が、かすれた声で言った。
「と……とりあえず卵を探そう」
翡翠色のルミーナを象った彫像の両手ににさりげなく、銀のつる草模様の同じ色の卵がそっと載せられていた。もうひとつは展示品のかごの中に、クリーム色に塗られ、薄いオレンジの星模様が描かれて収まっていた。愛美をキスで元通りに出来たかもしれないのに、とこぼす朝野を宥めながら、熾乃火は見つかったイースターエッグを手に、集合場所と聞いていたカフェテラスへと向かった。
残る卵、あと3つ。
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