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凍てつかない氷菓子

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凍てつかない氷菓子

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【十五 凍てついた氷菓子】

 しばらくは誰も、声をあげることが出来なかった。
 それからややあって、可憐とアリスが慌てて走り寄ってきた。
「ど、どうしましょう……機晶姫さんの意識は、あるのでしょうか?」
 可憐はまず、マデリーンの人格がどうなったのかを心配した。津田俊光の脳移植によって、マデリーンの人格が破棄されてしまったのではないかという疑いが、当然ながら存在するのである。
 更に八重が黙っていられなくなったのか、猛然たる勢いで走り込んできた。
「あなた……自分が何をやっているのか、分かっているのですか!?」
 何故だか、涙が溢れてどうにもならなくなっている八重。きっとマデリーンは、マスターである津田の為に、自身が犠牲になることを静かに受け入れたのだろう。
 自分自身もブラックゴーストというパートナーを持つ八重にとっては、決して見過ごせない事態であった。
 だが――。
「マデリーンなら、心配は要らないよ。彼女は、生きる。何故なら」
 津田俊光は、マデリーンの顔のままで、口元をにやりと笑みの形に歪めた。それが何を意味するのか。
 この場で理解していたのは恐らく、あゆみとアスカぐらいであったろう。
「だ、駄目ぇ!」
 あゆみが、慌ててマデリーン=津田のもとへ駆け寄ろうとしたが、それよりも早く、津田は右腕を動かし、レーザーガトリングから一条だけ、レーザー弾を放った。
 撃ち抜かれたのは、マデリーンの頭部であった。

     * * *

 津田俊光が自らの頭脳を破壊したことで、アイスキャンディ事件は幕を下ろした。
 試作パワードスーツ『ストウ』は無事、機動強化服先端総研に回収されたものの、多くの犠牲者を出したいわくつきの兵器ということで、結局開発プランはそのまま中止となり、ストウ自体もお蔵入りとなった。
 薄暗い室の中で、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)は仕上げたばかりの報告書を眺めながら、これでもう何度目かになる深い溜息を漏らした。
 彼は今回の事件が、FRAGにとってプラスになると判断したから、裏で独自に捜査していた。
 が、ストウ自体の開発データは決して機密でも何でもなかった訳だし、事件を起こした津田自身も、何か大きな思惑があってのことではなく、単に自己の都合によるテロ行為に過ぎなかった。
 ただ一点、津田に今回の事件を起こすようそそのかした人物が居るという情報も無くは無かったが、それも津田自身が死を選んだことで、迷宮入りとなってしまった。
 要するに、今回の事件はFRAGにとっては大して重要な意味を為さず、単なる対岸の火事で終わってしまったのであった。
「俺……何やってたんだろうねぇ」
 トライブはもう一度溜息を漏らすと、手にした報告書をファイリングして、そのまま室を出た。


『凍てつかない氷菓子』 了

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 当シナリオ担当の革酎です。
 このたびはたくさんの素敵なアクションをお送り頂きまして、まことにありがとうございました。
 識上MS様、後は宜しくお願い致します。

 本リアクションを書きながらつくづく思ったのですが、下名はアイスキャンディではなく、ソフトクリーム派だったりします。
 どうしてもアイスキャンディ食うなら、ガリガリ君ですかねぇ、やっぱり。

 尚、下名のシナリオに参加されたことがある方ならば既にご存知のことと思われますが、下名の戦闘判定は、非常に厳しいです。
 次から下名のシナリオに参加をご検討頂ける場合は、その辺もしっかり考慮に入れて頂ければ幸いです。

 それでは皆様、ごきげんよう。

■7月5日追記
 一部、性別を間違えて描写している箇所がございましたので、修正致しました。
 大変ご迷惑をおかけしました。