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1ヶ月遅れのイースター

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1ヶ月遅れのイースター

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美しき襲撃者

 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の二人は、校舎内を歩いていた際に、謎の光に包まれた。セレンフィリティは赤のバニースーツに理容はさみ、セレアナは黒のバニースーツに、もともとの装備のランスだ。

「こ、この身体の奥から湧き上がる衝動はなんだぴょん?」

「か、髪の毛を刈りたい……ぴょん」

廊下を通りかかった女子生徒が犠牲となった。セレンフィリティが大雑把にばさりと刈ると、セレアナがすばやくランスを振った。刈り残された髪が綺麗になくなる。さらにセレンフィリティは、生徒のスカートまで斜めに切り裂いた。

「セレンは大雑把過ぎるぴょん。丁寧に、かつ綺麗に仕上げなくてはだめぴょん」

セレアナがスカートをまっすぐに、下着が見えんばかりの長さにすぱりと切り揃える。

「いやああああ!!!」

女生徒は泣き叫びながら、学校入り口のほうへと走り去った。

「あっちのほうに人が集まっているかもしれないぴょんね」

セレンフィリティが言って走り出す。セレアナもそれに続いた。

 授業を終え、教室から出たところで御凪 真人(みなぎ・まこと)セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が奇妙な閃光に包まれるのを見た。光が薄れると、セルファはウルクの剣を手にしたピンクのバニーガールに変身していた。しかもその瞳は禍々しい紅い色に変わっているではないか。

「あーなんだかすごく良い気分だぴょん……」

歌うようにつぶやくセルファ。それを見た瞬間、真人は直感した。一緒にいるのはヤバイ。瞬時に判断するや、真人は即座にセルファから逃げ出した。どこからか銃声も聞こえる。」

(こ、これは……絶対に、間違いなく、確実に、ろくでもないことが起きていますね)

学校入り口なら人の出入りがある、誰か事情を知っているものがいるかもしれない、そう判断し、そちらへと向かった。

(暴走したセルファ、危なすぎるし……)

 桜葉 忍(さくらば・しのぶ)織田 信長(おだ・のぶなが)の二人は、授業も終わったし、午後のお茶でもとカフェテリアへ行こうとしていた。廊下を少しいったところで、カフェテリアのへと急ぎやってくる雅羅らに出会った。あわてた様子の雅羅が呼びかけてきた。

「あ、あなたたち、早く避難して!」

「なにごとだ一体?」

戸惑う桜葉と信長に、雅羅は手早く事態を説明した。

「髪を切られるのは流石に困るかな、
 早くイースター・エッグを探して皆を元に戻さないといけないな」

「うむ、これは緊急事態じゃな。協力しよう」

二人が急ぎ立ち去った雅羅らを見送っていると、セレンフィリティとセレアナが襲い掛かってきた。桜葉と信長はすばやく左右に飛び、バニーの攻撃をかわした。二人のバニーがやってきた方向には、制服を切り裂かれ、頭を丸坊主にされた生徒が数人、しゃがみこんでいるのが見えた。
廊下では防戦するにも狭すぎる。このすぐ先は学校入り口。そこならばスペースは十分にある、卵の隠し場所候補でもあるし対応しやすい。そう判断した桜葉と信長はバニーをけん制しつつ学校入り口へと向かった。

 バニーコスの間違い探しのようなラビット隊パイロットスーツに身を包んだ葦原めい(あしわら・めい)八薙 かりん(やなぎ・かりん)の二人は、蒼空学園で買い物をしようとやってきた。ところが、学校がいやに騒がしい。あちこちから悲鳴や泣き声が聞こえてくる。
と、学校の正面入り口から桜葉と信長、それにその少し前に一緒になった真人と、3人を追って赤と黒のバニーガールが走り出してきた。

「なんかバニーガールが〜」

めいはのんびりと、そちらへ向かった。と、セレアナが紅く光る目をめいに向けランスを振るって襲い掛かってきた。

「髪の毛切らせるぴょん〜」

めいはあわてて羅星環刃刀で飛んできたランスを食い止める。

「なんだ? 新手のイースターバニーか?!」

めいとかりんの姿を見た桜葉が叫ぶ。ほんの少し前に信長たちに合流した真人が、セレンフィリティをけん制しながら呻く。

「これ以上バニーガールが増えるのははちょっとカンベンして欲しいな……」

めいがセレアナと切り結びながら叫ぶ。

「めいの衣装は『ラビット隊パイロットスーツ』!
 バニーガールじゃないよ。百合園のイコン部隊、ラビット隊の制服だよ!」

かりんがセレアナとセレンフィリティを一目見るや、腕組みしていった。

「物の怪ですわね。なにかの思念で操られています。
 そんな気配を感じますわ」

「確かに目が紅くないな……だったら協力してくれ!」

真人が事情を説明する。

「めいがこっちのウサギさんを食い止めますよ」

めいがのんびり言うと、かりんがうなずく。

「そういうことでしたか。事件を解決するには「想い」を晴らさねばなりませんね。
 私達で良ければ、一月遅れのイースターに付き合いましょう」

防戦側が増えれば、それだけ状況は有利である。

「忍よ、私はトレジャーセンスがある。ここでイースター・エッグを探そう。
 その間お前は囮になってイースター・バニーになった者達を惹きつけておくのじゃ!」

信長の呼びかけに忍が応じる。

「ああ、分かった!
 あいつらは、信長の所には近づかせないから安心して卵を探してくれ!」

かりんも声をかける。

「弓矢はこの状況ではやや不利ですから、私も信長さんと一緒に、卵を探します」

真人がめいと忍に言う。

「奈落の鉄鎖を使って動き鈍らせる、一気に畳み掛けてくれ」

「わかった。そういうことなら俺が獲物を弾き飛ばそう」

忍は考えた。女王のソードブレイカー、そこに歴戦の武術を使えば刃物を吹き飛ばすこともできるし、本体を気絶させることもできるだろう。問題は刃物の飛び先だ。

「はーい、了解! 弾いた刃物は、めいがたたき落とすから安心してね〜」

「頼んだ!」

重力の鎖がセレンフィリティとセレアナを捕らえた。全身がすさまじい重さに感じられる。

「か……体が重いぴょん……」

「思うように……動けないぴょん……」

セレンフィリティのはさみが弾き飛ばされ、めいがそれを叩き落し、少し離れた地面に突き刺さる。セレアナのランスもまた同じ運命をたどった。

「ごめん」

本体に技を叩き込むと、重力にあえいでいたバニー二人もあっけなく気絶した。念のために手足を縛る。

「ございましたよ〜」

「これですべてのようじゃ。気配はこの一個だけしか感じられぬ」

信長とかりんが、桜色地に派手なピンクのバラが描かれた大きな卵を手に、植え込みのほうから駆けてきた。真人と忍が気絶したセレンフィリティとセレアナを抱え上げ、一同は集合場所のカフェテリアへと向かった。

イースターエッグは残り、あと1個。